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福岡市・県警OB副市長 カナダ出張は税金の無駄遣い

2014年8月20日 08:35

視察日程 県警OBから初めての起用となった福岡市の大野敏久副市長が、観光目的としか言いようのないカナダ・トロントへの出張を行っていたことを、今月12・13の両日に報じた。
 高島宗一郎市長の公費出張を利用したプライベート創出に続き、市ナンバー2の大名旅行……。反響は大きく、HUNTERには、さらに詳しい検証を求める声のほか、「辞任は当然」(市内在住の大学生)といった厳しい批判も寄せられている。
 そうした中、問題のカナダ出張に関する情報公開の実施方法に意義を申し立てたところ、市がこれに応じて黒塗り非開示部分を明らかにした。一体何を隠したかったのか?

公式日程、無理に設定
 問題のカナダ出張は、ライオンズクラブ国際大会の視察を目的として実施されたものだ。毎年、世界のいずれかの都市で開かれる同大会では、ライオンズクラブ総会のほか、各所で関連行事となるパレードやショーが行われる。ライオンズクラブの会員ではない大野氏や随行職員は、総会には「参加」できない。もちろん、先方から招待されたわけでもなく、あくまでも「視察」。視察と言えば聞こえがいいが、要は物見遊山だったということだ。

 もちろん、観光だけでは公費支出は認められない。そのため、トロント市の関係者やライオンズクラブの役員と会う機会を設定していたが、どう見ても無理やり出張としての体裁を整えた形だ。福岡市の隠ぺい姿勢も気になった。これまで報じてきたとおり、トロント市関係者やライオンズクラブの役員の名前は、なぜか黒塗り非開示。福岡市側に確認したところ、相手の名刺さえ残っていないという。一体、何をやっていたのだろう。

 大野副市長らが会ったというトロント市の関係者は5名。民間人も含まれていたというが、役人の名前を隠す理由が分からない。福岡市側は、「個人情報」だから非開示だと主張しているが、随行職員らの復命にあたる「ライオンズクラブ国際大会(トロント開催)に係る関係者競技及び大会参加報告書」(以下、『報告書』)には、5人の顔がはっきり写った集合写真が付けられていた。滑稽と言うしかない。トロント市側には、事前に交通規制の計画内容や雑踏警備の対応など26項目の質問を送付していたというが、福岡市には様々なイベントを通じて蓄積してきたノウハウがあるはず。わざわざ幹部職員が現地に出向いて答えを聞く内容とは思えない。

 表敬挨拶を行ったことになっているライオンズクラブの国際会長や国際第2副会長といった役員に至っては、ライオンズクラブのホームページ上で顔写真まで公開されており、福岡市が情報を非開示にする必要がない。不必要な情報隠しであるとして市側に抗議したところ、ライオンズクラブ関連の部分だけは、黒塗りを外して開示に応じるという。結局、ライオンズクラブの役員名が記された出張命令書起案時の「日程表」と、報告書の非開示部分だけが、改めて公開されることになった。下がその結果。上が「日程表」、その下が「報告書」の該当ページである。

日程表1 → 日程表2
今年6月13日に起案された旅行命令書に添付の「日程表」。右は、黒塗り部分を新たに開示したもの。

報告書1 → 報告書2
7月28日に作成された「復命書」に添付の「報告書」。右が、黒塗り部分を新たに開示したもの。

 ライオンズクラブの国際会長と他の役員は、1年ごとに開催される総会で選出される決まりだ。新たに開示された役員名を確認したところ、出張命令書が起案された時点の表敬先と、実際にカナダ・トロントで表敬した相手は同じ顔ぶれだった。表敬日は7月6日。市側の説明によれば、役員の正式交代は8日だったため、6日時点では出張命令起案時の役員は、現職のままだったという。2日後に交代することが確定している会長や副会長に、表敬挨拶を行ったということだ。まさに形式的なもの。しかも、表敬挨拶が行われたのは総会の会場。報告書にある現場写真を見る限り、行きずりに挨拶を交わしたと言ってもおかしくないシチュエーションである。相当無理をした場面設定だったことがうかがえる。

明らかに税金の無駄遣い
 報告書の記載を何度も読み返してみた。調べがつく限り、ライオンズクラブ国際大会の様子も確認した。その上で、結論を述べるとすれば、このカナダ出張は税金の無駄遣い。不適切な公費支出だったと言わざるを得ない。報告書に記された公式日程は、前述したトロント市役所訪問とライオンズクラブ役員への表敬。日本のライオンズクラブが開いた夜の会合に出席し、大野氏が挨拶していたが、これは付け足しに過ぎない。あとはパレードやショーの見物であり、それ以外の時間に、何をやっていたのかまるで分らないといった状況だ。十分に「観光」を楽しんだと見る方が普通だろう。

 市の部長、課長が再来年に福岡市で開かれるライオンズ国際大会にかかわることは十分に予想できる。もちろん異動がなければの話。しかし、大野氏は特別職。市長の判断で任を解かれることもあれば、今年秋の市長選挙で高島氏が落選でもすれば、真っ先にお役御免が予想される人物だ。2年先のライオンズ国際大会のために、「安全・安心」担当の副市長である大野氏がカナダに旅行する必然性はあるまい。

 最大の問題は、行く必要のない大野氏が、約90万円もの旅費を費消したことだ。随行職員がエコノミークラスを利用しているにもかかわらず、ひとりビジネスクラス。航空運賃は職員の6倍もかかっている。『ふざけるな。何様のつもりだ。税金払っているのは市民なんだ』(HUNTERへの読者メールより)というのが、大方の市民の感想だろう。ビジネスクラス利用は市の旅費規程違反ではない。しかし、市長、副市長は、厳しい財政事情を踏まえ、率先して経費削減に取り組むべき立場。職員二人分の旅費より高額なカネを、一人で使い切る副市長など、聞いたことがない。

 歴代の福岡市長は、市民の目を意識してエコノミークラスを利用してきたという。県警OBがどれほど偉いのか知らないが、大野氏に、積み重ねられた福岡市の歴史を否定する資格などない。



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