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「平和の党」の終焉~公明党・創価学会が抱える矛盾

2014年7月 1日 08:40

 国民の過半数以上が反対するなか、きょう、集団的自衛権の行使容認に向けた「解釈改憲」が閣議決定される。これに伴う自衛隊法などの関連法案改正が行われるのが秋の臨時国会。安倍晋三という一人の狂った為政者が、戦後70年の節目となる2015年を「新たな戦前」のスタートに変える。
 平和を希求してきたこの国の方針を180度転換させる重大な決定を、主権者であるはずの国民の意見も聞かず、自民党と公明党だけで決めるという暴挙。これは同時に、「平和の党」を自認してきた公明党の終焉を意味している。支持母体である「創価学会」は、本当にこれを認めるのか?学会員は、自分たちの組織の歴史と、どう整合性をつけるのか?

戦争否定した「人間革命」の書き出し

戦争ほど、残酷なものはない。

戦争ほど、悲惨なものはない。

だが、その戦争はまだ、つづいていた。

愚かな指導者たちに、率いられた国民もまた、まことに哀れである。

 「人間革命」――全12巻。著者は創価学会の支柱である池田大作名誉会長。学会員なら誰もが読んでいるはずの大作の第1巻は、こう始まっている。

 同書は、創価学会の第2代会長である戸田城聖氏の生涯を通じて、戦後に組織を拡大していく学会の軌跡を描いたもの。文庫本発刊にあたっての巻頭言には、『人間革命は、創価学会の精神の正史である』と記されている。その書き出しで池田名誉会長は、戦争を起こした指導者たちを『愚か』と切りすて、率いられる国民を『哀れ』と喝破したのである。この精神はどこへ行ったのか……。

戦時中には弾圧の歴史
 創価学会の前身は「創価教育学会」。1930年(昭和5年)に、教員出身で初代会長となる牧口常三郎氏や戸田城聖氏が創設した。日蓮上人が説いた仏法に基づく教育の実践を目指し活動していたが、戦後、戸田氏が組織名を「創価学会」に改め、第2代会長となってから宗教法人として急成長。1960年(昭和35年)には池田大作氏が第3代会長に就任し、世界的な宗教団体に育て上げた。

 学会は当初、日蓮正宗の信者の集まりである「講」の一つに過ぎなかったが、1991年(平成3年)に日蓮正宗の総本山である大石寺から破門され、独立した宗教団体に――。現在の会長は6代目となる原田稔氏。信者数は、公称で827万世帯とされている。64年(昭和39年)には公明党(当初は「公明政治連盟」)を組織し、政治の世界に影響力を持つまでになった。

 いまでこそ大きな勢力となった学会だが、 戦時中は神道による国家統制を徹底した当時の政府によって弾圧を受け、1943年(昭和18年)、牧口氏や戸田氏を含む幹部数十名が治安維持法違反などの疑いで逮捕されている。牧口氏は獄死。学会組織は崩壊寸前になるという悲痛な歴史を刻んでいるのだ。だからこそ、学会や公明党は「平和」を最大の活動目標にしてきた。創価学会の公式サイトには、学会について、次のように説明されている。

 創価学会は、大乗仏教の真髄である日蓮大聖人(1222~1282)の仏法を信奉する団体です。
 その目的は、仏法の実践を通して、一人一人が真の幸福境涯を確立するとともに、生命の尊厳を説く仏法哲理を根本に、恒久平和、豊かな文化、人間性あふれる教育の創造を推進し、人類社会の発展に寄与することにあります。
 1930(昭和5)年の創立以来、日本では827万世帯、海外にも192カ国・地域の会員が日蓮大聖人の仏法を実践し、各国の繁栄と平和を願い、活動しています。
 「創価」とは価値創造を意味しています。その価値の中心である「生命の尊厳」の確立に基づく「万人の幸福」と「世界の平和」の実現が、創価学会の根本の目標です。
 日蓮大聖人は「自分の幸福を願うならば、まず周囲の平和を祈るべきである」と述べ、個人の幸せは世界の平和・安穏なくしてはありえないと説いています。その意味で創価学会は、一人一人の幸せのみならず、真の平和・幸福社会の実現を目指しているのです。

 短い文章の中に、「平和」の二文字が6回。創価学会の政治部門とも言うべき公明党が、「平和の党」と呼ばれるゆえんはここにある。弾圧。初代会長の獄死。組織壊滅の危機。いずれも戦争が招いた出来事であり、学会や公明党が「平和」を叫ぶ原点だ。

矛盾
 創価学会も公明党も、「政教一致」を否定してきたが、その活動実態はどう見ても政治と宗教の一体化。政教分離を定めた憲法に違反しているとの見方があるのは事実だ。それでも公明党の存在が認められてきたのは、同党や創価学会が「平和」を叫び、弱者の味方として一定の存在感を示してきたからに他ならない。その点は評価に値する。

 その公明党が解釈改憲を認め、戦争への道を切り開く手助けをするという。どれだけ“へ理屈”を並べてみても、この構図を否定することはできない。異例の声明まで出して解釈改憲に反対していたはずの学会も、いつの間にか変節してしまっている。戦争を否定してきた側が、戦争指導者になる道を選んだと言っても過言ではあるまい。

 池田大作氏が、「人間革命」の冒頭に書いた≪愚かな指導者たちに、率いられた国民もまた、まことに哀れである≫は、現状にピタリとあてはまる。このことを、学会はどう説明するのだろう。



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