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腐った市政と記者クラブの不作為 ― 福岡市の惨状 ―

2014年10月27日 09:15

 先週24日、高島宗一郎市長の東京出張をめぐる疑惑を積み残したまま、福岡市議会の決算特別委員会が幕を閉じた。市長のタクシーチケット私的流用を糊塗するため書き換えられた旅行命令書は未完のままで、公用に変更されたはずの復路の航空券代も支払いが滞るという異例の事態だ。
 一方、税金支出をチェックするという責務を担う議会側は、共産、民主の両会派をのぞき沈黙状態。市長の出張問題を、自民、公明、みらいの与党各派で闇に葬る形となった。市長が都内でハイヤーを乗り回すことも、片道分の旅費を自己負担してプライベートに利用することも、容認された格好だ。議長に至っては、自身の政治資金処理をめぐって買収の疑いが浮上しており、他人のチエックどころではなくなっている。
 市役所も議会も腐っているが、市民には意外なほど実情が伝わっていない。なぜか――。

腐った市役所
 高島市政誕生以来、市長の失政や公人としてあるまじき行動の数々について報じてきた。選挙直後の離婚、私設秘書の市役所内での政治資金集め、議会中のフィットネスクラブ通い、ネット上の仮想行政区「カワイイ区」の不適切な実態、元市顧問の業者選定への関与、そして公費出張を利用したプライベートタイム……。桑原敬一元市長時代から市役所を見てきたが、これほど程度の低い市政はなかったと断言しておきたい。「史上最低」――市内部はもとより、経済界からも同じような声が聞こえてくる。

 市長はタレントアナウンサー出身。カメラの前で笑顔を振りまき、立て板に水で持論を展開するのは長けている。一見すると、若い清潔な市長だと思われがちだが、じっくり観察すると、傲慢で身勝手な姿勢が浮き彫りになる。前述した不始末・不祥事の数々は、すべて市長の思い付きやわがままが原因だし、気に入らない職員は片っ端から閑職に飛ばすというのだから、話にならない。国家戦略特区にしても、“選ばれた”ということばかりを宣伝しているが、これによって市民の暮らしがどう良くなるのか、具体的な未来像は提示されていない。パフォーマンスが悪だとは言わないが、中味の伴わない人気取りなら、害にしかなるまい。

 市長の間違いを隠すため、情報隠し、意図的な怠業、嘘やごまかしが横行する現在の市役所。市長のレベルに合わせたばかりに、かつてHUNTERが九州一だと評したころの姿は見る影もない。

市議会の機能停止
 二元代表制にあって市長の暴走を止めるのは議会。福岡市でも、失政や市長の不行跡について、度々議論されてきたのは事実だ。しかし、問題提起するのは、決まって共産党か民主党の市議団。自民、公明、みらい福岡の与党3会派は、市長の行いを真正面から糾弾することを避け、陰口ばかりに終始してきた。機能停止を招いたのが、与党会派であることは疑う余地がない。とくに自民党の“長老”と呼ばれる議員たちが、密室で市長と話をつけ、ゴタゴタが表に出ないように仕向けてきた罪は大きい。

 そうしたなか、高島擁護派の一人である森英鷹市議に公職選挙法違反の疑いが浮上した。同市議の関係政治団体が行った会合で、集めた会費以上の飲食代を支払っていたというもの。飲食代の全額を政治団体で支払っていたケースもある。森氏は現職の市議会議長。頬かむりして済まされる問題ではないが、議会のレベル低下を物語る事例である。

記者クラブの不作為
 腐っているとしか言いようのない福岡市だが、その実態を知らない市民の方が多い。新聞、テレビが何も報じていないからだ。高島市政の4年間、福岡市政記者クラブに所属する記者たちが、独自の調査報道で高島市政の実情を報じたケースは皆無。能力がないのか、やる気がないのか、あるいはその両方なのか分からないが、HUNTERで報じたことが議会で取り上げられ、それを申し訳程度に記事にする状況が続いている。新聞に掲載されるのは、市役所の発表ものばかり。権力を監視するために設置されているはずの「記者クラブ」が、サロンと化している証左である。

 権力が腐敗し、議会は機能停止、監視役の記者クラブは、権力の飼い犬――“惨状”というしかない。来月2日、主役であるはずの市民を置き去りに、福岡市長選挙が始まる。下らない記事が氾濫するのかと思うとうんざりするが……。



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