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揺れる福岡市の保育園移転計画 不可解な土地取得経過(上)

2013年6月12日 09:25

 福岡市中央区にある「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転計画をめぐり、市の保育園用地取得が不透明な形で進められていたことが分かった。
 HUNTERが福岡市への情報公開請求で入手した文書と市側への取材によれば、数箇所あった取得候補地が、十分な検討もされぬまま2箇所に絞り込まれ、高島宗一郎市長らの最終判断の時点でも、議論を省いていきなり整備予定地が決められていた。
 中央保育園の在園児の保護者などから、移転計画そのものに反対する声が上がっており、9億円の税金を投入して市が取得した土地が宙に浮いた状態。揺れる移転計画の経緯と、不可解な土地取得の実態を2回にわけて検証するが、確認取材の過程で、混迷の原因を作ったのが高島宗一郎市長の示した方針だったことが明らかとなった。(写真は「中央保育園」)

合築から分離整備へ―高島市長の方針だった
 福岡市立中央児童会館に併設された同園は、建物の老朽化や耐震対応の必要性が生じたことから建替え計画が進められてきた。
 平成22年度まではこれまで同様、両施設を現地に合築する予定だったが、児童会館と保育園を分離して整備する方針に転換した平成23年のあたりから、雲行きが怪しくなっていく。

 市関係者によれば、方針転換のきっかけを作ったのは高島市長。天神地区の一等地ともいえる場所にある現在の建物を、児童会館と保育園だけに利用するのはもったいないという考え方を示したとされる。つまり、商業施設を併設しろということだ。

募集要項に示された事業スキーム そこで浮上したのが、児童会館と保育園の分離。商業施設と保育園を両立させることはできないからだ。実際、「中央児童会館等建替え整備事業」は、PPP(官民協働事業)の一手法である「定期借地・賃借入居方式」を採用、昨年11月に事業者募集要項を公表し、今年4月に応募を受け付け、事業者選定が進められている。

 市が公表した事業者の「募集要項」によれば、児童会館、NPO・ボランティア交流センター「あすみん」及び民間施設を備えた複合施設を民間事業者が整備。民間のノウハウ、技術力、資金を施設更新に最大限に活用することにより、効率的かつ質の高い施設の建替えを行なうとしている。(右は募集要項に示された事業スキーム)

 「募集要項」には、前述した市長の考え方が明確に示されている。
《本施設は市内でも商業活動が活発な地域に立地するものであり、民間事業者が公共施設と合わせて民間施設を企画、誘致することにより、当該地域経済の活性化を図ることも目指しています。また、本事業は、PPP事業として、事業者の技術力、提案ノウハウの高度化に資するものと考えており、本事業の経験を通じた市内経済の振興・発展も期待しています》。
 現在の混迷を招いたのは、商業施設との併設にこだわり、結果的に保育園の分離を促した高島市長だったことになる。

不可解な土地取得経過
 HUNTERが入手した市側の文書の中に、平成23年7月26日に行われた「市政運営会議」の議事概要を記した文書がある。下はその一部だが、中央保育園については『現地近隣』、児童会館は『現地』と整備方針が明記してある。つまり分離整備ということだ。さらに『定員拡充』、『民間活力』という言葉も出てくる。進められてきた事業の形は、この会議で決められていたのである。

運営会議.jpg

 当然、新たな保育園の整備場所について、買収可能な土地があることを前提とした方針決定だと見るのが普通。しかし、市側に確認したところ、この時点では中央保育園の新たな整備場所について、買収が可能か否かの確認がなされていなかったのだという。不可解というしかない。土地取得の見込みもないまま、市の最高意思決定機関で方針が決められるとは思えない。

 開示された文書を見ていくと、この日の市政運営会議のために所管局であるこども未来局が作成した資料があった。中央保育園及び中央児童会館の建替え整備についての「総括シート」と呼ばれるものだ。市政運営会議の決定は、この総括シートと添付された整備スキームの説明文書を追認した形となっていた。そこに記されていたのは、土地取得の不透明さを象徴する記述の数々だった。

つづく



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