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しっかりしろ!朝日新聞

2014年10月 1日 09:10

朝日新聞9月29日夕刊 相次ぐ誤報の判明で叩かれ続ける朝日新聞が、持ち味である批判精神まで失いかけている。
 従軍慰安婦をめぐる虚偽証言報道、さらには「吉田調書」の内容を捻じ曲げた形のスクープ。いずれも批判されて当然だったとはいえ、検証と謝罪は済ませている。これが不完全だという意見もあるだろうが、朝日に求められているのは、読売・産経といった「権力の犬」に対抗する報道機関の一員として、政権をはじめとする権力への監視機能をより強化し、読者の期待に応える記事を送り出すことだろう。朝日新聞が生き残る道はそれしかない。しかし、誤報発覚後の同紙の紙面からは、再生に向けての気概が見えてこない。

所信表明めぐる朝日の及び腰
 臨時国会が始まった29日、西日本新聞の夕刊に安倍首相が行う所信表明演説の内容を報じる記事が掲載された。見出しは『原発再稼働の推進明言』。演説の内容全般を紹介しているが、九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を前に、改めて政権の原発推進姿勢を浮き彫りにした形。隣に配した解説記事では演説の内容について「具体策乏しく」と切って捨て、権力側と対峙する構えを鮮明にしている。記事の構成から言って、原発推進の政権に批判的であることは明らかだ。

西日本新聞

 一方、朝日新聞の同日夕刊。所信表明演説の内容を報じたまでは同じだったが、見出しにも、記事にも「原発」の文字は出てこない。30日の朝刊も同様で、首相が原発再稼働を進める意向であることには、ほとんど触れていなかった。政権が進める原発推進策に対し、無批判となった形だ。

朝日新聞

 朝日は、いわゆる「吉田調書」の記述を曲解し、東電職員の退避を「命令違反」だったと断定する「誤報」を流したことで、いまだに厳しい批判にさらされている。しかし、同紙が千回を超えて連載を続けている「プロメテウスの罠」などは、原発がもたらした現実を、丹念な取材と分析で描き出した評価すべきもの。原発推進を鼓舞する読売・産経の向こうを張って、朝日が存在感を示してきた証しでもある。

 原発をめぐって避難計画の不備や火山活動への対応不足が指摘されるなか、首相があえて所信表明で再稼働を明言するというなら、それに対する朝日としての姿勢を明示するのは当然ではないか。だが、同紙はこれを怠った。原発から“逃げた”としか思えない。

 特定秘密保護法制定から、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認に至るまでの安倍晋三の極右路線を支えてきたのが、「権力の犬」と化した読売・産経両紙であることは疑う余地がない。これに対し、安倍政権と厳しく対峙する姿勢を示してきたのが朝日・毎日・地方紙連合軍だ。とりわけ朝日の反権力の姿勢には共感する読者も多かったはず。それが朝日の朝日たるゆえんだろう。

 読者が朝日新聞に求めているのは、権力に対する番犬の役割であって、政権のお先棒を担ぐことではない。これまで続けてきた反原発の姿勢までかなぐり捨てるようでは、存在価値がなくなってしまう。なにより大切なのは、「さすが朝日」と唸らせるような記事を書くこと。それには相当の覚悟と気概が必要であることを、朝日新聞は肝に銘ずべきだ。しっかりしろ!朝日新聞。



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