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「船上カジノ」も!? 福岡市戦略特区の胡散臭さ

2014年5月22日 08:50

クルーズ船(カジノ) 今年3月に政府が指定した国家戦略特区。東京圏や関西圏の一部都市などとともに選ばれた福岡市の特区構想に様々な問題点が指摘され、「解雇特区」、「外国人特区」などと揶揄される事態となっている。
 公表された特区提案書の概要版には、なぜか「カジノ」もある(右参照)。福岡市は、一体どのような申請を行ったのか――改めて検証するため、申請書類を情報公開請求したところ、市はいきなり開示決定期間を延長。容認できない理由を並べて、情報開示を遅らせる構えだ。鳴り物入りの特区構想に、胡散臭さが漂う展開となってきた。

国家戦略特区に福岡市
 国家戦略特区とは、「国家戦略特別区域法」が昨年成立したのを受けて、安倍政権が進める新しい経済特別区域構想のこと。地域を指定して、税制面をはじめとする様々な規制を緩和し、民間経済に活力を入れ、あわせて国際競争力を高めようというもの。失速目前となっているアベノミクスの第三の矢=「成長戦略」の切り札と位置付けられている。

 全国の自治体が特区指定に向けて手を挙げていたが、今年3月、安倍首相を議長とする「国家戦略特別区域諮問会議」が特区指定の方針を定め、5月1日に正式決定した。特区指定を受けた区域は次の通りだ。

  • 東京圏(東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、大田区、渋谷区、神奈川県並びに千葉県成田市)
  • 関西圏(大阪府、兵庫県及び京都府)
  • 新潟県新潟市
  • 兵庫県養父市
  • 福岡県福岡市
  • 沖縄県

 区域ごとに緩和される規制内容や政策課題が違うのはもちろんだが、国が示した福岡市の「区域方針」は、以下のようになっている。

【目標 】
 雇用条件の明確化などの雇用改革等を通じ国内外から人と企業を呼び込み、起業や新規事業の創出等を促進することにより、社会経済情勢の変化に対応した産業の新陳代謝を促し、産業の国際競争力の強化を図るとともに、更なる雇用の拡大を図
る。

【政策課題 】
(1)起業等のスタートアップに対する支援による開業率の向上
(2)MICE の誘致等を通じたイノベーションの推進及び新たなビジネス等の創出

【事業に関する基本的事項】
(実施が見込まれる特定事業等及び関連する規制改革事項)
<雇用・労働>
創業後5年以内のベンチャー企業等に対する雇用条件の整備(雇用条件】)
多様な外国人受入れのための在留資格の見直し
<医療>
外国人向け医療の提供(病床、外国医師)
<都市再生・まちづくり、歴史的建築物の活用>
まちなかの賑わいの創出(エリアマネジメント、古民家等)

 項目ごとの問題点は別稿で詳しく検証する予定だが、もともと福岡市が提案した内容はどのようなものだったのか、確認する必要がある。HUNTERは、福岡市に対し、『特区申請にあたって国に提出した提案書及び添付文書、特区指定にあたって国が福岡市に示した文書』を情報公開請求した。

 これに対し、市の所管課が下したのが、開示決定期間の延長(下が期間延長通知)。市情報公開条例が定めた“営業日で7日間”を13日間も延ばすのだという。土日を入れると約20日間の延長だ。

福岡市 通知書

 開示決定期間延長の理由は、≪対象公文書が国と関連するものであるため、国との調整に時間を要しており、期間内に決定を行うのが困難≫と記されている。しかし、当該文書の内容については、請求の時点で福岡市や国が概要を公表している。隠すべき内容があるとは思えない。

 所管課である総務企画局企画課に抗議したところ、市条例7条の規定を引合いに、国との間や内部での協議に時間がかかると言う。条例の7条には、情報非開示にできる理由が列記してあるが、その中で、市や国の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報で、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるものは非開示にできるとされている。市側は、請求された内容の中に、この7条の非開示理由にあたるものが含まれているかどうかを検討するということらしい。

 だが、前述したように、情報公開請求を行った時点で、すでに国や福岡市は特区指定の内容を公表しており、市が国に提出した提案書(「新たな起業と雇用を産み出すグローバル・スタートアップ国家戦略特区」)については、その概要版をネット上で確認することもできる。情報開示によって、≪率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ≫があるとは思えない。請求の対象に、例えば『特区指定に関する協議過程を示す文書』を含めていれば別だが、求めたのは、市が提出した提案書と、指定にあたって国が市に示した文書。いずれも「公」にされるべきものだろう。この決定には承服しかねる。

ひっそりと「船上カジノ」
 そもそも、この特区指定には問題が多すぎる。福岡市の場合、解雇規制の緩和や外国人に医療分野の自由を与えるなど、国の根幹を揺るがしかねない内容が含まれている。「だから規制緩和」なのだと言いたいところだろうが、それぞれの分野で、十分な議論がなされたわけではない。例えば次のケースがそうだ。

 下は、福岡市が公表した特区の提案内容(概要版・2枚組)の2ページ目。HUNTER編集部が赤い丸印で囲んだ部分を拡大してみた。

福岡市1(4)
↓
福岡市3

 そこには、〔アジア有数のMICEクラスター整備と民間開放のための特例措置〕として、≪コンベンション・ホテル・クルーズ船(カジノ)・ミュージアム・インキュベーション等の複合体を、民間資金を活用して整備を行う≫と記されている。ほとんど報道されなかった内容だが、これはどう見ても「船上カジノ」。博多湾をばくち場にするということだ。MICEとは、多数の集客が見込まれるるビジネス関連イベント及びその施設。クラスターは「群れ」。福岡市は、集客のためのアイテムの一つに「船上カジノ」をもぐりこませていたのである。

 所管課に確認したところ、船上カジノに一般客は入れず、博多港に寄港もしくは博多港発のクルーズ船に、領海内でのカジノ営業を認めてもらうことを意味しているのだという。日本の領海内ではカジノは禁止。この規制を緩和することで、クルーズ船の寄港を増やそうということらしい。しかし、前掲のイメージ図では、≪整備を行う≫としている。これは常設カジノということだろう。暴力団天国の福岡に、カジノはなかろう。

 繰り返すが、福岡市の戦略特区には問題が多すぎる。稿を改めて、高島市政や安倍政権の間違いを指摘する予定だ。



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