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福岡市・県警OB副市長 疑惑の出張に説明つかず

2014年8月11日 06:00

大野氏出張 高島宗一郎市長の不適切な東京出張が明るみに出た福岡市で、市幹部による疑惑の出張が繰り返されていることが分かった。福岡市への情報公開請求で入手したのは、県警OBで副市長の大野敏久氏の出張命令書。命令書を精査したところ、大野氏は、副市長就任から今年6月まで、「関係者との情報交換」という漠然とした名目で、市外へ度々の出張を行っていた。移動はすべて公用車。税金を使った出張だが、目的は判然とせず、確認を求めた副市長付きの秘書は、詳しい内容については「答えられない」と話している。

目的不明―頻繁に「関係者との情報交換」
 県警OBの大野敏久氏が副市長に就任したのは平成23年の1月。以来、今年6月までの32回の出張のうち、15回が「関係者との情報交換」に充てられていた。下は出張命令書の一部だが、いずれの命令書にも詳しい目的や用務先は記されていない。

旅行命令(依頼)書

 通常、職員への出張命令書には用務内容が明記されており、何のための出張か分かるようになっている。さらに、出張終了後には「復命書」の提出が義務付けられているため、公費支出に見合う出張だったのかどうかの見極めも可能だ。しかし、特別職である市長や副市長には「復命」の義務がないため、こうした杜撰な記録しか残らない仕組みとなっている。

 「関係者との情報交換」に名を借りた、プライベートではなかったのか――そうした疑問を抱かれてもおかしくない命令書の記載だが、福岡市への情報公開請求で入手した大野副市長の出張命令書によれば、「関係者との情報交換」のため訪れたのは、次の県内各都市。これを年度ごとにまとめた。

【23年度】
・筑後市(9月30日)
・飯塚市、八女市(2月22日)
・筑紫野市(3月30日)
【24年度】
・柳川市、久留米市(5月15日)
・嘉麻市(10月31日)
・北九州市(11月14日)
・筑紫野市(3月11日)
【25年度】
・筑後市(5月21日)
・柳川市(6月4日)
・北九州市(6月11日) 
・嘉麻市(6月12日)
・朝倉市(6月17日)
・うきは市(7月2日)
【26年度】
・北九州市(5月29日)
・大川市(6月16日)

 税金を使っての出張である以上、市の業務として適切だったかどうか、説明がつかなければならない。一連の「関係者との情報交換」について、副市長の秘書に確認したところ、数時間置いて次のような回答があった。

  • 安全・安心を担当しており、暴力団対策、交通安全、防災といった各地での先進的な取り組みがあるということで、県下全域で情報交換を行っているところ。
  • 相手方が誰かというところについては、申し上げられない。

 しかし、この回答はおかしい。以下、記者と副市長秘書とのやりとりだ。

 記者 用務先は県警関係者ではないのか?
 秘書 それについては申し上げられない。

 記者 暴力団に関係する事案だからか?
 秘書 ですとか、交通安全とか、防災とか、いろんなことですけど……。

 記者 交通安全とか防災に関することで、内容が言えないということがあるのか?
 秘書 えーと、それについてはちょっと、申し上げられないですね。

 記者 それはおかしい。副市長は何をやっているのか分からないということではないか?
 秘書……。

 記者 まさか、ゴルフに行ったとかいう話ではないだろう。
 秘書 いや、それは(笑い)。

 記者 笑っているが、そう思われても仕方のない記録の残し方だ。歴代の副市長で、こんなケースはなかった。
 秘書 ……。


 詳しい用務内容が説明できない公費出張など、聞いたことがない。暴力団対策のための情報交換で、相手先を隠すことはあるのかもしれないが、交通安全や防災に関することで隠さなければならない相手などいるはずがない。副市長の秘書が言うように、「先進的な取り組み」をしている自治体の関係者に会うのならば、明記するのが普通だ。「答えられない」というからには、よほどまずい相手だったか、あるいは、まともな用務ではなかったという推測が成り立つ。大野副市長サイドの主張は、にわかには信じ難い。

 疑惑の出張に対する言い訳も甘いが、肝心の出張命令書自体が、杜撰に扱われていた。下は、平成24年に副市長が飯塚、八女両市を公用車で訪れ、「関係者との協議」に及んだ時の出張命令書。旅行日は2月22日となっているが、赤い矢印で示した通り、実施日は「9/30」となっている。記載の間違いは、いずれかの段階で訂正されるものだが、この命令書は訂正されないまま、開示されていた。ノーチェックだったということ。公文書としての信頼性が揺らぐ事実である。

杜撰な文書管理2.jpg

 大野副市長の不可解な出張について、市の幹部経験者は次のように話している。
「用務が『関係者との情報交換』で片づけられるなど、ちょっと、信じられない。通常、公費を使っての出張は、相手先が明記されるもの。話の内容を秘匿することはあっても、誰と会ったかについては、記録を残さざるを得ないからだ。そうでなければ、説明責任が果たせない。隠す以上、本当は私的な用件だったのではないかと疑われても仕方がない。そもそも、福岡市の安心・安全のことで他の自治体から教えを乞うようでは、大野氏の存在意義はないだろう。出張目的は、別にあったのではないか。少なくとも、防災や交通安全の話をして、隠すような相手などいないだろう」

 たしかに、防災や交通安全についての情報公開なら、隠す必要はない。隠密行動がもたらすのは、市役所内部での疑心暗鬼。取材の過程で浮上した、とんでもない市関係者の話がある。「大野さんは、マル暴関係者と会っているのではないか」――マル暴とは「暴力団」のこと。到底あり得ないことだが、大野氏は福岡県警の警察官時代、暴力団犯罪を担当する役職にあったため、こうした憶測を呼ぶのかもしれない。情報交換の相手が、暴力団関係者だった可能性を否定するためにも、詳しい出張内容を明らかにするべきだろう。噂に過ぎないことを祈るばかりだが……。



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