政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

鹿児島県知事選挙の本当の争点

2012年6月29日 10:20

 「地方自治は民主主義の学校」と言われる。国政と違って有権者に近い存在である地方自治は、住民の意思がより反映されやすい仕組みになっているからだ。

 そうした意味において、地方自治体のトップを決める選挙が極めて重要であることは言うまでもない。この場合、政策的な争点も大切だが、より重要視されるべきは候補者が"住民自治"の原理・原則を守れる人物か否かを判断することである。

 国民不在の永田町劇場が続く中、鹿児島県知事選挙で激戦が続いている。この選挙で問われているのは何か。改めて問題提起しておきたい。

知事選の構図
 今月21日、九州電力川内原子力発電所(薩摩川内市)の立地県鹿児島で、県知事選挙が告示された。選挙戦は、現職・伊藤祐一郎氏(64)に新人・向原祥隆氏(55)が挑む形だ。
 福島第一原発の事故を受け原発に依存した社会の在り方が問われており、争点のひとつが「川内原発」にあることは間違いない。両候補ともに「脱原発」を唱えるが、伊藤氏は"30年先"、向原氏は"即刻廃炉"と立場を異にする。
 昨年、九州新幹線の全面開業で沸いた同県だが、川内原発の長期運転停止を目の当たりにして、原発頼みの地域経済から脱却できるかどうかの岐路に立たされているのも事実だ。
 両候補の政策についての評価は有権者に委ねるしかないが、忘れてならないのは鹿児島県政の歪みである。

産廃処分場問題で地域崩壊
gennpatu 1864410296.jpg 28日、県が反対の声を無視して建設を強行している薩摩川内市の産業廃棄物処分場「エコパークかごしま」(仮称)について、地元住民らが危険性や脱法的工事の手法を訴える記者会見を開いた。
 同処分場についてはHUNTERでも度々報じてきたが、会見で示された問題点は次のとおりだ。

・処分場予定地周辺は、県の進達を受けた国土交通大臣が平成13年3月及び12月に「砂防指定地」として告示しており、現在も指定は解除されていないこと。
・処分場予定地は巧妙に砂防指定地を避ける形で計画されているが、事実上の砂防指定地と見なされること。
・処分場予定地は、三方を砂防ダムで囲まれた形となっており、危険性が極めて高い場所であること。
新しいイメージ2.JPG・処分場予定地の直上で、すでに土砂崩れが起こっていること。
・処分場工事現場からの排出水を採取し検査機関で調べてもらったところ、高い値の汚染が判明したこと。
・処分場のそばを流れる阿茂瀬川に、公表されていない排水口を隠しており、濁った水を垂れ流していること。(写真は工事現場からの汚水で濁った阿茂瀬川)

 いずれもこれまでの知事や鹿児島県環境整備公社の主張を真っ向から否定するものであり、強い抗議の対象となるのは当然だ。知事選の最中に県に対する抗議の記者会見を開かねばならないほど、現職の伊藤氏は強権的に処分場建設工事を進めてきた。

gennpatu 1864410297.jpg 建設工事着工までの過程では、説明を求める地元住民らの声を無視したばかりか、着工に反対する町内会のお年寄りを、県の職員数百人を動員して強引に排除したのである。(写真は昨年10月の処分場工事現場)

 さらに、処分場建設への同意を取り付けるため、わずかな世帯に3億円ものカネをばら撒いた(複数年で実施)結果、地元自治会が分裂し、地域の絆をズタズタに引き裂いている。
 巨額な原発マネーで地元を黙らせ、原発建設を推進してきた国や電力会社と同じ手法。儲かるのがゼネコンと一部の政治家という構図も同じである。

 処分場建設にかかる公費は約100億円だが、他方で民間企業の産廃処分場計画を握りつぶしていたことも明らかとなっており、計画の胡散臭さは拭いようもない。

 処分場計画の推進や用地の選定といった政策決定過程を示す公文書は不存在で、県関係者からは「知事の判断」との言葉が繰り返されてきた。つまり、住民の意思などお構いないに、県政トップの鶴の一声で物事が決められているということだ。

 強権的手法の例は、まだある。

県営住宅問題
gennpatu 1864410301.jpg 鹿児島県は、鹿児島市松陽台に数百戸の県営住宅を建設する方針を表明しているが、こちらも地元住民らが反対運動を続けている。
 住民らの主張はシンプルで、事業主である県住宅供給公社がこれまで話してきた「商業施設を誘致する」、「戸建て住宅でまちづくりを行っていく」といった約束を守れというものだった。しかし、県側は誠意ある対応を怠り、「県営住宅ありき」でこうした声を無視している。

 数日前、県土木部に対し地元自治会が出した質問書に回答FAXが送られてきた。質問は、商業施設を誘致するとした分譲用地販売時の宣伝文句が虚偽で、コンプライアンス違反ではないかと問うたものだったが、それに対する公社の回答が下の文書だ(赤いアンダーラインはHUNTER)。

gennpatu 1864410294.jpg

 「断定的な言い方をしたという事実はなかったと聞いています」。人をバカにしたようなこの言いぐさが、鹿児島県政の現在の姿を如実に示している。頭から県民を下に見ているのである。 

 地元松陽台の自治会役員はこう話す。「質問には答えない。住民意見の数字は捏造する。知事は説明責任を果さない。このどこが民主主義なんですか。公社の赤字を隠すために県が土地を購入し、計画にはなかった県営住宅を作ろうとしているだけ。失政のツケを住民や県民に押し付ける知事の手法に、断固として抗議したい」。

 松陽台や前述の処分場問題が示しているように、現在の鹿児島県政が歪んでいるのは疑う余地がない。地元住民の声を圧殺する県政が、まともであるはずがないのだ。

 「民主主義の学校」と言われる地方自治の現場で、主役であるはずの住民がないがしろにされる現実。鹿児島県民はこの県政をどのように見ているのだろうか。
 争点は政策だけではないと思うが・・・。



【関連記事】
ワンショット
 ガラスの向こうに積み上げられた洋書。オシャレな入り口の奥...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲