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福岡市「カワイイ区」 疑惑の業者選定

2014年3月26日 07:00

 高島宗一郎市長とタレントの思いつきではじめられた福岡市の仮想行政区「カワイイ区」をめぐって、不適切極まりない業者選定が行われていたことが、市への情報公開請求によって明らかとなった。特定業者への便宜供与が疑われる事態と言っても過言ではない。
 問題の業者選定が行われたのは昨年7月。カワイイ区を実質的に運営する事業者を選ぶため実施された選考委員会では、業者ごとに点数を記入する評価表の採点欄を誤記したまま、存在しない業者に点数を付けていた。その結果、選定結果と実際の業者が一致しないことに――。当然、選定自体が不成立となるはずだったが、HUNTERが指摘するまで市側は間違いを放置。そのまま選ばれた業者が業務を続けていた。
 市側は、HUNTERが指摘した評価表の間違いを認めている。

業者選定「評価表」の重大ミス
 カワイイ区がスタートしたのは平成24年8月。ことの発端をつくった元AKB48の篠田麻里子氏を初代区長に、約1,000万円をかけてネット上で「区民」を集めていた。今年2月末現在、登録した区民は「42,097人」だという。 

 HUNTERが福岡市への情報公開請求で入手したのは、篠田氏が区長を退任した後の、平成25年度の同事業に関する文書。それによると、カワイイ区を運営するための業者を決める選定委員会において、5社の中から1社を選ぶ際、「提案競技評価表」(以下、「評価表」)の内容を間違ったまま、採点が実施されていた。

 下がその評価表(赤い書き込みはHUNTER編集部)。評価対象となったのは5社。業者名を隠すため、示されたのはアルファベットで「A」、「B」、「C」、「D」、「E」。これが正しい表記だ。項目ごとの採点では、たしかにA~Dとなっているが、総合得点を記入する欄は「A」、「B」、「C」、「E」、「F]となっている。「D」が消えて、ないはずの「F」がある。まともに採点したのなら、この間違いを見逃すはずはない。しかし、誤記はHUNTERが指摘するまで、訂正すらされておらず、所管課の課長も、指摘を受けるまで気付かなかったとしている。「ケアレスミス」なのだという。

評価表

 しかし、その説明は通らない。選定の結果、カワイイ区の業務を約1,000万円で委託されたのは福岡市に本社を置く広告代理店「BBDO J WEST(ビービーディオー・ジェイ・ウェスト)」。市への情報公開で入手した文書を精査すると、提案書に記載のアルファベットによって、選定においての同社の呼称が「E社」であることが分かる。

 一方、評価表の総合点欄には、この「E社」がない。選定委が選んだのは存在しない「F社」だ。評価表の間違いに誰も気付かなかったとすれば、選定委員はろくに評価表の内容を見ていなかったことになる。結果を集計したのは事務方だが、その段階で見落とされることも考えにくい。そうなると、ある見立てが現実味を帯びる。“はじめから「BBDO J WEST」を選ぶよう、仕組まれていたのではないか”――。もしそうなら、選定が形だけに終わったことへの説明がつく。結果が分かっていれば、途中の形がどうであろうと、気に掛けることもなかっただろう。

1人だけが「F社」に高得点
 この選定における点数付けにも疑義が生じている。評価表には「順位」を記入する欄がある。選定結果についての決裁文書には《「順位」と「点数の合計」をもとに、総合的な観点から協議を行い》最優秀提案者を決めたとあるが、7人の選考委員による実際の採点表をみると、どれにも「順位」の記載はない(下の写真参照)。

採点表

 「順位」でいくと、3人がE社を、1人がC社を1位にしている。そして、F社をトップにしたのは3人。順位評価ではE社とF社が並んでいる。しかし、合計得点でF社が上だったということで、結果を導いていた。

 F社は472点 E社が461点。FがEを11点上回っていはるのだが、これがまた不自然。順位評価の割に、総合点で差が出たのは、下にある1枚の評価表(赤い書き込みはHUNTER編集部)が原因だ。F社がE社を11点も上回っており、最終的に、この11点差がモノを言った形。この評価表を記入した選定委員は、意図的にFに高得点を与えたとも見える。F=「BBDO J WEST」に高得点を与えたのが市の職員だったとしたら、この選定は疑惑まみれとなる。

評価表

見逃せぬ市顧問と業者の関係
 カワイイ区に深く関与していた一人の人物がいる。高島市長の友人で、広報戦略アドバイザー(市顧問)を務めている会社社長・後山泰一氏だ。後山氏は昨年11月、福岡市内のホテルで自らの結婚披露宴を催していたのだが、この披露宴に問題の選定で選定委員となっていた二人の市職員が招待されていた。ひとりは後山氏が所属する広報戦略課の課長、そしてもう一人は選定委員長だった総務企画局企画調整部の部長である。経済観光局文化国際・コンテンツ部の部長も出席しているが、こちらは部下の課長が選定委員だった。後山氏の結婚披露宴に出席するほど仲がいい市職員が、最低でも二人、さらに一人の幹部職員の部下が、選定委員を務めていたことになる。BBDO J WESTを最上位に選んだのは3人の選定委員。妙に符合する。

 最大の問題は、後山氏の結婚披露宴に、BBDO J WESTから取締役を含む4人もの社員が出席していたことだ。両者のつながりの濃さを示すものだが、後山氏とBBDO J WESTの関係は古く、過去にはオープン時の福岡パルコに関する仕事などを共にしていたことが分かっている。現在も互いの会社からスタッフを出し合ってフリーペーパーを発行しており、後山氏自身は編集アドバイザーという肩書だ。後山氏にとってBBDO J WESTは、単なる取り引き先ではなく、ともに雑誌を製作する―いわば“仲間内”(業界関係者からの指摘)の関係だ。その後山氏とBBDO J WESTの関係については、さらに疑念を抱かざるを得ない事実がある。

 後山氏は、市顧問就任後、少なくとも10件の業者選定において、選考もしくは選定委員に就いていた。このうち9件は、後山氏が経営する会社の業務と重なっており、同業者を対象とした選定だったことが判明している。そして、同業者を選定した9件中、3件がBBDO J WESTを選んだものだった(下がその業務と契約日、契約金額)。“不適切”などという安易な言葉で片付けられるような事態ではない。利害関係者である後山氏が、堂々とお友達の会社の選定に関与していたのだ。しかし、後山氏が高島宗一郎市長の友人だからなのか、市は今日まで、この件についてだんまりを決め込んでいる。

(1) 「電子掲示板コンテンツ整備等業務委託」
  契約日:平成23年10月11日
  契約金額:8,570,100円
(2) 「飲酒運転撲滅キャンペーン業務委託」
  契約日:平成23年11月22日
  契約金額:14,990,508円
(3) 「自転車安全利用条例の施行に伴う広報啓発業務委託」
  契約日:平成25年2月25日
  契約金額:5,461,690円

 カワイイ区の事業者選定に、後山氏が直接的に関与した形跡はない。しかし、後山氏の結婚披露宴に招待されるほどの仲である市職員がいて、少なくとも二人は選定委員だ。披露宴にはBBDO J WESTからも、4人の社員が出席している。互いに「関係ない」と言えるのか?李下に冠のたとえもあるが、この状況はどう見ても矩を超えている。その結果、カワイイ区の事業は、税金食いつぶしとでもいうべき惨状を呈する状況となっていた。詳細は、次稿で――。



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