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鹿児島県 民間の産廃処分場設置許可申請を告示・縦覧へ
問われる「エコパークかごしま」の存在意義

2014年7月16日 08:40

鹿児島県庁 鹿児島県に、県内2カ所目となる産業廃棄物の最終処分場が建設される見通しとなった。処分場建設が予定されるのは同県湧水町。事業者は、宮崎県小林市に本社を置く産廃業者「九州北清株式会社」で、今月18日に県が「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の規定に従って許可申請書を告示し、縦覧手続きに入るという。問題がなければ、今年度中に処分場建設工事が始まるものとみられる。
 同県では、地元住民らの反対を無視して、県が薩摩川内市川永野に産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」を整備中。伊藤祐一郎知事が建設強行の理由として挙げたのが「県内に最終処分場が1カ所もないため」(同知事)だったため、九州北清の許可申請を放置し、意図的に建設計画を遅らせてきたという経緯がある。(写真は鹿児島県庁)

事業者は「九州北清」 湧水町に約40万㎥の最終処分場計画
 九州北清は、平成19年から姶良郡湧水町に埋立容量40万6,000㎥の管理型最終処分場の建設を計画。同21年に設置許可申請に必要な書類を県に提出したが、県が長期にわたって取扱いを放置。その後、同社が環境省に対して審査請求を申し立て、24年1月の「裁決」で、同省が九州北清側のの主張を全面的に認め、県の行為を違法(不作為)であるとして速やかに処分を行うよう命じていた。(下は、HUNTERが鹿児島県への情報公開請求によって入手した許可申請関連文書の一部。「設置許可申請書」は平成22年に同社が再提出したもの)

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 裁決を受けて事前協議等が進んだことから、県は改めて許可申請を受理。所管の鹿児島県環境林務部 廃棄物・リサイクル対策課によれば、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の規定に従って18日に申請書と生活環境影響調査書を告示し、1か月の縦覧に付すとしている。その後、専門家からの意見聴取を踏まえ、知事が許可するかどうかの判断を下すことになる。順調に進めば、許可までに2~3か月。九州北清は、早ければ年度内に処分場建設工事を始めるとみられる。

 15日、HUNTERの取材に応じた九州北清の久永彰博社長は、建設資材や人件費の高騰で、20億円と見積もっていた工事費が大幅に膨らむことを示唆。その上で、「ここまでくるのに時間がかかった」と振り返り、早期着工に向けて進むことを明言している。

問われる「エコパークかごしま」の存在意義
gennpatu 978.jpg 鹿児島県が九州北清の処分場設置許可申請を放置した背景には、県が薩摩川内市で住民の反対を無視して強行している管理型最終処分場「エコパークかごしま」の建設問題がある。同県が「エコパークかごしま」の整備を進めるにあたって最大の理由に挙げたのは、県内に管理型最終処分場が一カ所もないこと。平成18年5月に県が設置した「公共関与型処分場対策協議会」(県職員だけで構成)では、公共関与型の処分場建設を進める理由として《管理型最終処分場が1か所も無く、県外の最終処分場に頼っている》と明記しており(右の文書参照)、この後も一貫して県内に管理型処分場がないことを大義名分として掲げてきた。このため、同時期にスタートした九州北清の処分場計画を容認することは、到底できない相談だった。

 これまでの取材で、九州北清が湧水町での処分場計画を進めていた平成20年11月頃、伊藤知事の意向を受けたとみられる自民党所属の県議会議員が同社の会長宅を訪れ、「(建設計画を)5年間待って欲しい」と要請していたことや、県が理由もなく処分場設置許可申請を放置していたことが明らかになっている。また、平成22年には、県外からの産廃持ち込みを禁ずる「鹿児島県県外産業廃棄物及び県外汚染土壌の搬入の許可に関する条例」を制定。県外からの産廃受入を想定していた九州北清の処分場計画をとん挫させることが狙いだったとされる。

 九州北清が計画する処分場ができれば、100億円もの公費を投入して整備する「エコパークかごしま」の存在意義が薄れるのは当然。改めて、伊藤県政による産廃行政の在り方が問われることになりそうだ。



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