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注目の名護市長選 現地取材(上)
新人陣営は取材拒否

2014年1月16日 09:00

名護市長選 12日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に関する是非を最大の争点にした名護市長選挙が告示された。移設反対の姿勢を貫く現職と、移設推進を訴える新人の一騎打ち。市内では、公選法を度外視した「何でもあり」の激しい選挙戦が展開されている。
 基地移設を進めるため、出馬表明していた前市長に立候補を断念させ、候補を一本化した自民VS自然や沖縄の心を守ろうという草の根の構図だが、選挙結果が国政を揺るがしかねないだけに、全国注視の選挙となった。12日から14日にかけて、現地を取材した。

移設反対、推進で激突
 名護市長選に立候補しているのは、いずれも無所属で、再選を目指す現職の稲嶺進氏(68)=社民、共産、生活、沖縄社大推薦と、新人で前県議の末松文信氏(65)=自民推薦。最大の争点となっているのは、普天間飛行場の同市辺野古への移設の是非。投・開票日は19日。選挙結果が政権の今後に影響を与えるのは必至である。

活気づく現職陣営
現職陣営 告示の翌日、訪れた現職陣営の事務所は、支援者で埋め尽くされた状態。選対幹部が椅子を進めてくれたが、事務所全体が活気に満ちていた。それぞれが、政府が出した辺野古沿岸部の埋め立て申請を「承認」した仲井真弘多知事の公約違反や地元の民意を無視する政府の横暴に厳しい意見を投げかけ、今回の市長選の意義を強調する。事務所の取材を前に、国道上で「選挙に行こう」と呼びかける活動を行なっていた人たちへの取材では、「取材に来てくれたのはあなた方が初めて。嬉しい~」。陣営に暗さがない。暴走する国や知事への怒りは感じるが、隠し事など一切ない、といった雰囲気だった。国のばら撒き策を受けての知事による埋め立て承認、安倍首相の靖国参拝―ともに稲嶺陣営への追い風となっており、市内を取材した限りでは、現職やや有利の感触だった。

「取材拒否」の新人陣営
新人陣営 一方、」新人陣営は、特定秘密保護法を強行採決した自民党が推す候補者陣営らしい対応だった。「取材拒否」である。
 選挙事務所を訪れ、取材であることを告げた途端、事務所内の空気が一変。女性スタッフが、右手をかざして「そこで待って下さい」。対応に出てきた男性は、いきなり「外に出てください」である。呆気にとられながら、事務所の前で選挙取材であることを告げるが、「個別の取材には応じない」と事実上の取材拒否。県政記者クラブの幹事社には情報を流すが、それ以外の取材には応じていないという。“それがおたくの選挙か”と問うが、取り付く島もない。要は都合のいい情報以外は流さないということだ。
 新人候補者とともに街頭演説を行っていた自民党の宮崎政久衆院議員に“取材拒否がまともな選挙といえるのか”と聞いてみたが、「選対に言って下さいよ」。その選対が取材拒否なのだから、困っていると訴えるが「そんな選挙もあるんでしょう」。これが政権党の姿勢なのだろう。こうした陣営から市長が出れば、重要な情報はすべて握りつぶされることになる。
 候補者本人の街頭演説を聴いたが、地元の振興策が中心で、心に触れる言葉は一切なかった。

守られぬルール
 沖縄での選挙取材は初めてだったが、驚かされることばかりだった。公選法が守られていないのである。聞けば告示前から候補者の名前を大書したのぼり旗が林立し、告示後も同じ状態。他県なら、警察から違反行為として旗の使用を禁じる警告が来るところだが、沖縄では黙認状態なのだという。さらに、選挙期間中であるにもかかわらず、候補者や確認団体以外の広報車が走る回るという無法ぶりである。物量戦ということなのだろう、新人候補の名前を入れたのぼり旗が、市内の各所に掲げられていた。関係者の話によれば、米軍占領下の名残で、「何でもあり」の選挙が今も続いているのだそうだ。告示後には、「現金入りの封筒」の話が飛び交うなど、選挙戦は熾烈さを増している。
 見ていて面白いのは確かだが、ルールは守るべきだろう。大手メディアも選挙の帰趨とは別に、事の善悪はきちんと報じるべきだと感じた。



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