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権力の犬と化した「西日本新聞」

2014年4月 2日 07:00

新園舎の一部を使った入園式 1日、市民の声を無視して高島宗一郎福岡市長が移転を強行した認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)が、新年度のスタートを切った。
 建設工事の遅れから、旧園舎と新園舎の一部を使った異例の入園式。新園舎では、通園口真横の大半を、工事用車両が通るスペースが占めるという危険極まりない状況で、歪んだ市政の現状を見せつける光景となった(右の写真)。
 一方、市は同日、市長公約達成とばかりに、市内の待機児童数がゼロになったと発表したが、これがとんだ“まやかし”。都合のいい数字だけを扱った、非現実的な内容だ。
 これを大手メディアはどう報じたか――。地元紙・西日本新聞の恥知らずな報道ぶりを検証した。

「待機児童ゼロ」のまやかし
 もともと、役所がいう「待機児童」の定義付け自体が、実態を反映したものではない。福岡市の場合、平成25年4月の待機児童数は695人とされていたが、保育所入所を希望しながら、「未入所」となっている子どもの数はその倍にも及ぶ。

 例えば、平成23年度は、未入所児童が1,490人いたのに「待機児童」は727人。24年度は1,746人が未入所だったのに「待機児童」は893人と公表されている。市が公表してる待機児童数の約2倍が、希望する保育所入所を断られているというのが現実だ。

 役所がいうところの「待機児童」とは、保育所への入所を望みながら定員等の関係で入所がかなわない子どもの総数(未入所数)ではなく、未入所総数から特定の保育所だけへの入所を待つ子どもの数を差し引いたものなのだ。もっと分かり易く言えば、“どこでもいいから入所させたい”というケースだけを「待機児童」と呼んでいるのである。

 『保育所への入所申込が提出されており、入所要件に該当しているが、入所していない児童』。これが厚生労働省が定めた「待機児童」の定義である。実質的な待機児童は、公表されている統計よりもはるかに多いことが分かる。

 1日に「待機児童ゼロ」を宣言した福岡市では、新年度に入所待ちとなっているケースがまだ1,100人を超えており、保育環境が改善されたとは言い切れない。そうした中、この日の西日本新聞朝刊は、第2社会面に高島市政を礼賛する記事を掲載した(下の写真が4月1日の西日本新聞の記事)。

 見出しは「福岡市の待機児童ゼロ」。驚いたのは、脇見出しである。「保育所整備が奏功」とある。公式発表前の「スクープ」らしいが、見た瞬間、この新聞社は「恥」という言葉を知らないのだと悟った。

福岡市の待機児童ゼロ

厳しい姿勢一転
 HUNTERは昨年6月12日、「揺れる福岡市の保育園移転計画 不可解な土地取得経過(上)」と題する記事を配信した。同園をめぐる疑惑についての第一報だった。翌13日、西日本新聞は、朝刊トップで、視点は違うものの、同じく中央保育園の移転に関する記事を掲載する。下がその紙面だ。

西日本新聞 記事トップ

 この日の西日本新聞は、別の紙面に大きく《「待機ゼロ」に焦りか》 《他市「考えられない」》とする解説記事まで掲載。これ以後、同紙は保育園整備の問題点を厳しく追及していく。大きな見出しだけ拾ってみるとこうだ。
・6月14日・・・《福岡市環境考慮せず》 《候補地選定 定員増ありき》
・6月20日・・・《ラブホテル近くの認可保育所》 《福岡市 西区でも整備》

 同紙が問題視したのは、保育園が整備される地域の環境。周辺にラブホテルが営業する場所に、保育所はそぐわないという、もっともな主張だ。6月30日には、社としての考えを代表する「社説」で、《子どもの安全安心が第一》として、待機児童解消に走るあまり、子どもの安心安全への配慮を欠いた福岡市の姿勢を批判していた。下がその社説である。

社説

 一体、この批判精神はどこに消えてしまったのか――。前述した1日の記事は、「待機児童ゼロ」を際立たせてから、「保育所整備が奏功」ときている。明らかに福岡市の保育行政が“正しかった”とする見出しの打ち方。これでは、同紙が批判していたはずの風俗街での保育所整備が、待機児童解消の役に立ったと言っているに等しい。見出しが勝負の新聞にあっては、致命傷というしかない。

 記事の内容にしても、福岡市の言い分をそのまま垂れ流したに過ぎず、ラブホテル街での保育所整備問題には一切触れていない。これでは、社説の主張をかなぐり捨てて、高島市政の犬になったと言っても過言ではあるまい。冒頭の写真にある状況を見ても、「保育所整備が奏功」と言えるのだろうか。

市長と手打ち?
 じつは、西日本新聞が変節した背景に、同紙幹部と市長の「蜜月」があるとの証言がある。
 複数の同紙関係者によれば、昨年、ある幹部社員が高島市長と「手打ち」を行い、市長にとって目障りとなっていた市政担当記者を外そうとしたのだという。さすがに、これを知った前任者が厳しく諌めたため、記者の配置転換は沙汰やみになったとされるが、その頃から、風俗街での保育所整備を追及していた記事がピタリと鳴りを潜め、高島市政をヨイショする記事が目立ち始めた。

 別の同紙関係者は、「問題の幹部社員が、見出しの付け方にまで口を出している」と、内部事情を認めている。これが事実なら、西日本新聞は、史上最低と言われる市政トップに尻尾を振ったということになる。

 権力の犬(HUNTERは『ポチ』と呼んでいる)が送り出す報道は、一見して分かるもの。たしかに昨年暮れ頃から、西日本新聞の市政ネタは市長寄りのものばかりとなっており、記者の間からも「なんだこの記事」という声が上がっていた。

 西日本新聞には、優秀なジャーナリストも存在する。時にハッとさせられるような政権批判を繰り出し、「さすが」と思わせる報道も少なくない。その一方で、地元福岡の本社はどうか。現状はまさに権力の犬。報道を名乗る資格などあるまい。本稿では「犬」の実名を避けたが、早々に更迭されることをお勧めしておきたい。一応、HUNTERも同紙の購読者である。



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