福岡市の顧問を務めている会社社長・後山泰一氏が、3月いっぱいで退任するという。
後山氏をめぐっては昨年、HUNTERの調べで、同氏が市発注業務委託の業者選定に選定委員もしくは選考委員として関わったことが判明。その大半が、後山氏の同業者を対象とした業者選定だったことや、懇意にしている企業が数回にわたって業務を受注していたことが分かっている。
市は疑惑の選定にだんまりを決め込んだが、後山氏の立場をわきまえぬ言動はその後もつづき、様々な問題を生じさせていた。
3年間を福岡市の広報戦略アドバイザーとして活躍した後山氏。市長の友人だけあって、昨年秋に福岡市内のホテル(右の写真)で開かれた自身の結婚披露宴には錚々たる顔ぶれを集め、威勢を見せつけていた。
同業者の選定に関与
後山氏が選考もしくは選定委員として関わった業者選定は10件。その件名と契約日、契約金額は次の通りだった。
①「福岡市本庁舎1階ロビー改装工事設計業務委託」
契約日:平成23年10月3日
契約金額:4,893,000円
②「電子掲示板コンテンツ整備等業務委託」
契約日:平成23年10月11日
契約金額:8,570,100円
③「飲酒運転撲滅キャンペーン業務委託」
契約日:平成23年11月22日
契約金額:14,990,508円
④「テレビを活用した広報業務委託」
契約日:平成24年7月1日
契約金額:13,041,000円
⑤「アイランドシティのPR委託」(注:2社を選定)
契約日:平成24年10月18日
契約金額:3,150,000円、2,152,500円
⑥「飲酒運転撲滅・自転車安全利用推進業務委託」
契約日:平成24年11月14日
契約金額:24,999,999円
⑦「戦略的広報に関する調査業務委託」
契約日:平成24年12月14日
契約金額:5,964,000円
⑧「歴史資源とさくらまつりを活かした舞鶴公園の広報・集客事業業務委託」
契約日:平成25年1月31日
契約金額:9,999,990円
⑨「自転車安全利用条例の施行に伴う広報啓発業務委託」
契約日:平成25年2月25日
契約金額:5,461,690円
⑩「タイアップ紙面による都市イメージPR事業」(注:3社を選定)
契約日:平成25年2月1日
契約金額:1,890,000円、1,995,000円、1,980,000円
「福岡市本庁舎1階ロビー改装工事設計業務委託」以外は、後山氏が経営する会社の業務と重なる。つまり、大半は同業者を対象とした選定。不適切であることは言うまでもない。このうち、次の3件では、後山氏と密接な関係を持つ福岡市中央区の外資系広告代理店が選定されていた。
「電子掲示板コンテンツ整備等業務委託」
「飲酒運転撲滅キャンペーン業務委託」
「自転車安全利用条例の施行に伴う広報啓発業務委託」
仕事上の付き合いを有する企業が応募した業者選定である以上、利害関係者である後山氏が選定委員を務めるのは極めて不適切。選定から外れるのが当然だったはずだが、3回の選定で、後山氏は一度も委員を辞退していなかった。この段階で業者選定の公平・公正が崩れていた。
後山氏と外資系広告代理店は仕事上の関係が続いており、「接触」は否定できない。問題の3件の業務委託に関する業者選定の過程で、評価方法や予算についての情報漏えいはなかったのかが厳しく問われるべき事態だったが、市は沈黙を守り、後山氏はその後も問題発言や、別の情報漏えいを繰り返していた。
結婚披露宴に驚きの顔ぶれ
後山氏の結婚披露宴は昨年11月。福岡市内のホテルに300人を超える招待客を集めていたが、驚くのはその顔ぶれ。高島市長をはじめ麻生渡前福岡県知事、井上貴博衆院議員(自民・福岡1区)、中村明彦県議など県政界の実力者がズラリ。さらに、RKBやTNCといった放送局の幹部の名前も……。市役所からは、3名の副市長以下17名が、県庁からも幹部職員ら6名が出席していた。福岡市議の出席は3名。福田衛(自民)、飯盛利康(自民)、橋田和義(無所属)といった若手組。北九州市議会からも三原征彦議長(三原朝彦衆院議員の兄)が参加していた。政界関係者は、いずれも高島市長との関係が取りざたされる面々だ。
このほか、豪邸の持ち主としてテレビで見かけることが多い「ストーンマーケット」の社長や、福岡を代表する企業に成長した「新日本製薬」の代表者らも出席しており、後山氏の華麗な人脈がうかがい知れる。
問題は、後山氏が業者選定に関わった業務委託で、市の仕事を受注した福岡市中央区の外資系広告代理店から、取締役ら4名が出席していること。同社の市との業務委託契約3件に、後山氏が関与したことは前述した通り。まるで両者の関係を誇示したかのような格好となっていた。業者選定に問題はなかったのか――?なぜ後山氏の暴走を止められなかったのか――?改めて高島市政の在り方が問われている。