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ファシズム国家

2014年9月30日 09:10

 特定秘密保護法、武器輸出解禁、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認、米軍普天間飛行場の辺野古移設、そして原発再稼働……。いずれの政治課題も、安倍政権が強引に推し進めてきたものだ。その過程で完全に無視されたのが「民意」。主権者たる国民の声が、安倍晋三という独裁者に押しつぶされているのが現状である。国民より「国家」や独裁者の意向を優先する政治体制の行きつく先を、この国は知っているはずなのだが……。

首相の民意無視
 特定秘密保護法の制定や集団的自衛権行使容認の閣議決定は、国民の反対を無視した安倍首相の暴走である。方針決定の過程では、国民は蚊帳の外。すべて安倍自民党と公明党の密室協議で事が決まった形だ。戦後の日本で、これほど国民の声を無視する政権の存在を、筆者は知らない。

 原発再稼働に対する政権の姿勢も同じだろう。大多数の国民が原発に危機感を抱いているにもかかわらず、財界の意向だけを尊重し、再稼働どころか新設さえ認めそうな勢いだ。“命よりカネ”。安倍政権は、国民の安全より原子力ムラの存続の方が大事なのだ。

 民意無視がもっとも顕著となっているのが沖縄に対する安倍政権の姿勢。今年1月、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非が問われた名護市長選で、移設反対を訴えた現職が勝利。次いで今月7日に投開票が行われた名護市議選(定数27)でも、移設反対派が14議席を獲得して過半数を維持する結果となった。市長も議会も「移設反対」。明確に示された民意を、安倍政権は一顧だにせず、移設に向けた作業を進めている。

 安倍首相は、集団的自衛権の行使容認を決めるにあたっての会見で、フリップを使って米艦に乗った邦人を助ける必要性を強調した。船に乗れる程度の人数を助けるため、国の根幹を変えようという首相が、名護市民6万人の民意を平然と切り捨てるというのだから矛盾している。

 美辞麗句を並べたてる政治家は信用できない。安倍がその典型であることに、国民もそろそろ気付くべきだろう。安倍が言う「美しい国」とは、国民が国が決めたことに盲従する世の中なのである。

石破も同じ
 信用できない政治家といえば、こちらも同じ。過日のNHK日曜討論で、石破茂地方創生担当相が「地方創生」について語っていた。曰く――「公共事業のばらまきはしない。役所の縦割り行政そのままの事業はしない。これまでの“まちづくり”をきちんと検証して、これからの“まちづくり”を進めていく。そこに住む住民の声が一番大事」。笑止の沙汰だ。

 1月の名護市長選、自民党推薦候補の応援に入った石破氏(当時幹事長)は、名護市発展のための財源を確保すると称して500億円の振興基金構想をぶち上げ、露骨な利益誘導を行った。これこそ、まさに「ばらまき」だろう。「移設反対」という名護市の民意を無視しておいて『そこに住む住民の声が一番大事』……。一体どの口が言わせているのやら。

ファシズムの先
 安倍や石破に共通しているのは、国民より国家を尊重するという考え方。両人とも「国益」という言葉が好きだ。国のためなら、個人や地域の意思は無視できると思っており、全体主義的な傾向が強い。戦争を厭わないという点でも同じ。国粋主義者と言っても過言ではあるまい。

 全体主義、国粋主義を「ファシズム」とも呼ぶ。ファシズムとは、イタリアのムッソリーニが用いた思想や、同国で敷いた政治体制のことを指す。国家が最優先。個々の国民は国家に従属すべきものであるとされる。ヒトラーが主導したナチズムも、広義におけるファシズムの一形態であろう。戦前、日本はファシズム国家であったイタリヤ、ドイツと「三国同盟」を結び、第二次世界大戦へとなだれ込んだ。ファシズムが、やがて戦争を志向することを、歴史が証明しているのである。

 民意を無視する安倍政権の政治手法は、まさにファシズム。その先にあるのが「戦争」であることを、私たちはしっかりと認識すべきである。

<中願寺純隆>



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