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不偏不党とは程遠い「そこまで言って委員会」
国民の声を「左翼目線」と断定 沖縄の民意も否定

2014年7月14日 10:00

ラテ欄 昨年の特定秘密保護法、そして今回の解釈改憲による集団的自衛権の行使容認――いずれも、国民の声を無視した安倍政権の暴走だが、各種の世論調査結果を見ると、3割前後の人たちががこうした方向性を認める姿勢を示している。国論が割れるのは、一定の読者を持つ読売・産経両紙による政権寄りの報道にあるのは言うまでもない。戦前の過ちを顧みない、こちらも「暴走」としか思えないはしゃぎぶりだが、これは新聞が基本的に報道内容を規制されないメディアだからこそ許されること。立ち位置を明確にしているに過ぎない。
 一方、同じメディアでありながら、テレビには偏った放送内容は認められない。公共の電波を使うため、「放送法」が厳しい縛りをかけるからだ。しかし、読売系列の局が制作した『たかじんのそこまで言って委員会』を見て驚いた。人気の討論番組らしいが、安倍政権に対する批判や疑問のすべてを「左翼的観点」と決めつける放送内容だったからである。どう見ても矩を超えていると思うが……。

放送法無視の偏向番組
 放送法は、「放送」の原則について次のように明記している。

第1条 この法律は、次に掲げる原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。

一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

 『不偏不党』とは、いずれの党派、いずれの主義にも偏らず、中立、公平を保つということだ。さらに番組の編集等にあたる場合については、次のような条件を規定している。

第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。

一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 12日午後、読売テレビ制作の「たかじんのそこまで言って委員会」を見る機会があった。FBS福岡放送が2週分をまとめて放送したもので、前半放送分はタイトルからして凄かった。
 新聞のテレビ欄にあるのは「暴走!?安倍政権の目玉政策を“左翼くん”が総点検」。極端に右寄りの番組であることは知っていたが、『左翼くん』とは何者のことか?興味を引いた。

 さすがに「サヨクくん」とは呼べなかったのか、「左翼くん」は『ひだり つばさくん』と呼ぶのだという。番組のなかでは司会者もパネリストたちも「ひだり つばさ」と言っている。しかし、出てくる集団的自衛権や沖縄の米軍基地といった政策ごとの前フリの段階では、ナレーターがはっきりと「サヨク目線で安倍政権暴走チェック!」。視聴者には、後に続く安倍政権の政策に対する「ひだり つばさ」の批判や疑問のすべてが、左翼目線だと認識させる仕掛けになっている。コワモテの論客ばかり集めた番組にしては、ずいぶん姑息な制作手法だ。

 問題は、番組内で「ひだり つばさ」なるキャラクターが提示するチェック内容の大半が、「サヨク目線」だと断じてから議論を行っていること。集団的自衛権の行使容認によって高まる戦争の危険性、安倍の政治手法、沖縄の米軍基地問題……。多くの国民が感じており、読売・産経以外の新聞各紙やテレビ番組も報じている疑問や批判を、「サヨク目線」だと断定した上で、パネリストたちが好き勝手なことをしゃべりまくるのである。もちろん各パネリストが話すのは、批判や疑問を頭から否定する内容。これではまるで安倍政権のプロパガンダ。不偏不党とは程遠い番組だ。

ジュゴンの生息を否定
 ちなみに、登場した8人のパネリストは、一人を除いてほとんどが極端な思想・信条の持ち主。安倍政権の方向性に好意的なことでも知られる面々だ。初めから結論が見えているわけだが、沖縄の米軍基地についての議論は、あまりのひどさに呆れてしまった。

 米軍普天間基地の名護市辺野古への移設についての話。軍事ジャーナリストとやらが、「だれも沖縄の辺野古沖で、ジュゴンを見た人はいない」と言い出した。取材した結果だとまくしたて、皇室のはしくれだというパネリストと一緒になって、ジュゴンなんていないという形でけりをつけてしまった。開いた口が塞がらない。

 辺野古沖は、国の天然記念物で絶滅危惧種に指定されているジュゴンの生息域として知られ、移設反対論の根拠の一つとなっている。数が極端に少ない生物だけに、地元の人でも簡単に出会うことは難しいとされ、わずかな期間の取材で「ジュゴンを見た」という人間に会えるはずがない。ジャーナリストを自称する割には、ずいぶんお寒い検証しかしていない。

 その証拠に、防衛省沖縄防衛局は5月、2012年に次いで昨年の調査でも、辺野古沿岸の海域にジュゴンが餌場として使ったことを示す「食跡」が確認されていたことを明らかにしている。さらに先週、環境保護団体「日本自然保護協会」が、ジュゴンの生息調査を行い、辺野古沿岸部で 食跡が見つかったことを発表している。番組に登場したパネリストたちは、自分たちにとって都合の悪いことは、「知らなかった」とでも言うのだろうか。

 辺野古のジュゴンについての話の中で、皇室パネリストはこう言っている。「都合の悪いところだけ(ジュゴンが)いるようにして、都合の悪いところはいないことする……」。おかしな日本語だが、言いたいことは分かる。基地移転反対論者が、自分たちの都合でジュゴンを利用しているということだろう。だが、これは実情を知らない間抜けな話。ジュゴンがいるかいないか、防衛省に聞いてみるといい。都合のいい話ばかりしているのが、自分であることが分かるだろう。

沖縄の民意も否定
 米軍基地をめぐる議論では、元航空幕僚長をはじめとするパネリストたちが、基地移設に反対する沖縄の民意を否定する発言を行っている。「沖縄の民意は見えていない」(皇室パネリスト)――移転反対の現職市長が大差で勝った昨年の名護市長選の結果など、無視するということだ。これが公共の電波を使った番組と言えるのか、はなはだ疑問である。首都圏や沖縄での放送はないらしいが、偏り方は尋常ではない。

 『たかじんのそこまで言って委員会』がヨイショしてきた政治家といえば、橋下徹大阪市長と安倍晋三首相。番組の意図がよく分かる顔ぶれではあるが……。



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