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税金食い物 ― 舛添東京都知事の政治ビジネス

2014年4月30日 08:20

舛添要一氏 舛添要一東京都知事の関連政治団体が、知事の妻が代表を務める会社に事務所の家賃を払っていた問題をめぐり、政党交付金を会社の利益にあてる手法が、知事が自民党参議院議員だった時代から続いていたことが分かった。
 自民党と、今年1月まで籍を置いた新党改革の両支部から家賃として支出された金額は、政治資金収支報告書や政党交付金使途等報告書で確認できただけでも1,377万2,000円。平成13年の参院議員初当選時から同様の手口を用いていたとすれば、数千万単位の「税金」が知事の会社の収入に化けた可能性がある。
 知事が株主である会社には他の政治団体からも家賃が支払われており、税金や政治資金で舛添一家を儲けさせてきた格好。改めて都知事の政治倫理が問われそうだ。

政党交付金で家賃――支出先は舛添氏の会社
都知事自宅 舛添知事が代表を務めていた政党支部は二つ。平成13年から自民党を離党した22年3月までが「自由民主党東京都参議院比例区第二十八支部」、同年4月に「新党改革」の党首になってからは「新党改革比例区第四支部」である。それぞれの支部の主たる事務所は世田谷区代田にある知事の自宅内。自宅の土地・建物は、昨年2月まで知事の妻が代表取締役で、知事自身も取締役に就いている「株式会社舛添政治経済研究所」の名義となっており、両支部はこの会社に対し家賃を支払っていた。舛添氏の事務所によれば、物件が売買によって知事個人の名義になった後も、家賃は会社に支払われているという。(写真が、会社や政治団体が同居する知事の自宅)

 自民支部の家賃支出については、平成20年と21年の政党交付金使途等報告書から確認でき、月額210,000万円、1年間で252万円が舛添政治経済研究所に支払われていた。知事が自民党を離党したのは平成22年3月で、この月までは自民支部が家賃を支払い、4月の日割分(77,000円)から新党改革の支部が自民支部と同額を払っていた。

 政党交付金使途等報告書や政治資金収支報告書で確認できる、平成20年から24年までの5年間における政党支部家賃の合計は13,772,000円。これに今年1月に新党改革を離れるまでの平成25年分や、平成19年以前の同様支出を加えれば、3,000万円を超える額の「税金」が舛添氏側の会社に流れ込んだとみられる。

資金管理団体、後援会も知事の会社に家賃
 舛添氏側の儲けはこれだけにとどまらない。知事の資金管理団体「グローバルネットワーク研究会」は現在も存続しており、こちらは少なくとも平成20年から舛添政治経済研究所に月額家賃101,500円(23年6月まで)~161,000円(同年7月以降)を支出。平成23年6月に解散した「舛添要一後援会」も、月額131,000円を会社に家賃として支出していた。

 ここで、舛添氏が代表を務めていた「自由民主党東京都参議院比例区第二十八支部」(平成13年~22年3月)と、「新党改革比例区第四支部」(平成22年4月~)に対する政党交付金の入金額及び支部から「グローバルネットワーク研究会」、「舛添要一後援会」に支出された金額をまとめると次のようになる。

平成13年・・・1,250万円 (別に自民党本部⇒グローバルに1,000万円、グローバル⇒後援会に450万円)
平成14年・・・1,000万円⇒グローバルに250万円 後援会に100万円
平成15年・・・1,200万円
平成16年・・・2,100万円⇒グローバルに70万円・後援会に100万円(グローバル⇒後援会に280万円)
平成17年・・・1,800万円  (グローバル⇒後援会に150万円)
平成18年・・・1,800万円⇒グローバルに50万円・後援会に50万円(グローバル⇒後援会に60万円)
平成19年・・・4,000万円⇒後援会に100万円(グローバル⇒後援会に180万円)
平成20年・・・1,600万円(グローバル⇒後援会に200万円)
平成21年・・・1,450万円⇒グローバルに100万円・後援会に100万円(グローバル⇒後援会に100万円)
平成22年・・・1,100万円⇒グローバルに50万円・後援会に50万円(グローバル⇒後援会に200万円)
平成23年・・・4,100万円⇒グローバルに2,100万円・後援会に40万円(グローバル⇒後援会に230万円)
平成24年・・・3,000万円⇒グローバルに850万円 

 各年とも、政党支部の収入の中心は政党交付金。その支部から「グローバルネットワーク研究会」及び「舛添要一後援会」に寄付がある以上、税金を使った事務所費支出の額は、より膨らむ計算。舛添氏の会社は、毎年517~531万円の家賃収入を関連政治団体から得ており、そのうちのかなりの部分が税金を原資とするカネだった可能性がある。

問われる事務所費の正当性 
 問題は、政党支部を含む知事の関連政治団体すべてが知事の自宅内にあるにもかかわらず、なぜこれほどの事務所費が必要になるかということ。下は、舛添氏の関連政治団体である政党支部、「グローバルネットワーク研究会」、「舛添要一後援会」の事務所費支出額を表にまとめたものだ(赤字は事務所費の内の家賃支出)。

最終事務所費

 現認できる平成22年~24年分の収支報告書で事務所費の内訳を確認したところ、グローバルネットワーク研究会は家賃と監査費、政党支部は家賃に加え携帯電話使用料と自動車税、後援会(22年分と解散した23年の6月まで)は家賃と監査費用がそれ。つまり事務所費支出の中心は「家賃」だった。法律上別々とはいえ、同じ建物内にある政治団体が、それぞれに家賃を支払う構図はどう見ても不自然だ。

 同一の住所に複数政治団体の事務所が置かれるケースは少なくない。自民党や民主党といった政党所属の政治家の場合、政党支部と後援会、さらには資金管理団体が「同居」といった形の方がが多いくらいだ。しかし、こうした場合の「家賃」の支払いは、いずれか一つの団体にまとめられるのがが普通。賃貸借物件なら、契約上、家主との契約は一本。フロアを細かく仕切って、別の団体ごとに契約することは考えにくい。まして政治団体の事務所が政治家の自宅内なら、まず事務所費自体が発生することながない。税金や政治資金を自分の懐に入れるような政治家など、誰も相手にしないだろう。だが、東京都民が選んだ知事は、平然とこれをやってのけている。

 登記簿謄本を確認したところ、知事の自宅は、平成元年に新築されたもの。当初は知事本人の名義だったようだが、平成6年には売買で「株式会社舛添政治経済研究所」に所有権が移っている。ただし、名義が変わっただけで、当該物件は舛添氏の自宅のまま。舛添氏個人が支払う税金が減っただけの話だ。それまでは、舛添氏個人が会社から家賃収入を得ていた可能性もある。

 関連政治団体による事務所費支出の状況からして、会社に「家賃」が入る仕組みが考え出されたのは、舛添氏が平成13年に政界進出を果たしてから。原資は税金なのだから、何の苦労もなく稼げたことだろう。知事にとって、政治は「ビジネス」ということだ。舛添事務所の説明では、会社側に対する家賃支払いは、昨年2月に土地・建物が知事本人の名義になってからも続いているという。個人名義の物件で、会社が利益を得られる根拠がどこにあるのか舛添知事に聞いてみたい。もう一点、どうしても知事に確認したいことがある。平成6年に自宅が会社名義になってから、知事は会社に対して「家賃」を支払ってきたのか、という疑問があるからだ。会社が政治団体から家賃を取ってきた以上、舛添氏からも同様に家賃を支払わせるのが筋。他人のカネ=税金は儲けにするが、自分のカネだけ別儀というのでは有権者に顔が立つまい。



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