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原発推進と「亡国の輩」
「エネルギー基本計画」の欺瞞

2014年2月28日 09:25

20130312_h01-01t-thumb-280x240-6629.jpg 25日、政府は原子力関係閣僚会議を開き、欺瞞に満ちた「エネルギー基本計画」の政府案を決定した。中長期的なエネルギー政策のなかで、原発を重要な「ベースロード電源(=発電コストが低廉で昼夜を問わず安定的に稼働できる電源)」と位置づけ、原子力規制委員会の基準に適合した場合は「再稼働を進める」と明記。原発推進の姿勢を改めて示した形だ。
 原子力ムラの人間たちは、「日本は世界一の原発技術と安全基準を持っている。コストも安い」と言う。彼らの中では、福島第一原発の事故が引き起こした災厄と被災地住民の塗炭の苦しみは、すでに忘却の彼方なのである。
 原発ゼロを訴え続ける、あるエネルギー政策研究者が「もう一度原発事故が起これば、日本は取り返しがつかない状況になる。原発再稼働を訴える人々は『亡国の輩』以外の何者でもない」というのは、言い得て妙だ。それにしても、「亡国の輩」の手法は姑息に過ぎる。

経産省燃料費試算のまやかし
 同日、経産省は政府案に対するパブリックコメント募集の結果<http://www.enecho.meti.go.jp/topics/kihonkeikaku/140225_2.pdf>を発表。募集は昨年12月6日から今年1月6日にかけて行われ、1万8,663件のコメントが寄せられている。国民の関心が高いテーマだったことが分かる。

 原発に関する反対・賛成、それぞれに主張がある。「原発が無くても十分に電力は供給されている」「核燃料サイクルはすでに破たんしている」―原発ゼロを訴える人々は、こう口を揃える。対する原発推進派は、「電力は化石燃料でまかなっているが、価格が高騰して消費者への負担が大き過ぎる」と反論する。しかし、この原発推進派の意見が胡散臭いものであることは確かだ。

 前出のエネルギー政策研究者はこう話す。「経産省は、2013年度に海外へ流出する輸入燃料費を原発使用時と比べて3兆6,000億円増大すると試算しているが、およそ半分はアベノミクスの名の下に進められた円安が原因。原発停止で上がったのはせいぜい1兆5,000億円程度だ。震災前に比べて、1兆円の節電が可能なことが証明されており、これを深堀して再生可能エネルギーを普及させれば、燃料費の増加は減らせるはず」と語る。

 じつは、官僚の試算根拠に為替動向は考慮されておらず、「原発が稼働していないから燃料費が高い」という論は、まやかしに近い。

“霞が関の文法”で原発推進
 政府案ができるまでに、細かな文言の表現については紆余曲折があった。昨年12月に経産省の審議会がまとめた原案では、原発は「基盤となる重要なベース電源」。これには、与党内からも“あまりにも原発活用を強調しすぎている”と反発が出たため、霞が関特有のことば遊びが始まる。

 「基盤となる」を取り、「ベース電源」を「ベースロード電源」と変更。さらに、定義のなかに「低廉」という表現を入れたのである。ここで巧みに「原発=低廉」を結び付けている。転んでもタダでは起きない官僚のしたたかさ、いやらしさが滲み出ている。

 他の記述でも、同様の手法がまかり通った。原案で「着実に推進」とされていた核燃料サイクルについて、改めて推進を明記したものの、高速増殖炉もんじゅなどで重大事故が相次いでいることから「着実に」の文言を削除。原発依存度についても、原案で「可能な限り低減させる」と言いながら、もう片方で「必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する」と矛盾した表現を同居させている。これは審議会でも問題にされ、政府案では「確保していく規模を見極める」との文言に変わっている。

 言葉じりをうまく捉え、官僚の都合に合わせて表現されるのが“霞が関の文法”。文言の変遷からもうかがえるように、今回のエネルギー基本計画は、是が非でも原発推進を再度「国策」に仕立てようとする経産省と安倍政権が、後退させたように見せつつ、その意思をより鮮明にした結果と言えよう。

都知事選の結果は原発容認ではない
 経産省のパブリックコメントの結果を客観的に見ても、原発推進に反対する意見が多いのは明らかだ。パブコメを受けての政府案ということならば、コメント募集自体がアリバイづくりと捉えられても仕方がない。いったい1万8,663件のなかで、どれくらいの割合で賛否が分かれたのかパーセンテージで出すべきだろう。

 安倍政権は、東京都知事選の結果を受けて「国民は原発再稼働を容認した」と胸を張る。しかし、これは間違いだ。世田谷区に住むある有権者は、脱原発派ながら舛添要一氏に一票を投じた。「あの人にもいろいろと問題はあるのかもしれないが、脱原発だけでなく行政全体を考えたときに“安定感”という点で支持した。ただ、舛添氏も『原発の依存度は減らす』と明言しているから、そこに期待したい」という。筆者は、多くの有権者が、同じような理由で舛添氏を支持したと見る。強引に原発再稼働に走った時、安倍政権の支持率は確実に下がるはずだ。「亡国の輩」の頂点にいるのが、安倍首相であることは言うまでもない。

<嵯峨 照雄>



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