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玄海町長選 現職勝利が示す原発城下町の「歪み」

2014年8月 4日 09:50

玄海町長選挙 原発城下町に“正義”はなかった。3日、九州電力玄海原子力発電所がある佐賀県玄海町の町長選で、現職の岸本英雄町長が勝利。3選を果たした。
 岸本氏をめぐっては、実弟が社長を務める地場ゼネコン「岸本組」が原発マネーによる町の建設工事を独占。その利益が町政トップである岸本氏に還流するという、不正に等しい構図がまかり通ってきた。この選挙で町政刷新が図れるかどうかに注目していたが、原発マネーに依拠する町の有権者が選んだのは岸本氏。歪んだ町政の継続を肯定した形だ。
 この町に、原発再稼働を決める権限があるのだろうか?

争点化されない「原発の是非」 
玄海原発 低調な選挙戦だったことは否めない。事実上の一騎打ちとなった今回の町長選、岸本氏の対抗馬となったのは元町議。しかし、岸本氏も元町議も原発再稼働容認。政策論争は影をひそめ、原発の是非が問われることも、新たな町の未来像が提示されることもなかった。

 両候補の訴えの違いは、原発マネーを何に使うのかという点だけ。そのせいか、投票率は80・69%。選挙戦が行われた8年前(88.83%)を8ポイント以上下回っている。(右の写真は玄海原発

 町民の多くが、玄海原発に生活の糧を求めざるを得ない状況では、原発の是非が選挙の争点になるはずがない。昨年の町議選では、定数12のところに立候補者12人。無投票で議席が決まり、原発をめぐる論戦が展開されることはなかった。

 今回の町長選、HUNTERが注目したのは、原発マネーによる公共事業や九電関連の工事を独占的に受注してきた岸本組と町長の一体関係を、町民が認めるか否か。原発再稼働の同意権限を持つ町に、まともな感覚が残っているかどうかを見極める材料にもなると考えたからだ。

歪んだ町政
岸本組 玄海町が発注する公共工事は、電源3法交付金などの恩恵を受け、同規模の自治体のそれをはるかにしのぐ件数だ。そうした中、岸本組は毎年、町発注工事の15%前後を受注し、金額ベースでは事実上“独占”。工事の発注形態はほとんどが「指名競争入札」で、恣意的な業者選びが公然化した状況となっている。

 岸本氏が町長に就任してから事業化されたのが「薬草園」、玄海原発の啓発施設「次世代エネルギーパーク」、「町道長倉-藤平線整備」。主として核燃料サイクル交付金を原資とした事業費は、薬草園が約12億、次世代エネルギーパークが15億。町道整備に至っては、わずか1.9キロの道路整備に28億円という、法外な額を投入している。いずれの工事も、岸本組が受注しているのは言うまでもない。

 町長は、岸本組に仕事を与える一方、自身が保有する同社の株を譲渡する形で、毎年数百万円の収入を得ており、原発マネー還流のシステムが出来上がっている。他の自治体では考えられない癒着構造が、今も続く。政治倫理条例も、情報公開条例もないのだから、やりたい放題。他の自治体なら考えられない歪んだ町政が、玄海町では当たり前になっていた。そして今回の町長選。町民が選んだのは、歪んだ町政の継続だった。町政だけでなく、町全体が歪んでいるとしか思えない。

歪んだ町が持つ「生殺与奪」の権限
万歳三唱が行われた岸本組の講堂 歪みの象徴は、当選決定後の光景。岸本陣営では、選挙のたび、選挙事務所のそばにある岸本組の講堂で「万歳三唱」を行っており、昨日もまったく同じ愚行が繰り返された。公共事業の発注権者が、受注業者の施設を使って勝利のバンザイ――まともな感覚ではない。(写真は昨晩、万歳三唱が行われた岸本組の講堂

 問題は、この歪んだ町が、原発再稼働に対する同意権限を持っていることだ。原発再稼働にあたっては、立地自治体の同意が求められるだけで、周辺自治体の意思が反映されることはない。法的には何の裏付けもない仕組みが、福島第一原発の事故後も、なお続いている。滑稽なことに、原発によって生かされる町が、他の自治体の住民の生殺与奪権を持っているのである。不正の臭いに蓋をするような町に、これが許されるとは思えないが……。



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