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破たん必至 ― 100億円産廃処分場の現実
「自然」に負ける伊藤鹿児島県政

2014年6月10日 07:10

 鹿児島県(伊藤祐一郎知事)が薩摩川内市で建設を進める産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」。地理的条件を見誤ったため工事が難航、特定建設工事共同企業体(JV:「大成・植村・田島・クボタ」)に支払う工事費は、77億7,000万円から18億7,920万円も積み増しされ、96億4,920万円にまで膨らんだ。
 最大の原因は「水」。処分場予定地を含めた周辺地域が豊富な地下水に恵まれていたことから、工事現場で湧水が多量に噴出したのである。工事が停滞し、工法変更や追加工事を余儀なくされたのは言うまでもない。
 事業の先行きを不安視する県民をよそに、実態を隠して建設工事が進められているが、現地を取材したところ、この処分場事業の破たんを予想させる現実が待っていた。

エコパークかごしま
エコパークかごしま エコパークかごしまの事業主体は「鹿児島県環境整備公社」。県の外郭団体だが、理事長は副知事、職員の大半は県からの出向だ。処分場建設は、事実上県が行っているのである。

 県内に最終処分場が一箇所もないという大義名分を掲げて強行されたこの事業、スタート時点から疑惑まみれだった。用地決定の過程は極めて不透明。県内29箇所の対象地については、満足な調査が行われておらず、知事の指示で薩摩川内市川永野の一箇所に絞っていたことが明らかになっている。

 処分場建設が進められているのは、霊峰「冠嶽」の裾野。薩摩藩以来、信仰の対象となってきた山の一角を、産廃で汚そうという無謀な計画だ。特別にこの地が最終処分場に適していたわけではなく、むしろ不適。冠嶽は、近隣の水源になってきたほど湧水が豊富で、後々深刻な被害をもたらす可能性が指摘されていた。

 今月に入ってエコパークかごしまの工事現場を取材してみたが、工事は進み、処分場本体や付属施設の大まかな姿が確認できる状況だ(右上の写真)。一見、湧水対策が功を奏しているかのようだが、工事現場周辺の取材を進めるうち、この工事がさらに危機的状況を迎えるか、あるいは完成してもいずれ大変な環境破壊を引き起こすかのどちらかであることを証明する現状を確認した。

 下の写真は、エコパークかごしまに接する山の裏側。施設の開業に向けて整備している道路を拡張するため、山肌を削り法面(のりめん)となっている部分だ。

法面(のりめん)

 水抜き用の黒いパイプが2本、道路の側溝に向けて剥き出しになっている。山のあちこちから湧水が噴き出すため、こうして少しでも水を抜くしかない。一部には崩落防止のためか、補強工事の跡もある(下の写真)。

補強工事の跡も

 次の写真で明らかな通り、法面の色が個所ごとに違うのは、水をを含んだ土とそうでない部分に分かれるため。湧水の量が半端ではないことは明らかだ。

湧水の量が半端ない

 法面に近づいて驚いた。至るところから、きれいな水が噴き出しているのである。下3枚の連続写真の画像が、自然の力を教えている。

自然の力1

自然の力2

自然の力3

 問題は、湧水が噴出している写真の場所。下は処分場の全景だが、写真の場所は赤い矢印で示した部分の裏側にあたるのだ。つまり、湧水は処分場の中でも同じように噴出するということ。さらに、こうした湧水は、処分場の地下からも湧き出しているとみられている。

 県は工事が遅れたことを雨水のにせいにしたが、関係者の話によれば、やはり一番困ったのが湧水なのだという。地下から湧き出る水は無尽蔵に等しく、これを制する技術などない。福島第一原発の事故処理でもっとも問題視されてきたのも地下水の流れ。エコパークかごしまのケースも同じで、水脈を断ち切ることなどできない。

湧水の場所

 湧水を止めることができなければどうなるか――?。答えは一つ。処分場の構造物が壊れ、100億円かけた事業が破たんするということだ。この場合、処分場内の汚染水がすぐ横に走る阿茂瀬川に流れ出し、その後は県内一の河川「川内川」に流れ込む。エコパークかごしまは最終処分場。いったん施設が崩壊すると、とてつもなく汚染された水が、水道水に利用されている「川内川」を直撃するのである。海も汚染される。そうなると、自然破壊どころか、人命にも影響する事態だ。エコパークかごしまが整備されている冠嶽は、近隣の水源地でもあり、汚染水が地下に浸透する可能性も高い。こうした場所に最終処分場を造ると決めたのは、鹿児島の独裁者・伊藤祐一郎県知事。自然を壊し、霊峰を汚し、県民の生命をも脅かす施設を造ることは、犯罪行為と言っても過言ではあるまい。その罪は、知事リコールの発端となった上海研修など及びもつかない大きさなのである。

 人間は自然には勝てない。吹き出る湧水が、100億円産廃処分場の行く先を予見している。

鹿児島取材班



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