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問われる「民意」

2014年5月 1日 10:10

 民意を正確に反映する選挙結果とそうでない選挙結果がある。
 前者は争点が明確に打ち出され、それぞれの候補者が違う政策を掲げて戦う場合にもたらされるもの。後者は争点がぼけて、地盤の強弱だけがモノをいう選挙のケースだ。
 今年になってその二つの典型的な事例となる選挙が行われたが、安倍政権はいずれの選挙結果も都合のいいように解釈し、民意のすり替えに熱心だ。これが民主主義と言えるのか――?

名護の民意は無視
 民意を正確に反映した選挙としては、今年1月に行われた名護市長選挙が好例。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に関する是非を最大の争点にしたこの選挙では、移設反対を訴えた現職が勝利した。争点が明確であったがために、有権者の民意を正確に示したケースと言えよう。しかし、安倍政権はこの選挙結果を無視し、普天間の辺野古移設を進めている。都合の悪い民意は、踏みにじるということだ。

鹿児島補選めぐる「民意のすり替え」
 一方、4月27日に投開票が行われた衆院鹿児島2区の補選の結果からは、正確な民意をくみ取ることができなかった。「政治とカネ」の問題が引き金となった選挙だったため、争点がぼけたことは否めない。さらに、保守地盤である鹿児島の選挙で、自民党と公明党が手を組めば、一定の票が見込めるのは事実。投票率が下がれば、強固な組織票を持つ方が有利になるのは当然で、補選における自民公認候補の勝利は、ある程度予想されていた。選挙戦が盛り上がりを欠いた時点で、勝負の行方は見えていたともいえよう。そうした意味で、鹿児島2区の選挙結果は、決して安倍政権への信任を意味するものではなかったが、暴走する権力はまたしても「民意のすり替え」をはじめている。

暴走する安倍政権
 政府高官や右寄りメディアは、鹿児島での選挙結果が出た直後から、現政権が信任されたとする勝手な解釈を垂れ流しはじめる。選挙結果が判明した27日夜には安倍首相が、翌28日には菅義偉官房長官が、鹿児島2区での勝利について、政策あるいは政権運営に“一定の理解と評価を得た”結果であると相次いで発言。自民党の石破茂幹事長も同様のコメントを繰り返している。読売新聞は28日の社説で、「鹿児島2区補選 安倍政権の政策遂行に追い風」と書いた。政権は、集団的自衛権の行使容認のほか、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の詰めの作業を加速させる構えだ。

 鹿児島2区の補選では、集団的自衛権やTPPが大きな争点になったわけではない。とくに鹿児島の補選について大手メディアが競って報じたのは、公選法違反事件で組織ぐるみの選挙が断罪された医療法人「徳洲会」の票の行方。徳洲会の創立者である徳田虎男氏は、鹿児島2区内にある奄美地方の出身。かつては自民党の保岡興治元法相と「保徳戦争」と呼ばれた激しい政争を繰り広げていたため、徳田一族が築き上げたこの票がどう動くかに注目が集まったに過ぎない。

 しらけた選挙だったことは、投票率が如実に示している。鹿児島2区補選の投票率は、小選挙区制となった1996年以降では最低の45.99%。前回2012年の総選挙から14.6ポイント余りも下げている。保守地盤と言われる鹿児島にあって、行き場のない票がいかに増えたかがよくわかる結果だ。どう見ても、鹿児島の有権者が政権の在り様を支持したとは思えない。

 だが安倍政権は、東京都知事選における自民系候補の勝利を「原発推進」の道具に仕立てたのに続き、今度は鹿児島での選挙結果を「解釈改憲是認」の証拠にする姿勢を露わにしている。鹿児島以外の有権者の民意を問わぬまま、一選挙区での選挙結果を、国民の声にすり替えているだけなのだ。権力側の都合で民意が弄ばれる現状は、民主主義の否定ととらえて差し支えあるまい。まさに暴走する政治。「民意」とは何かが問われている。



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