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赤字必至! 鹿児島100億円産廃処分場のでたらめ試算

2014年5月26日 08:55

鹿児島県庁 地元住民らの反対を黙殺し、鹿児島県(伊藤祐一郎知事)が薩摩川内市で建設を進めている産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」をめぐり、杜撰な事業収支試算の実態が浮かび上がった。
 エコパークかごしまの事業試算については今年2月、県幹部が処理料金の平均単価をトンあたり19,000円に設定していることを県議会で明言。HUNTERが答弁根拠となる文書を情報公開請求する過程で、県幹部が答弁の裏付けとなる文書を保有せぬまま答弁していたことが明らかとなっていた。
 改めて事業主体の県環境整備公社と県に、事業試算の関連文書を情報公開請求したところ、トンあたりの平均単価を「19,000円」とした試算しか行っていなかったことが判明。処理料の平均単価を細かく設定した試算は存在しておらず、事業の将来性に疑問符が付く事態だ。

事業収支―裏付けなしで議会答弁
 杜撰な事業収支が明るみに出た発端は、今年2月の県議会定例会。代表質問に立った自民党の吉永守夫県議(鹿屋・垂水市区)と、遠嶋春日児県議(県民連合・薩摩川内市区)が、産廃搬入料金と施設運営維持費、施設運営の採算性などについて県の答弁を求めたのに対し、処分場事業を所管する県環境林務部の新川龍郎部長が、まったく同じ文章を読み上げる形で、次のように答弁していた。

『管理型最終処分場にかかる料金等についてでございます。処理料金等については、県環境整備公社が検討を進めており、公社としては、処理料金の平均単価をトンあたり19,000円とし、埋立期間15年で60万トンの廃棄物の受け入れにより、約114億円の収入を見込み、また支出は、公社の運営費や施設の維持管理費約54億円、建設費の借入金返済約59億円、合計約113億円を見込んでおり、現時点では収支はおおむね見合うものと考えております』。

 この県側答弁に出てくる「トンあたり19,000円」の根拠は何か――HUNTERは3月、県議会での質疑を受け、鹿児島県に情報公開請求を行ったが、所管の県環境林務部 廃棄物・リサイクル対策課は答弁根拠文書の不存在を認め、「口頭で確認した数字」(県側説明)であることを明かしていた。

 その後、情報公開請求後に環境整備公社作成の事業試算を入手したとする県と、試算を行ったという公社に、改めてエコパークかごしまにかかる事業試算の開示を求めていた。その結果、今月になって県が開示したのは3枚の文書。公社開示分は、県保有の3枚に別の1枚を加えた4枚。下が、その4枚の「事業試算」である。

試算01 試算02

試算03 試算04.jpeg

 上の2枚はタイトル以外まったく同じもの。環境林務部長が県議会で答弁した内容に沿った形でまとめられており、後付けで作成したとしか思えない。下段左側の「収支見通しについて(案)」が、上の2枚をやや詳しく説明してはいるが、肝心の数字はすべて黒塗り。これでは試算の信頼性は担保されない。

 県に提出されていない4枚目の文書「エコパークかごしま(仮称)の収支見通しの試算」に至っては、ご覧のように全面黒塗りといった状況で、答弁根拠の正当性を進んで周知しようという姿勢は皆無だ。伊藤県政は、県議会にも県民にも、情報公開をする必要などないと考えているのだろう。100億円もの公費を投入する事業であるにもかかわらず、都合の良い数字だけを公表し、事業の見通しについての情報を隠すことが許されていいはずがない。

「19,000円」ありき
 最大の問題は、開示された文書に記された試算が、すべてトンあたり「19,000円」でしか計算されていないことだ。公社作成の文書では、試算にあたって他県の公共関与の類似施設における料金を参考にしたと記しており、確認したところ、該当事例は、新潟、神奈川、茨木、滋賀、島根、高知、佐賀、宮崎の管理型産廃処分場だという。公共関与の処分場は、過大な投資の上に成り立っているため、処分料は民間企業の施設よりかなり高め。しかし、地域事情などが異なるため、鹿児島が他県のケースに当てはまるかといえば、そうとは言えない。

 県公社の試算にもっとも近いのは、宮崎県にある「エコクリーンプラザみやざき」(運営:公益財団法人宮崎県環境整備公社)の処理料金。産廃受入料は、すべてトンあたり「20,000円となっている(下が「エコクリーンプラザみやざき」のHPにある産廃処分料。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。ただし、同施設は焼却・溶融プラントを擁している上、一般廃棄物の受け入れが多いため、産廃埋立処分のみのエコパークかごしまに当てはめるのは乱暴だ。

「エコクリーンプラザみやざき」

 一方、今回県公社が開示した前掲の文書には、受入料金の参考事例を示した表があり、これを拡大してみた。

試算03_2

 どのように計算すると「20,000円」になるのかまるで分らないが、他県の公共関与型処分場の受入料金のうち、この表にある鹿児島の参考事例にもっとも近いのは、やはり前掲の宮崎のケース。その平均「「20,000円」という数字を用いたのは間違いなさそうで、試算を行った県公社も宮崎県の事例を重く見たことを認めている。

 次に、エコパークかごしまと同じく、覆蓋施設(屋根付き処分場)となっているのは高知県の「エコサイクルセンター」(運営:公益財団法人エコサイクル高知)。ここの受入料金は、下のようになっている(エコサイクル高知HPより)。

高知県の「エコサイクルセンター」

 エコパークかごしまでは、「廃石綿」(アスベスト)の受入予定がないため、これを除外して計算すると、高知の受入料金の平均は、トンあたり「16,000円」程度。鹿児島に比べ、かなり低めの料金設定となる。他県の公共関与型処分場にしても、調べたところ受入料金はまちまちだった。鹿児島の参考価格表は、宮崎の料金を軸に、他県施設の料金の都合のいいところだけを寄せ集めた形。「19,000円」の鹿児島価格に合致する事例を見つけることはできない状況だ。公社が開示した文書に「19,000円」以外の平均価格の記述はなく、合理性に欠ける試算であることは疑う余地がない。

赤字必至
 鹿児島では、「19,000円ありき」で事業試算が組み立てられており、これを下回る料金では、「赤字」になることを意味している。事故や災害で稼働が止まれば、事業が破たんする恐れがあるということだ。その場合、ツケは県民に回されることになる。

 重ねて述べるが、産廃処分場の事業試算とは、細かく産廃の受入料金を設定し、産廃の発生量をはじめとする諸条件も加味し、いくつものケースが想定されるべきもの。だが、鹿児島県ではそうした手法を採っておらず、希望的な数字を並べただけとなっている。

 エコパークかごしまの工事費をめぐっては、建設予定地の豊富な湧水のために工事が難航。当初予算77億7,000万円が、18億7,920万円も積み増しされ96億4,920万円に増大。でたらめな工事計画だったことが歴然としており、住民訴訟まで起こされている。工事もでたらめ、試算もでたらめ……。鹿児島・伊藤県政の暴走はとどまるところを知らない。

 ちなみに、鹿児島県環境整備公社が試算にあたって参考にした「エコクリーンプラザみやざき」は、毎年赤字を計上。平成24年度は約1億円。累積赤字は膨らむ一方で、運営主体の宮崎県環境整備公社によれば、「荷が集まらない」のが原因だという。この事実も参考にするべきだと思うが……。 



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