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鹿児島・松陽台 ムダな県営住宅増設と100万円プレゼント作戦

2014年2月19日 08:40

 鹿児島県が現状を無視して進める鹿児島市松陽台の県営住宅増設。本来県住宅供給公社が戸建分譲用地470区画を販売する予定だったが、計画は大幅に変更され、県営住宅を大増設することに――。
 結局、販売される戸建用地は284区画となったが、唐突な県営住宅増設に地元から反対運動が起こり、売れ残りが目立つ形となっている。
 問題のある場所に、終の棲家を構える気など起きまい。困った公社は、なりふり構わぬ販売手法に打って出るしかなかったらしく、「100万円プレゼント作戦」を行っていた。

住民無視して県営住宅
 問題の住宅増設計画は、平成15年から鹿児島県住宅供給公社が販売している分譲住宅地「ガーデンヒルズ松陽台」の土地を鹿児島県が取得し、新たに県営住宅330戸を建設するというもの。

  もともと、約11haの予定地に戸建用地470区画を販売する計画だったが、170区画程度(平成23年2月までの実績)を売却したところで、方針を大きく変える。

 商業施設誘致に向けた「店舗等用地」などと説明してきた3区画の土地に加え、ガーデンヒルズ松陽台で最大の面積を占める戸建用区画約5.6 ha(下の図面、赤いラインで囲んだ部分)を、すべて「県営住宅」にすると伊藤祐一郎知事が発表したのだ。戸建住宅街での未来像を描いてきた住民には、何の相談もなかったという。騙された形の松陽台町の住民は、県営住宅増設を白紙に戻すよう運動を続けてきたが、県や鹿児島市はこうした声を無視して強引に計画を進めている。

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事業収支の試算もなし
 唐突な方針変更だっただけに、県の計画は杜撰極まりない。 
 HUNTERは2013年2月、松陽台における県営住宅増設が事業として成り立つのかどうかを確認するため、鹿児島県に対し事業試算に関する文書を情報公開請求した。県営住宅建設は県の単独事業だからだ。しかし、開示されたのは平成22年度から24年度にかけて作成された年度ごとの部内の予算説明資料。そこに記されていたのは、県が松陽台の土地を、住宅供給公社から買い上げるにあたっての予算額だけだった。

 鹿児島県建築課住宅政策室に確認を求めたところ、事業収支の試算は一切行っていないと明言。土地代金だけが明確になっているだけで、総事業費や維持費、さらには賃料の予測さえなかった。つまりは、赤字になるのか黒字になるのかまるで分からないまま、計画だけが進んでいるということだ。事業試算のない公共事業ほど危ないものはない。将来、増設された県営住宅が、県民のお荷物になることは必定なのである。

売れない戸建用地に100万円プレゼント作戦
 松陽台の県営住宅増設問題は、先の伊藤祐一郎知事へのリーコール(解職請求)でも、失政のひとつに数えられ、多くの県民が知るところとなった。これで販売中だった戸建用地の売れ行きが鈍ったのは言うまでもあるまい。周りが県営住宅ばかりになる地域だけに、土地を買うことを躊躇するのはあたり前だろう。

 街の熟成には時間がかかる。戸建用地をじっくり販売していればよかったが、供給公社には財政的余裕がなかったらしい。県が赤字の尻拭いに税金を投入してムダな県営住宅を造らねばならないほど、公社の財務状況が追い詰められたという見方も成り立つ。松陽台が県政の課題として取り上げられるたびに、土地の評価は下がっていると言うべきだ。

県住宅供給公社・松陽台販促チラシ①(140129).JPG 松陽台にある既存の県営住宅入居者は、入れ替わりが多く、定住する人が少ない傾向にあるという。小学校は鉄道で一駅かかるのが実情で、県や公社が言うような優良な子育て環境とは言い難いし、歩いて行ける範囲にスーパーマーケットなどの商業施設はない。車がなければ、普段の暮らしにも不便が生じる場所なのだ。しかも、騒ぎの渦中にある松陽台となれば、わざわざ終の棲家を建てる人は少ないだろう。

 県住宅供給公社に確認したところ、販売予定の戸建用地は284区画。現在までに売れたのは223区画だという。残り61区画を埋めなければならないが、述べてきた通り、販売は思うに任せない。そこで「100万円プレゼント作戦」というわけだ。右は公社のパンフレットだが、ガーデンヒルズ松陽台を購入すれば、100万円の助成がつくのだという。他の分譲団地には50万円の助成。松陽台はその倍で、いかにここの販売を急いでいるかが分かる。

 県営住宅増設が発表される少し前から、何度か行われたという100万円プレゼント作戦について、公社側は「節目ごとに起爆剤が必要。迷っている人の背中を押す意味で1月から助成を打ち出した」と話しているが、早い時期に自宅を建てた松陽台の住民は、大盤振る舞いに疑問を呈す。

 「100万円の助成だなんて、ふざけています。すでに分譲地を購入した私たち住民は、心外というしかない。
 伊藤知事は、公社が約束した商業施設の誘致も、街の未来像も勝手に消し去って、一方的に県営住宅を増設すると言い出しました。計画発表から丸3年が経とうとしています。
 住民が異議を唱え、幾度となく計画の撤回を要求しても、公権力の圧力に押しつぶされてきました。その度に、住民無視の鹿児島県の異常な姿が露わとなっています。
 ガーデンヒルズ松陽台が販売されるようになって、まだ数年しか経っていませんが、知事はこれから新しい街ができようとしているまさにその時に、街をずたずたに斬り裂こうとしているのです。
 普通に宅地販売をし続けていれば、宅地はもっと売れたはずです。しかし、JRで一駅の小学校の生徒数増加、宅地内に商業施設も避難所もない状況、混雑を増すJR上伊集院駅の問題……。こうした課題について、県は各機関と協議し、検討するとして、先送りしてきました。 そこに県営住宅大増設。戸建用地が売れるはずがありません。公社は、なりふり構わず100万円プレゼント作戦をやっているのでしょうが、あまりに住民をバカにした振る舞いです」(松陽台在住・40代男性)

 人が住むかどうかもわからぬ県営住宅を、事業試算もなく、税金で大増設する伊藤県政。人口減少や財政状況を考えても異常としか言いようがない。



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