高島宗一郎市長の公費出張問題で揺れる福岡市。東京出張の際、片道分の旅費を自己負担する形でプライベートを満喫してきた市長だが、今年2月の東京出張をめぐっては旅行命令書の組織的改ざんが疑われる事態にまで発展している。
この問題の発端となったのはタクシーチケット。その私的流用を隠すため、私用での上京を「公用」に仕立て、命令書を書き換えた可能性が高い。出張にかかる経費はすべて税金。市政トップの資質が問われているのは言うまでもないが、改めてナンバー2の立場にある副市長のタクシーチケット使用状況を確認したところ、不可解な時間帯にばかりタクシーを使っていた実態が浮かび上がった。
(右は大野敏久副市長が使用したタクシーチケットのうちの1枚)
深夜に公務?
下は、福岡市への情報公開請求で入手した大野敏久副市長使用のタクシーチケットについて、記載内容をまとめた表だ。確認できたのは、大野氏が副市長に就任した平成23年から今年7月までの22回分。表は左から、使用日時、時間、走行経路、料金。本年の使用はない。
在任期間の割にタクシーチケット使用が少ないのは、他の職員名でチケットが使用された場合、正確な副市長のタクシー利用状況がつかめないからだ。市側も、開示されたタクシーチケットがすべてではないことを認めており、杜撰な管理体制であることは間違いない。
表を一見して分かるのは、土曜、日曜のタクシー利用の多さ。22回のうち9回がそうだ。次に夜間、しかも20時以降のタクシー利用が14回にのぼっている。このうちピンク色で色分けしたものは、深夜のタクシー利用で、夜中の1時あるいは4時台にチケットを使っていた。他の副市長はもちろん、これまで見てきた福岡市幹部のタクシー利用状況とはまるで違う形だ。一体なにをやっているのか?
開示されたタクシーチケットには、さらに大きな問題が存在している。下は、22枚のタクシーチケットの中の3枚。よく見ると、それぞれの「筆跡」に違いがあることが分かる。福岡市が支給しているタクシーチケットは、使用した者の「自書」が原則。チケットにも≪使用者が必ず記入のこと≫と明記されている。大野氏が支給されたタクシーチケットに、異なるとしか思えない筆跡が散見されるということは、別の人間が記入した可能性を示している。そうなると、第三者にタクシーチケットを渡した疑いも浮上する。 6日朝、この件の情報公開を担当した市秘書課に、大野氏のタクシー利用に該当する公務及び筆跡が違うものが混じっていることの理由について説明を求めたが、終日回答はなかった。
大野氏は、県警OBの経歴を買われて抜擢された「安心・安全」を担当する副市長。災害や事故の際には、真っ先に大野氏へと情報が上げられるシステムになっているという。職員不祥事の場合も、大野氏の担当だ。現場に出向くこともあるだろうし、夜間の「出動」があったとしてもおかしくはない。しかし、市に関係する不測の事態はタクシー利用実態に見合うような土日や夜間ばかりではない。一連のタクシー利用は適正だったか――大野氏自身の説明が必要だろう。
大野副市長をめぐっては、「関係者との情報交換」という漠然とした名目で、公用車を使って度々市外への出張を行っていたことや、ビジネスクラスでカナダへ出張し、約90万円もの旅費を費消していたことが判明している。