政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

怠慢事業に「ロリータとタイアップ」 ― 福岡市「カワイイ区」の惨状

2014年3月27日 07:00

 事業者選定に疑惑が浮上した福岡市の仮想行政区「カワイイ区」に絡み、約1,000万円で同区の運用業務を受託した業者が、「仕様書」で定められた業務を怠っていたことが、福岡市への情報公開請求で入手した資料から明らかとなった。
 さらに、業者が提出した「提案書」から、この事業がタレント売り出しの道具に使われている可能性が浮上。提案内容には、特定のファンしかいないといわれる「ロリータ」とのタイアップまで明記されており、公費利用の事業とは思えぬ脱線ぶり。税金を食いつぶす形となった「カワイイ区」に、改めて批判の声が上がりそうだ。

守られぬ「仕様書」の内容
 カワイイ区の運営事業を受託していたのは福岡市中央区に本社を置く広告代理店「BBDO J WEST」。福岡市が開示した資料によれば、契約金額約1,000万円で福岡市からカワイイ区の運用を任された同社は、契約時に示された「仕様書」に規定された業務を怠っていた。下がその「仕様書」(赤い書き込みはHUNTER編集部)。「10回以上の動画」制作や、メルマガ配信が義務付けられているのが分かる。

仕様書

 これに対し、市への情報公開によって入手した資料の中にあるBBDO J WESTが提出した「実績報告書」では、約8ヶ月間の契約期間内で、メルマガ発信はわずかに5回。昨年7月と8月、今年の2月は「0」となっていた(下の報告書参照)。

報告書 1 報告書 2 報告書 3

 市の所管課に確認したところ、仕様書に明記はしていないものの、メルマガ配信については最低月1回を要請していたという。4万人弱とされる「カワイイ区民」の数は、メルマガ配信先の数。登録した区民に対し、市側からのアプローチを怠った形で、業者側の怠慢というしかない。

 仕様書に「10回」と規定された動画制作・配信については、さらにタチが悪い。25日までの実績では、動画配信は計7回。契約期間が残り6日間しかない中、この体たらくだ。市側は、いま動画制作中で何とか既定の回数をクリアできるというが、情報公開請求が行われ、あわてて帳尻合わせにかかったとしか思えない。業者の怠慢は、即税金の無駄遣いに通じる。その点を指摘したが、市側も返答に詰まる状況だ。

タレント売り出しに一役
 2年目となったカワイイ区は、事業の言い出しっぺだとされる元AKB48の篠田麻里子氏がさっさと「区長」を退任した後、外国人女性を2代目区長に据えた。ブログや動画サイトに日本の文化を投稿して人気を集めているのだという。高島宗一郎市長による選任理由も同様で、その情報発信力に期待したということになっている――が、BBDO J WESTが提出した提案書(下、参照)には、この外国人について、こう説明されている。
所属事務所が売り出し中のタレントであるため、TV番組への露出増加が狙える

BBDO J WESTが提出した提案書 1

 2台目区長への外国人女性起用についての公式発表や、これまでのカワイイ区がらみの情報発信では、彼女が《売り出し中のタレント》であることなど、どこにも触れられていない。そればかりか、福岡市での彼女の知名度は低く、区長に就任した時に、「この人誰?」という反応の方が多かったのは確か。むしろ区長就任で知名度を上げたというべき状況だ。これではまるで、税金を使って女性タレントの売り出しに協力したようなものである。

「ロリータ」とタイアップ??? 
 呆れたのは提案書にあった別の事業予定。出てくるのは「ロリータ」である。論より証拠というが、下の提案書のページを見ていただきたい。『日本ロリータ協会』とカワイイ区がタイアップして、「お茶会」を実施するのだという。

BBDO J WESTが提出した提案書 2

 もともと「ロリータ」とは、アメリカの小説の題名で、登場する少女の愛称。ロリコンという言葉の由来であり、「少女・幼女」を意味するのだそうだ。近年、日本発祥の「ロリータファッション」が話題になっているらしいが、どう見ても税金を使った事業で「タイアップ」する必要性は感じられない。

 『日本ロリータ協会』なるものをネット上で検索してみたところ、会長さんは千葉県出身のギャル系雑誌のモデル。同協会は、彼女が2013年に福岡市で立ち上げた任意団体だった。ここでもタレント利用。一般市民の暮らしとは何の関係もない話だ。

 このロリータ企画はどうなるのか――所管課に確認したところ、現在検討中なのだという。思わず“正気ですか”と言いたくなった。福岡市は、いつからこんな低レベルな自治体に成り下がったのだろう……。

税金を食いつぶす「ロリータ市政」
 提案書を作成したBBDO J WESTは、公費支出をともなう事業について、“勘違い”しているとしか思えない。下も提案書のページだが、仮想行政区であるカワイイ区を《見える化》して、《次ターゲットの開拓》《ファン層の拡大》を図ると書いてある。まるで芸能タレントの売り出し企画書だ。

BBDO J WESTが提出した提案書 3

 福岡市に必要なのは、地に足の着いたシティセールスであり、タレントの発掘でも人気取りでもない。なにより税金を使う事業であることを無視したとしか思えない提案内容には、一市民として怒りを感じてしまった。子どもの遊びに1,000万円もの税金を投じる必然性はあるまい。

 ちなみに、カワイイ区の登録区民は、電通からBBDO J WESTに運用事業者が替わった後も大して増えておらず、4万人弱のまま。提案書に謳った《ファン層の拡大》は、ままならなかったようだ。

 この程度の企画を出した業者を選んだ市の選定委員の常識も疑われる。事業者であるBBDO J WESTは、市長の友人で市顧問を務める後山泰一氏と昵懇の間柄。あまりにひどい怠慢業務と、お粗末極まりない提案内容がまかり通った理由がそこにあるとすれば、幼稚としか表現のしようがない。カワイイ区の事業化を決めたのは高島市長。「ロリータ市政」では福岡市の未来は拓けない。



【関連記事】
ワンショット
 ガラスの向こうに積み上げられた洋書。オシャレな入り口の奥...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲