政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

市政私物化! 高島福岡市長が高額画像を私的流用

2014年4月14日 07:45

イメージ.png 福岡市の高島宗一郎市長が、公費で作成された「成果物」を私的に流用していたことが明らかとなった。
 流用されたのは認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転事業に絡み作成された道路整備のイメージ画像。市は、わずか8枚の画像に220万円かけるという税金の無駄遣いを行ったあげく、作成された画像を市長の個人ブログに流用させていた。
 市政の私物化としか言いようのない事態に、識者からも批判の声が上がっている。
(右は、1枚あたり275,000円の作成費がかかったイメージ図のうちの1枚)

画像1枚275,000円
法外な価格のイメージ図 保育園移転事業で最大の弊害となったのは、周辺道路の狭さ。移転強行を決めた市は、新たに歩道部分を造るとして、そのイメージ図を公表したが、その折に使用された画像の作成を、法外な値段で外部に業務委託していた。

 HUNTERが福岡市への情報公開請求で入手したのは、業務委託によって作成された「成果物」。その記録として残されていたのは、15枚の画像だけだった(右はそのうちの14枚)。民間の設計業者に発注された仕事の正式名称は、「今泉719 号線パース作成業務」。契約金額は『2,205,000円』だ。

 15枚の画像のうち、7枚は新たに整備されている新中央保育園周辺の現況写真、他の8枚は、現況写真に人や歩道、新園舎のイメージパーツを埋め込んだ加工品である。15枚の画像で使用されている現況写真や保育園舎などの元データについて市側に確認したところ、所有はすべて福岡市。現況写真も園舎などのパーツデータも、市側が業者に提供しており、。設計業者の仕事は、現況写真に与えられたパーツを書き込む「画像処理」だった。わずか8枚の画像作成に220万円。1枚当たり275,000円という非常識な金額である。

 問題の画像作成業務は、昨年7月に市が発注したもの。中央保育園移転予定地の全面道路の幅が5メートル程度しかなく、園児の通園時の安全が確保できないと批判が集中。あわてた市が、歩道整備を行うとして公表したのが「成果物」である8枚の画像だった。作成されたイメージ図は、昨年7月17日に市長が緊急会見し、中止していた中央保育園の移転新築工事を再開することを表明した折に説明用として使用されたほか、市の広報紙「市政だより」にも掲載されている。ちなみに、HUNTERが上記に掲載した画像は、市情報公開条例に従って所定の手続きを経た後、開示に必要な料金を支払って入手したものである。

市長のブログに画像流用
 問題は、法外な業務委託の内容だけにとどまらない。この高額な画像が、高島市長の「個人ブログ」に流用されていたのである。

 昨年7月18日、高島市長の個人ブログ(Ameba:『Open・Fair・Free]』)に「新・中央保育園~子どもたちの安全のために~」と題する一文が掲載された(⇒http://ameblo.jp/so-takashima/day-20130718.html)。

 その中で市長は、《保護者や保育士の皆さんが環境に不安を感じている点は、大きく分けて3つあるようです》と述べ、
①通園時の安全確保への不安
②万が一の場合の避難への不安
③ホテルなどが近隣にあるという周辺環境への不安
 を列挙。

 《市役所の職員と地域の皆さん、警察の方々などとも話し合い、知恵を出し合った結果、それぞれの問題点についての改善策をまとめることができました!》と続け、次のような解決策を披露していた。

通園時の安全確保については、前面道路を全面的に改修することで、車優先の道路から子どもの安全優先の道にします。

現在、移転予定の土地周辺の道路は路肩が非常に狭く、また電柱が路肩の真ん中にあるために、ベビーカーを押しているときには、車道側にはみ出さないと通行できません。まさに人の方が遠慮して通らなければならない道です。これでは安心して通園できないと感じました。

協議、検討を進めた結果、車道を狭くして、歩道を拡幅することにしました。これによって車はスピードを出しにくくなり、歩行者は安心して通行できます。また通行の障害になっている電柱を移設し、さらに車道と歩道の間に金属ポールを立てることにより、ベビーカーを押しながら、園まで安全に通園できる歩行空間を確保することにしました。

 この文章のあとに次の画像が貼り付けられている。

ブログ.png

 左が整備前、右が整備後の画像。前掲の「成果物」と同じ画像が使われている。ブログでの成果物使用は計5枚。そのうち3枚が、1枚あたり275,000円もかかったというイメージ図だ。しかし、このブログは市長の「私的」なものであって、福岡市のホームページ上にある公式なものとは別。つまり、市長は税金を使って作成された成果物=市有財産を、私的に流用していたことになる。

 画像作成の業務委託は、昨年7月12日に発注されていたが、その前後の中央保育園をめぐる動きはこうだ。
・6月12日・・・・HUNTERで「揺れる福岡市の保育園移転計画 不可解な土地取得経過(上)」配信
・6月13日・・・・地元紙「西日本新聞」が保育園の立地問題を報道
・7月4日・・・・・保護者向け説明会 → 保護者が市側の強硬姿勢に反発し、出席者ゼロ
・7月7日・・・・・市長が、保護者会に面会に応じる旨を通知
7月12日・・・市が業者に歩道整備後のイメージ画像の作成業務を発注
・7月16日・・・・保護者会の代表5名が市長室で高島市長に面会
・7月17日・・・・市長が緊急会見で、保育園建設工事の着工を表明
7月18日・・・市長が個人ブログに私有財産である画像を流用

 新中央保育園周辺道路における歩道整備は、市民の批判を浴びストップしていた移転新築工事を再開させるため、場当たり的に決められたもの。さらに目先の説明用資料として歩道整備後のイメージ図を作成するため、金に糸目をかけずに業務委託を行った形だ。会見で問題のイメージ図を披露した翌日には市長の個人ブログに画像が貼り付けられており、市内部で画像データが市長サイドに渡されたこことは明らか。いったん会見で公表された画像であろうと、これは、報道各社や情報公開請求に対するデータ提供とはわけが違う。明らかに私的流用。市の一般職員が同じことをやれば、処分対象となる可能性もある。

 画像作成が発注されたのは、在園時保護者らの移転反対運動が顕在化し、中央保育園の移転事業が社会問題化した後。風俗街での立地と並び、交通事業の悪さに注目が集まり、市が窮地に陥っていた頃である。強引な手法で移転を決めた高島市長の体面を繕うため、税金の無駄遣いが行われた形だ。税金で作った画像を自身のブログに貼り付けたのは、一人でも多くの市民に「解決策」を見せつけたかった市長の焦りからだろう。公私の区別もつかない市長の姿勢は、幼稚としか言いようがない。

識者の見解――「市政の私物化」
 高島市長が、画像データを個人ブログに流用したことについて、「市民オンブズマン福岡」の児嶋研二代表幹事は次のように話している。
「そもそも、わずか8枚の画像作成に220万円もの公費をかけた時点で不適切といえる。画像加工という定価がない業務の委託とはいえ、だれが見ても税金の無駄遣いだ。その上、市長の個人ブログに成果物である画像が使用されたことは、明らかに私的流用。市政の私物化と言っても過言ではない。会見で使用したから画像データがオープンになったとの見方もできるが、一般市民が短時日でデータを取得するのは不可能。つまり、市長だから可能だったということ。これが許されれば、市長が市有財産を自由に入手できるということになってしまう。いかなる理由があっても、公私の区別はつけるべき。倫理観の欠如も指摘しておきたい」。

 中央保育園の移転は、高島市長の唐突な指示で始まった愚行。移転事業をめぐっては、市による移転予定地取得過程に疑惑があるほか、隠ぺいやごまかしが横行する事態となっている。まさに市政の私物化によって、すべてが歪んだ状況だ。幼稚な市長の暴走を、これ以上許してはなるまい。



【関連記事】
ワンショット
 永田町にある議員会館の地下売店には、歴代首相の似顔絵が入...
過去のワンショットはこちら▼
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲