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破たんした保育園移転計画(福岡市)
工期遅れ、避難経路消滅、定員割れ・・・とどめは「保育士不在」

2014年2月14日 09:05

 高島宗一郎福岡市長が風俗街への移転を強行した認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の入園児募集で、市が昼間の通常保育を希望する保護者に対し、定員割れ状態の「夜間保育」枠での入園を案内していたことが明るみに出た(⇒「移転の中央保育園 入園者数偽装に走った福岡市」 。
 市がルールを無視して暴走する理由は、ひとつしかない。市民に、13億円もの不必要な公費支出を押し付けた高島市長の失政を隠すためだ。しかし、同園の移転計画は、あらゆる点で破たんしており、これ以上市民を騙せる状況ではなくなっている。
(写真は、新中央保育園の工事現場)

数合わせの結果「定員割れ」
 中央保育園の移転に伴い、同園の定員150名は300名に増えることになっている。150名もの待機児童が救える計算だったが、事はそう単純ではなかった。

 保護者のニーズが高いのは0歳、1歳、2歳児の保育。しかし、新中央保育園では、0~2歳児クラスの定員を合わせて110名、ニーズが低い3~5歳児クラスの定員を145名に設定してしまった。

 このため、1次募集で0~2歳児クラスが定員を50名あまりもオーバーしたのに対し、3~5歳児クラスは112名しか集っておらず、定員割れの状態。計画の杜撰さを露呈した。

 新施設の目玉だったはずの「夜間保育」は定員45名。これに対し、入園希望は15名というありさまだ。あわてた福岡市が、4時間の「延長保育」という抜け道を利用して夜間枠を埋めにかかったというのが昨日報じた記事の内容である。抜け道を通る前に、計画自体の間が「ぬけていた」ということだ。

 移転計画を作成する過程では、実情と相反する年齢ごとの定員設定について、現場の保育士たちから強い異論が出ていたという。それが何故ニーズの少ない3~5歳クラスの定員を多くする計画になったのか―中央保育園側に聞いたところ、「福岡市の強い指導」があったことを認めている。責任者は「市長」なのだ。

工事の遅れで避難経路がなくなる
 下は、前面道路から撮影した新中央保育園の入り口から奥の「園庭」にかけての写真である。これが開園後の「通路」部分なのだが、ご覧のようにたった1台の工事車両が、幅を利かせる状況だ。

1台の工事車両が幅を利かせる状況

 新たに整備される保育園は、新「中央保育園」と「第2中央保育園」の二つに分かれるが、4月の開園に間に合うのは新「中央保育園」のみ。「第2中央保育園」の完成は遅れ、開園は6月が予定されている。この間、写真のような工事車両が出入りするため、園児たちの通行域は、園舎側(写真ではシートで覆われている)のわずかなスペースに限られる。大人2人が行き交うことのできるギリギリの幅しかない。

 じつは、そのわずかなスペースこそが、災害時の「避難経路」なのだという。定員の半分程度とはいえ、150名あまりの園児と数十名の保育士らに、どうやって混乱なく避難しろというのだろう。数ヶ月間とはいえ、子どもたちの安全が担保されない状態になるのは確実だ。しかし、市も運営法人も、2次募集の段階となった現在まで、この件に関する説明を一切行っていない。無責任行政のツケが、子どもに回ってきているのである。

災害時避難計画の破たん
 この新保育園、災害時避難については、さらに大きな問題を抱えている。次の写真は、別の角度から写した工事現場の1枚だが、工事中の園舎の前に拡がるスペースが「園庭」だ。

園庭

 災害発生時には、まずこの園庭に子どもたちを集め、消防の到着を待って避難することになっている。しかし、この面積に300人の園児と数十名の保育士が整然と一次避難できるのか――設計図面を見た同園の関係者からは「とても無理」という声が上がっていたのだが、現実に工事が進むに従って、その懸念が現実味を帯び始めている。“百聞は一見にしかず”という。現場をみれば、災害時避難の計画が初めから破たんしていることが歴然となる。

保育士がいない!?
 ルールを無視して「定員」を埋めようとする福岡市だが、入園児を増やしても、中央保育園がすべての子どもを預かることは出来そうにない。肝心の「保育士」の人数が揃っていないからだ。これは認可保育所にとって、致命的な事態ともいえる。

 昨年12月に就任した中央保育園の園長は、不祥事でガタガタになった保育園を立て直した実績を持つ立派な人物だ。その新園長でさえ、保育士が集らない現状に「打つ手がない」と嘆く。高い給与で新規の保育士を募集すれば、すべての保育士の給与を上げざるを得なくなり、それは不可能なのだという。

 「保育士不在」では保育は成り立たない。しかし、市は保育士不在の状況を知っていながら、中央保育園の定員を埋めることしか考えておらず、入園希望者に対し、実情についての説明も行っていない。現場の保育士や在園児保護者から、4月以降の保育体制を不安視する声が上がっているのは言うまでもない。

 ムダな土地を購入し、保育園側に300という身の丈を超えた定員を押し付けたのは高島市長だ。土地代9億円、施設整備補助に3億5,000万円、工期遅れの追加に3,500万円・・・・・。合計13億円あまりの公費をかけて、この体たらく。計画全体が破たんしていることを、市長は率直に認め、市民に謝罪すべきであろう。

 ちなみに、「夜間保育」の入園者数偽装に走った福岡市は、13日のHUNTERの報道を受けて、抜け道利用の勧誘を止めることにしたという。おそらく、「区役所がやったこと」で終わると見たが・・・・。



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