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必然性は皆無 ― 福岡市長、議長らのハイヤー利用

2014年9月17日 09:30

福岡市役所 高島宗一郎福岡市長の東京出張におけるハイヤー利用状況を調べる過程で、新たに市議会議長と副市長が東京でハイヤーを利用していたことが分かった(16日既報)。
 福岡市東京事務所に、議長・副市長のハイヤー利用の理由を聞いたところ、「ハイヤーでなければ入れないところがある」と回答。先週の福岡市議会で、市長のハイヤー利用が「事前に車のナンバーを知らせる必要があるため」などとした市側の答弁と同様の趣旨だ。だが、この市側の主張、ハイヤー利用を正当化するにはかなり無理がある。
(写真は福岡市役所)

議長、副市長もハイヤー利用
 下は福岡市への情報公開請求で入手した東京におけるハイヤー「乗車明細書」の一部。備考欄に市側が赤い字で書き入れた「市長以外」とは、議長、副市長を指すのだという。

「乗車明細書」議長、副市長2

  平成25年4月18日、高島市長と森英鷹市議会議長は、「春の園遊会」に参列している。園遊会とは、春と秋の2回、赤坂御苑で催される天皇・皇后両陛下主催の交流会。首相をはじめ各大臣、衆・参両院の議長・副議長・議員、議員最高裁判所長官・判事、都道府県の知事・議会議長、市町村の長・議会議長、各界功績者など2千数百人が招待される。春の園遊会に招かれた森議長は、ハイヤーを利用して、目的地である「赤坂」に向かっていた。走行経路は「紀尾井町~赤坂~紀尾井町」。料金は21,262円だった。

 次は今年4月。12日と17日に、市長以外の市関係者がハイヤーを利用していた。12日は新宿御苑で行われた安倍総理主催の「桜を見る会」に参加するため森議長が「虎ノ門~新宿御苑~虎の門」でハイヤーを利用。春の園遊会が催された17日には、貞刈厚仁副市長が「羽田~平河町~赤坂御苑~霞が関~八重洲」を移動するためハイヤーを使っていた。二人のハイヤー代合計は54,900円となっている。

「乗車明細書」議長、副市長

虚偽に等しい市側の主張
 なぜ議長や副市長まで「ハイヤー」を使っているのか――市東京事務所に確認したところ、返ってきた答えは「行く先を見てもらえば分かると思うが、ハイヤーでしか行けないところだから」だった。

 たしかに、「園遊会」も「桜を見る会」も、車で乗り付けようとすれば、警備の都合上ナンバーの事前通行が必要だ。しかし、近くまでタクシーを利用し、徒歩で会場入りすることに何の不都合もない。少し考えれば分かることで、すべての招待者が、黒塗りの車で乗り付けるわけではないのだ。経費削減を真面目に考える自治体関係者が、福岡市と同じようなマネをするはずがない。議長や副市長が「電車かタクシーで結構」と言えば、ハイヤー利用はなくなるのである。市側の主張は強弁に過ぎない。

 今月8日、市議会で民主党議員の質問に答えた高島市長は、東京出張の度にハイヤーを利用していることについて「訪問先のセキュリティ対策として、前日までに車のナンバー等を伝えることが多く、当事者との手続が煩雑になる」(市長答弁)という理由を挙げた。しかし、この市長の言い訳は「虚偽」に近い。車のナンバーを事前に申告する必要のなる施設といえば、首相官邸と皇居だけ。行事としては前述の園遊会や桜を見る会のみだ。中央官庁の警備も厳しくなったが、首長が訪問するのにナンバー通告を求める役所などあるはずがない。

 念のため、下に市長就任以来の高島氏の東京出張について整理した一覧表を再掲する。

平成22年~26年 旅費

 3年半で78回にのぼる東京出張において、ナンバーの事前通告を必要とする場所に向かったとみられるものは、園遊会などごくわずかしかない。市長は、ハイヤー利用を正当化するため、ごく一部の例外をハイヤー利用全般の言い訳に使っているのである。ほとんどの出張にハイヤー利用の必要性がない以上、議会での市長答弁は「虚偽」といっても過言ではあるまい。

 市長らのハイヤー利用は、権力者の愚かな「見栄」だ。黒塗りの車でふんぞり返りたいのなら、自分のカネでやるべき。市民は、彼らの虚栄心を満たすために税金を払っているわけではない。



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