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自民・保岡議員側に実態隠した業界のカネ

2016年1月 5日 08:20

保岡興治衆議院議員 鹿児島市内に本社を置く建設会社の幹部らで組織される政治団体が、保岡興治衆議院議員(自民・鹿児島1区。当選13回)の関連政治団体に、総選挙が行われた平成26年だけで計200万円の政治資金を提供していたことが明らかとなった。
 このうち保岡氏が代表を務める自民党支部への100万円は、安倍首相が消費増税の延期と衆院解散を表明した2日後の献金で、同支部は、その1週間後に保岡氏個人に500万円を寄附していた。建設業界のカネが選挙資金に充てられた形で、資金の出所によっては、国と請負関係にある当事者の献金を禁じた公職選挙法の規定に抵触する可能性もある。
 問題の政治団体は「業者」の集まり。実態を隠し、業界側のカネを政治家に流したともとれ、自民党と建設業界のつながりの深さが浮き彫りになった格好だ。
(写真は保岡興治衆院議員。同氏の公式HPより)

建設業者の政治団体「互栄会」
 1.jpg問題の政治団体は、鹿児島市内にある建設業界のビル「鹿児島県建設センター」内に事務所を置く「互栄会」。同会は、『建設業の健全な発展と会員相互の親睦を深めることを目的』(同会規約より)に平成11年に設立され、鹿児島県建設業協会鹿児島支部に加盟する企業の役員・従業員といった個人会員で組織される団体。代表は、一般社団法人鹿児島県建設業協会の会長が、会計責任者は同協会の監事が務めている。(右が互栄会の規約)

 県内には建設業界の政治団体「鹿児島県建設業政治連盟」があるが、互栄会への参加者は鹿児島市内の業者関係者だけ。衆議院の選挙区は鹿児島1区で、同区選出の保岡氏は当選13回を数える自民党の重鎮である。

保岡氏側へ200万円
 下は、互栄会が鹿児島県選挙管理委員会に提出した平成26年分政治資金収支報告書の一部。組織活動費の中の“大会費”として、「興友会」「保岡興治君を支える会」「2014 かごしま政経セミナー実行委員会」に、それぞれ50万円(1月22日)、50万円(6月30日)、49万円(10月31日)が支出されている他、11月20日には“選挙関係費”として100万円が保岡氏が支部長を務める「自由民主党鹿児島県第一選挙区支部」に寄附されていた。互栄会の収入原資は会員からの会費。毎年、40名の会員から計200万円を集めている。

互栄会 平成26年分政治資金収支報告書(一部)

 確認したところ、「興友会」は保岡氏の関連政治団体で、自由民主党鹿児島県第一選挙区支部と同じ住所。電話も自民支部と同じ番号になっている。

 「保岡興治君を支える会」は、興友会が昨年7月に開催した政治資金パーティーの名称。「2014 かごしま政経セミナー実行委員会」は、12月に開かれた自民党県連の政治資金パーティーの名称だった。この2件の支出先を正確に記載するなら「興友会」と「自由民主党鹿児島県支部連合会」。報告内容が杜撰であることは間違いない。

 一方、興友会の政治資金収支報告書には、互栄会が1月に献金した50万円に該当する記載がなく、保岡氏の事務所に確認を求めたが、「担当者不在」。現状は“不記載”の状態で、報告書に誤りがあった可能性が高い。

 互栄会が行った政治資金提供について、まとめると、次のようになる。

政治資金提供状況

公選法上の問題点
 一連の政治資金提供のうち、11月20日に自由民主党鹿児島県第一選挙区支部に寄附された100万円は、公職選挙法に抵触する可能性が否定できない。同月18日に安倍首相が衆議院の解散を予告した2日後であり、支出目的は「選挙関係費」。保岡陣営に選挙費用を提供するため寄附されたことは明らかだ。

 100万円の政治資金提供から1週間後、第一選挙区支部は保岡氏個人に500万円を寄附しており、同氏は選挙運動費用収支報告書に収入として計上していた。

 公選法は、≪衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない≫と定めており、互栄会のメンバーの中に、寄附を禁じられた会社の役員などがいた場合はこの規定に抵触する可能性がある。

 互栄会が行っている政治資金提供の手法は、献金実態を隠すための脱法的なもの。会社名が出ないため違法献金も可能で、業界と自民党代議士との癒着の証明と言えそうだ。



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