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県の追認機関と化した鹿児島県議会

2014年7月 2日 09:30

 鹿児島県(伊藤祐一郎知事)が、鹿児島市松陽台町で進める県営住宅の増設問題について、地元町内会が県議会議員全員に出した公開質問状の答えが出揃い、30日に公表された。
 結論から述べれば、一部の県議を除いて、ほとんどが政治家失格。議員個々に問われた問題であるにもかかわらず、自民、公明は会派で一括回答。民主・社民系の県民連合は回答さえ出さないという無責任ぶり。与党議員のほとんどが役所の言い分に同調しており、伊藤県政の追認機関である実態をさらけ出した形だ。 

県議会の追認機関化を露呈
 松陽台の県営住宅増設をめぐっては、県住宅供給公社から分譲地を買わされた住民の反対意見を伊藤知事が黙殺。議会側も度重なる陳情や要請を無視し、強引に事業が進められてきたという経緯がある。
 これまでの過程で、県議会で公表された住民意見データの捏造や事業試算の不存在が判明。さらに、県が事業の根拠としている「子育て支援」のための環境ではないことが、HUNTERの取材で明らかになったばかり。杜撰な計画に基づくムダな公共事業であることは誰の目にも明らかで、地元の松陽台町内会が先月16日、全県議会議員に対して、住民意見データの捏造問題と子育てには不適である松陽台の現状について、見解を問う公開質問を行っていた。

 これに対し、県議らが町内会に寄せた回答は次のようになっている。

【自由民主党鹿児島県議会議員団(35名)】
1.捏造データについて
 松陽台の町内会から提出された陳情については、平成23年第4回定例県議会において、県執行部から提出された資料等をもとに審査いたしました。
 県執行部からは次のような説明を受けております。
 ①公営住宅(県営住宅:160戸、市営住宅:24戸)については、平成23年8月18日に住民説明会を行うとともに、欠席者に対しましては各戸に資料を配布。同年8月29日には、県営住宅建設の事業計画に係る資料を各戸に配布。
 ②同年11月6日には、県営住宅自治会役員及び市営住宅住民を対象にした説明会を再度開催したが、現在のところ、特段、反対等のご意見はなかった。
 ③戸建住宅及び公営住宅の住民のうち、「賛成、理解、特に意見なし」の住民が82%となっている。

 これを受け、県営住宅の整備にあくまでも全面反対という住民は一部の方々であり、県営住宅建設計画の白紙撤回をする必要は無いと判断したものです。自民党県議団としましては、現在も、この判断を変更する必要性はないと考えております。

2.県営住宅の郊外移転、子育て支援住宅について次のような説明を受けております。
 ①児童生徒数の増加については、松元小学校の教室不足は事業に支障が生じないよう鹿児島市及び同市教育委員会に対応を要請している。市では平成24年度に校舎を増築することとし、県としては県営住宅は10年程度かけて順次建設することとしているので、その間も教育環境や児童生徒数を逐次見ながら市及び市教育委員会と引き続協議を行いたい。
 ②JR上伊集院駅については、JR九州と協議を行っているが、乗客数が約4,400人に増加しても現在の駅で対応できるとのことであるが、県鉄道整備促進協議会でもJR上伊集院駅の混雑時における安全対策に関する要望が出され協議が行われている。県としても、小中学生と通学時が重なる松陽高校及び城西高校に対しても乗降の安全性について配慮を要請し、両校では既に生徒に周知している。
 ③商業施設については、現在、テナント方式による誘致活動を行っている。
 ④住民説明会や戸別訪問時に住民の方々から出された災害時の避難所の指定については、鹿児島市で定めるものであるが、市と協議したところ住民からの要望があれば検討するとのことであったので、要望があれば一緒になって市に依頼する。
 ⑤路上駐車と交通問題については、県営住宅の駐車場は現在1世帯1台で整備しているが、松陽台団地だけでなく既存の県営住宅でどの程度確保できるかなど、県営住宅全体で見直しを行っており、ある程度は確保できると考えている。

 審査においては、特に、駅の混雑、小学校の教育環境は子どもたちに関わることであるので、関係機関と連携を図りながら環境整備に努めてもらいたい旨を要請したところです。

 今回、建設を進めている(仮称)松陽台第二団地は、子どもを持つ世帯が安心して子育てできる環境を整備するため(既存のその他の県営住宅は新規入居者の7割が子育て世帯です。)、市街地へのアクセスに優れ、自然環境に恵まれた郊外部に建設するものであり、今後、県営住宅の建設に伴い、松陽台町の人口が増え、快適でゆとりある住宅市街地の形成が図られるものと考えています。自民党県議団としましては,子育て世帯への支援などの少子化対策は、県政の最重要課題の一つであり、人口が減り続けている本県にとっては、今後とも対応をしていかなければならない課題だと考えております。

【公明党鹿児島県議団(3名)】
1.捏造データについて
 平成24年第4回定例県議会における陳情審査において、県は、松陽台町の県営住宅整備に係る住民説明を、戸建住民については、146戸中128戸の87.8%に説明。公営住宅の住民については、県営住宅役員及び市営住宅住民を対象とした住民説明会を実施。その後、公営住宅にも戸別訪問。説明の内容は、県営住宅整備に係る説明であり、賛否を問うものではなく、ご意見を伺うものであり、訪問担当者の判断により①あくまで全面反対、反対だが個別の意見あり6.1%②全面反対ではないが計画内容について意見あり11.9%③それ以外82.0%と、まとめた。との説明を県執行部よりうけました。
 よって,県営住宅整備に対し全面反対の住民は一部の方々であり,県営住宅建設計画の白紙撤回をする必要はないと考えております。

2.県営住宅の郊外移転,子育て支援住宅について
 鹿児島県営住宅の入居希望者の倍率は,2013年度3.65倍と高止まりしています。県内の人口が減少する中、少子高齢化や景気低迷、社会環境の変化による入居希望者の多様化から、廉価な公営住宅が受け皿となっています。
 こうした中、子育て世代に適した住宅の整備は喫緊の課題であります。戸建住宅は30年も経過すると、世代の年齢が高くなり交流人口の変化がないと子どもの声が聞こえない町になる恐れもあります。
 今回、建設を進めている団地は、子どもを持つ世代が安心して子育てできる環境を整備するため、市街地のアクセスにも優れ、自然環境に恵まれた郊外部に建設するものであり、松陽台にとっては、人口が増加することで、商業施設や文教施設の発展とともに、快適でゆとりある住宅市街地の形成が図られるものと考えます。
 特に、指摘のあった駅の混雑、小学校の環境整備は、関係機関と連携を図りながら環境整備に努めて頂きたいと要請したところです。

【松崎真琴(日本共産党県議団)】
1.捏造データについて
 2011年12月議会において、県・住宅政策室は「松陽台町の県営住宅整備にかかわる住民説明について」という文書(平成23年12月9日)を議会に配布し説明を行いました。その結果、企画建設委員会では「大半の住民の方には,何らかの意見はあるとしても、理解を得ている状況となったとのことであり、計画の白紙撤回をする必要はないと思われる」との意見が出され、多数決の結果、不採択となりました。本会議での採決においても、本陳情の採択を主張したのは、私ひとりでした。

2.県営住宅の郊外移転、子育て支援住宅について
 そもそも今回の問題のきっかけとなった、鹿児島市内の原良団地の全面建て替え計画が突然中止となり、ガーデンヒルズ松陽台での建て替えになったことについて、納得できないものです。

 この問題の大元にあるのは、県住宅供給公社の乱開発による公社の経営破綻を県が支援するものであるという点です。県住宅供給公社は、100%県出資の外郭団体で、歴代の理事長は、知事や県の幹部OBが務めており、県とは一体のものです。県の失政のツケを県民に押し付けるものであり、断じて認められません。

 また、「恵まれた環境で子育て世帯にふさわしい」と強調していますが、実際には、危険なJR通学が強いられることになります。私は、2014年3月議会の最終本会議で、鹿児島県営住宅条例の一部を改正する条例制定の件について反対討論を行いました。多額な県民の税金を使って、住民が納得していない事業を強引に進めるこの計画については断固反対します。

【下鶴隆央(無所属)】
(質問事項1について)
 アンケート結果を分析・評価する際には、結果に着目することはもちろん、データの母数、サンプル数、回答者の抽出方法・分布、質問文の内容、質問期間等も含めた分析、評価を行うべきであると考えます。県議会での議論に当たっても、引き続きこの様な観点で取り組んでまいります。

(質問事項2について)
 小学校については、児童の安全な通学環境を確保するために必要な取り組みを進めるできだと考えます。
 商業施設については、公社が分譲時に誘致する旨の説明を実質的に行っていたことから、住民の皆様が必要とする限り、引き続き誘致に向けた最大限の努力をすべきと考えます。
 その他の各種施設についても、人口増加に伴い必要性が増していくことから、居住人口に対応した施設を、必要に応じて整備を検討すべきと考えます。

【柚木茂樹(無所属)】
 松陽台での県営住宅移転増設工事に関しては、委員会で陳情不採択などを含め、県議会としては適切に対応できていると認識している。

1.捏造データについて
 質問者の言う通りであれば、行政処分の対応として、行政不服審査の対象となるのではないかと考える。

2.県営住宅の郊外移転、子育て支援住宅について
 子育てのための環境の整備については、今後の課題として、総合的見地に立って、検討すべきと考えている。

【田中良二(無所属)】
 本件につきましては、所管委員会において、県当局からこれまでの経過、見通し等の説明を受け、質疑等を経て判断いたします。

 松陽台での県営住宅移転増設工事に関しては、委員会で陳情不採択などを含め、県議会としては適切に対応できていると認識している。

【柚木茂樹(無所属)】
1.捏造データについて
 質問者の言う通りであれば、行政処分の対応として、行政不服審査の対象となるのではないかと考える。

2.県営住宅の郊外移転、子育て支援住宅について
 子育てのための環境の整備については、今後の課題として、総合的見地に立って、検討すべきと考えている。

【県民連合(7名)】
無回答

 県議個人の見解を求めた公開質問だったにもかかわらず、自民、公明は会派で一括回答。長々と回答文を返してはいるが、これまでの県の主張を、そのまま引用しただけ。これでは各議員の問題意識や主張を県民に伝えることはできまい。県民連合に至っては回答さえしておらず、町内会側の電話による確認に対し、ある県議が県の言い分は正しいので回答しなかったと明言したという。恥を知れと言いたい。結局、県の主張に問題があると認識しているのは共産党所属の松崎氏と、無所属の下鶴氏の二人。HUNTERだけでなく他のメディアも報じたデータ捏造や通学路の危険性を、鹿児島県議会は無視するということだ。

松陽台町内会側の総括
 県議らの回答について、松陽台町内会側は次のような見解を示している。

 県民の代表たる県議会議員お一人お一人のご意見を伺いたかったのですが、会派に所属される議員は全て会派としての回答となりました。残念ですが、いかなる形であれ、49名全ての県議会議員が回答をくださったことに、まずはお礼申し上げたい。真摯に県民の声を汲んでくださる議員がおられる一方で、県民の声に耳を傾けず、県当局の言いなり、追認機関としての役に徹しておられる大部分の議員には、怒りと失望を禁じえません。

≪県民と議員との感覚・意識のかい離≫
 回答を受けて、最初に感じさせられたのは、一般県民と県議会議員との感覚・意識のかい離です。ひとつ目の質問項目の捏造データについては、別紙を付けて、詳細を示しているにも関わらず、加えて、この問題は陳情不採択の根拠とされた平成23年12月当時から、今に至るまで、幾度となく新聞、テレビ、インターネットで報じられており、県側もこのことを否定することなく、認めています。当事者でなくとも、疑念を持つのが普通のこの事案に何の疑いも問題も感じないのは、県議会においては日常茶飯事であり、通常認められているということなのでしょうか。
 県営住宅の郊外移転についても、全国的に例がないということが示すように、一般に、商店や医療・福祉・教育に資する施設のない土地への公営住宅建設を計画する自治体はありません。子育て支援住宅であれば、関係施設の重要性は言うに及ばずです。

≪無責任と自己都合・・・県当局の言いなり、県民の声は一蹴≫
 回答から次に伝わってきたのは、無責任と自己都合という2つの言葉です。人口が増えれば、活気づく。そのうち商業施設や教育施設ができる、ということはないのです。空いている土地全てを県営住宅にするのですから、他の施設を建てることはできないのです。中には、30年後の戸建て住宅の高齢化を心配してくださる方もいらっしゃるようですが、まずは今住む者の生活の心配をしていただきたい。市や市教委、JRなど関係機関に要請したい、などとは、まさに丸投げ、無責任の極みです。

 捏造データにしても、子育て支援住宅にしても、検証も調査も行わず見切り発車で巨額公共事業を強行に進める――。やがて事業が破綻しても、その責任は誰も取らず、都合よく計画を中止・変更し、またぞろ巨額の税金を投入して、業者だけが焼け太るということでしょう。誰のための地方政治・地方行政でしょうか。誰のための地方議会でしょうか。ただただ,県と一部の利益団体の声だけを代弁・補完するだけの組織であれば、もはや多数の県民の意思はどこにも反映されず、黙殺され続けることになります。



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