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都知事選・舛添氏勝利で注目される「脱原発の民意」

2014年2月12日 09:20

東京都庁 最大27センチの積雪を記録し、45年ぶりの大雪となった東京都。大荒れの天気から一夜明けた9日、東京都知事選の投・開票が行なわれた。投票率は46.14%。前回知事選から16.46ポイントも低い結果となった。都知事選としては、過去3番目に低い投票率である。積雪の影響もあったのだろうが、盛り上がりに欠けた選挙戦だったことは否めない。午後8時過ぎ、NHKが自民・公明推薦の舛添要一氏に当確を打ち、首都決戦は幕を閉じた。
 投票率の低さが、固い組織票に支えられた舛添陣営有利に働いたのは間違いない。ただ、「脱原発票が割れた」と評される宇都宮・細川両氏の票を足すと193万票。この意味は大きい。

勝敗の分かれ目
舛添要一 舛添氏は当選のコメントで「他の候補より都市部以外の地域をしっかりまわり、いちばん多くの有権者に対して政策を訴え続けてきた」ことを勝因に挙げた。

 一方、「脱原発」のワンイシュー選挙に持ち込もうとした細川護熙氏は、敗因について「準備期間が短かったことに加え、今回は脱原発が争点にならなかった。むしろ、争点にさせまいという力が働いたことなどが要因だ」と振り返った。

 たしかに、舛添氏が活動を注力した三多摩地域は、都内の約3分の1に当たる400万人以上の人口。選挙期間中、同氏の応援には多くの首長が集い、保守層の厚さを感じさせた。こうした票が見込めない候補が、厳しい戦いを迫られるのは確かだ。

 新聞各紙はどう報じたか。産経・読売はおおむね「舛添氏は過去の行政経験もあり、安定感を評価された」「細川氏は脱原発だけでは都民の共感を得られず、争点化できなかった」とする。

細川小泉連合 一方、朝日・毎日・東京は「舛添氏は手堅い組織戦と、『私も脱原発』として一定の脱原発票を獲得した」「細川氏は脱原発の争点化を避けられたが、論戦ができた意義はある」とする。

 細川陣営には問題があった。もともと選挙対策本部の指揮を執っていた元衆院議員の馬渡龍治事務局長らが、選挙開始直後に解任。細川氏を以前支持していた旧日本新党系グループが入ってきたことで、お家騒動がぼっ発し、足並みが乱れたという話が出回った。形の上で「選挙になっていない」(全国紙記者)状態だった。自民・公明の強固な組織に支えられた舛添氏と、見切り発車的に動きだした細川氏とでは、基本的なところで差がついていたと言える。争点云々以前のところに問題があったと見て差し支えあるまい。

民意無視して後退する脱原発政策
 ところで、今回の東京都知事選挙は、本当に民意が反映されていたといえるだろうか。NHKの出口調査によれば、「最も重視した政策は何か」という質問に対し、「景気・雇用対策」と答えた人が最も多く31%、次いで「原発などエネルギー政策」が22%だったという。他社の出口調査では、「福祉」への関心がもっとも高かったという結果が出ている。順番はさておき、原発が争点のひとつになったのは疑う余地がない。

 当初、エネルギー政策に関する都民の関心はそれほど高くはなかった。細川・小泉の元首相コンビが「脱原発」を訴えなければ、争点化することさえなかっただろう。告示前、自民・公明は争点化を避けていたが、細川・小泉連合の登場でようやく話題になった。結果は、原発容認の枡添氏圧勝。だが、各種調査で、7割近くの有権者が原発依存については消極的な意見だったことが分かっている。民意と政策との大きなねじれを感じる。

 東京都のエネルギー政策はどうなるのか。石原、猪瀬都政時代は「脱東電」を目指し、新電力の導入や再生可能エネルギーの普及を都のエネルギー政策に盛り込んでいた。一方で、猪瀬氏は「原発については国がやること」として、政策には明記しなかった。

 そうしたなか、与党は新しいエネルギー基本計画において、昨年12月、「原発はベース電源であり再稼働を推進する」ことを明記する方針を固めた。安倍首相は都知事選への影響を恐れ、閣議決定を先延ばししてきたが、2月中にも決定する見通しだ。間違いなく都のエネルギー政策は脱原発において後退局面に向かうだろう。原発に関する民意は無視されかねない。

 都知事選の選挙結果を受けて、原発再稼働を強行する構えの安倍政権。次に来るのは山口・石川両県の知事選だ。山口では建設計画が頓挫したはずの上関原発の是非、石川では志賀原発の再稼働問題が争点になるだろう。現状では両県における自民、公明の組織は固い。二つの知事選で連勝すれば、安倍政権はますます図に乗るだろう。原発をなくすべきだという民意は、今以上に無視される状況となっていく。しかし、国民の半数以上が、原発再稼働に疑念を抱いているのは確か。都知事選の開票結果が、雄弁にそれを語っていることを忘れてはなるまい。

<嵯峨 照雄>



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