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ほとぼり冷めた鹿児島県知事 傲慢行政に逆戻り
松陽台県営住宅 住民無視して事業強行

2014年3月 4日 08:30

鹿県県庁 昨年、知事に対するものとしては50年間で2例目となるリコール(解職請求)を起された伊藤祐一郎鹿児島県知事が、ほとぼりが冷めたとみたのか、再び傲慢な姿勢を露わにし始めた。
 知事は、川内原発再稼働に前向きな姿勢をみせる一方、リコールの際にも問題視された鹿児島市松陽台町での「県営住宅増設」を、住民の意思を無視して進める構え。先月24日、県は事業推進の意思を紙切れ1枚で住民に通知していた。
(写真は鹿児島県庁)

ムダな県営住宅―「紙切れ1枚」で事業開始
「ガーデンヒルズ松陽台」の住民らに配布された文書 右は、先月24日に鹿児島市松陽台町にある「ガーデンヒルズ松陽台」の住民らに配布された文書。県住宅政策室が作成したものだ。

 懸案となっている県営住宅の1期分として36戸を建設することと、さして望まれてもいない「集会所」の建設に向けて開催してきたワークショップを打ち切ることを明記している。

 「配布」といっても県職員が説明に回ったというわけではない。各戸のポストに投げ込まれただけだ。県営住宅増設計画の見直しを求めて要望や陳情を繰り返してきた地元住民に対し、反対意見は踏み潰して進むという県側の姿勢を鮮明にしたもの。伊藤県政らしい傲慢なやり方と言えよう。リコールの嵐が過ぎ去ったとたん、知事が再び県民無視の姿勢を露わにし始めた証左でもある。

 松陽台町にある「ガーデンヒルズ松陽台」では、もともと県住宅供給公社が約11haの予定地に戸建用地470区画を販売する計画だった。しかし、170区画程度(平成23年2月までの実績)を売却したところで、方針が大きく変えられる。

チラシ 平成23年3月、知事は「ガーデンヒルズ松陽台」について、唐突に計画変更を発表。県未分譲の戸建て用地約6ヘクタール、商業施設用地約5ヘクタールの全てを県が住宅供給公社から買い取り、390戸の県営住宅を移転増設すると言い出した。「最高の住環境」を謳い文句に進められていた街づくりが、住民に何の相談もなく放棄されたのである。もちろん、松陽台周辺で、県営住宅建設への要望があったわけではない。小学校は一駅先。歩いて行けるスーパーも、コンビニもない。はっきり言って、所得の少ない世帯にとっては「不便」な地域なのだ。
 
 県は、県営住宅の建設戸数を330戸に減じたりするなど修正を加えたものの、松陽台の住民は納得しなかった。県が保障した“変わらぬ環境”を信じ、終の棲家を買い求めた住民が、県住宅供給公社の赤字補填を目的とした県の一方的な計画変更を認めるはずもない。同年4月には、戸建て住宅世帯の86%が、県に計画への反対署名にを提出。6月には県知事、県議会宛に反対陳情を提出するなど、計画撤回に向けて、地域をあげての運動を続け、昨年の知事リコールでは、失政の一つとして明記される事態となっていた。

無視された住民自治 
 問題は、配布文書に「C地区」と記されたエリアの土地を、県がいつ住宅供給公社から取得していたか。さらには、3月から始めるとしている住宅建設の予算は、どの時点で計上されたのかという2点だ。HUNTERの記者はもちろんだが、これまで、地元住民さえC地区の土地売買について聞かされていないのだ。3日、事業を所管する鹿児島県住宅政策室に話を聞いた。

 ―― 松陽台のC地区に36戸を建設するというが、公式に発表したのか?
 県 していない。

 ―― 県は、以前にC地区とは別の3つのエリアを公社から買い取っている。配布文書にある太線で囲んだ場所のことだが、そこは県営住宅建設を目的としていたはずだ。何故先行して購入した土地を放置して、C地区に住宅を建てるのか?
 県 デザインとか……。えーっと、計画としては……。ちょっと、その、お待ちください。

・・・・・(数秒間、電話の向こうで話す声)・・・・・
「何故、先に買った土地を後に回すのかって聞いているが……」
・・・・・(さらに数秒後)・・・・・

 県 後ほどお電話してよろしいですか。
―― いや、それはおかしい。担当職員がまともに回答できないことをやっているのか?
 県 ……。

―― それでは聞くが、C地区の土地は、いつ公社から取得したものか?
 県 平成24年度末ですね。

―― 平成24年度のいつか?
 県 平成25年3月になります。

―― それでは、23年度の段階で予算を計上していたのか?
 県 方針は決っておりましたから。

―― おかしい。その頃は、地元との協議もなかばだったはずだ。しかも鹿児島市が都市計画審議会で計画変更を認めたのは昨年の1月末だ。市の都市計画変更が認められるかどうか分からない時点で、予算を計上していたのか?
 県 県営住宅は造るということに決っていたので。

―― 筋が通らない。都市計画は鹿児島市が決めることだ。計画変更が認められてから予算化するのが順序ではないか。都市計画変更を認めないよう求める陳情も出されていたはずだ。なぜ、鹿児島県は住民を無視して事を進めるのか?
 県 ……。

―― 事業を進めるにあたって、紙切れ1枚を投げ込んで、説明責任を果たしたことになるのか?
 県 住民の方は、(県営住宅増設の)白紙撤回を求めているので、仕方がないでしょう。

 呆れてモノが言えない。真摯に住民と向き合う気など、はなからないということだ。ただ、このやりとりで分かったことがある。C地区で県が取得予定としているのは44,000㎡。このうち四分の一にあたる10,303.92㎡を、平成25年3月末に県住宅供給公社から買い取っていたという。不可解なことに、この件についての公式発表は、一切なされていない。

 5億円(県側説明)に上るという住宅建設費を計上したことも、県民には伏せられた状態だったことになる。地元松陽台の町内会にさえ、何の説明もなかったのである。県営住宅増設に反対する動きが続く中、こっそり予算を計上する手法は、住民自治を頭から否定する暴挙である。

「絶対に諦めない」 ― 憤る町内会 
 こうした事態に、地元松陽台の住民は憤りを隠さない。同町の町内会長は次のようにコメントしている。

 伊藤鹿児島県県政の悪質さもここに極まれり。まさにそういうことだと思います。昨年、鹿児島市が戸建て未分譲の「第4期地区」、即ち県が「C地区」と称している所の地区計画変更を認めたとはいえ、その際には「十分に地域住民に説明し、理解を得るように」との付帯決議があったはずです。しかしながら、昨年5月と8月、県側が一方的に、県営住宅建設の免罪符として、不要な小規模集会所の建設のためのワークショップを開いて以来、松陽台の住民には何の説明も相談もありませんでした。それが突然、2月24日に「3月から10月にかけて1期36戸の建設工事を行なう」とチラシが郵便受けに投げ込まれてきたのです。集会所の件については都合よく県営住宅住民の言葉を引用しつつ、戸建て住民の声には一切耳を傾ける気がないのです。

 これまで幾度となく、署名、陳情、公開質問状を提出するなど、松陽台の住民は声を上げてきました。県民の声を黙殺し、独断専行で県政を進めてきたからこそ、昨年には50年で2例目となる県知事リコールの運動が起きたのです。確かに上海研修、県総合体育館建設が着火点でしたが、住民が強く反対する、事業試算ゼロの公共事業である「松陽台県営住宅増設問題」も、その時の理由の一つだったはずです。しかし、ほとぼり冷めれば、お構いなしということなのでしょう。

 松陽台をめぐる状況は、計画変更の発表のあった3年前と何ら変わっていません。小学校の児童数増加も、JR上伊集院駅の混雑も、団地内に商業施設、避難所がないという状況も全て先送りされたまま、見切り発車の暴挙が行なわれようとしています。

 日本が民主主義国家であるのならば、このような首長の暴挙・暴走が許されていいはずがありません。未来の希望溢れる新しい町として、自ら宅地販売をしておきながら、自分たちの勝手で大きな変更を一方的に加え、宅地購入者である住民の意向などお構いなしとは、まさに鹿児島県政の程度の低さを示すものと言っても過言ではありません。

 第4期地区(県はC地区と呼ぶ)土地の購入については、全く知りませんでした。土地の購入もしていないのに、どうして3月から県営住宅建設着工などと言うのだろうと不思議に思っていたところでした。それだけに、私たちの知らぬ間に、土地を買っていたと聞いて、怒りを禁じえません。町内の他の役員さんにも聞いてみましたが、県が公社の土地を買ったことについて、噂も含め、全く聞いたことはないということでした。ある役員さんは、自身が行った情報開示請求で、団地中心部の土地が、計画変更の発表前に購入されていたことはご存知でしたが、以降の県による土地の購入については一切知らされていないとのことでした。誰も知らされていなかったということです。

 今から3年前、県営住宅増設の発表よりも前に、住民には何の相談も連絡もないまま、団地中心部の土地3区画を全て県が購入していたことが発覚しました。心から怒りを覚えたものです。それ以来、私たち松陽台町内会は、県や市に対して、反対署名、反対陳情、公開質問状を出して、住民の総意として白紙撤回の要求をしてきました。その度ごとに、県は「まだ決まっていない」と明言していたのです。住民の思いををあざ笑うかのように、水面下で着々と事を運んでいたわけですね。

 住民自治・民主主義という言葉を否定する所業としか思えません。ここまでひどい状態の鹿児島県がこれまであったでしょうか。最悪です。職務に忠実とは言え、良心の呵責すら覚えない県職員の横暴には、怒りを通り越して、人間として哀れに思えるほどです。いずれ、彼らは今自分のしていることを恥じ、後悔する時が来るでしょう。私たちは絶対に諦めません。広く、良識ある市民と連動し、私たちの置かれている現状を知らしめ、事態の打開を図っていきます。

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 伊藤知事は、住民の声を無視し、業者を喜ばす事業ばかりを進めてきた。松陽台の県営住宅増設、薩摩川内市の産業廃棄物最終処分場「エコパークかごしま」――いずれも建設業界に巨額な税金をばら撒く愚行だ。タチが悪いのは、どの事業においても、まともな事業収支さえ存在していないこと。県民の話は聞かないが、“ツケは回す”というとんでもない首長なのだ。リコールの発端となった上海研修や体育館建設は、その延長線上にあった話でしかない。一貫しているのは、県民の声など歯牙にもかけないという姿勢である。だが、この県政トップはやり過ぎた。
  今週、HUNTERは伊藤知事に関するある疑惑について報じる予定だ。



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