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原発と特定秘密保護法
川内原発に隠された「不都合な真実」

2013年12月26日 08:30

せんだう.jpg 安倍首相は何を恐れ、焦っているのか。1年前に議席数でこそ圧勝したものの、6割弱の投票率における自民党得票数は、比例区でわずか27%しかなかったことを安倍内閣も自覚していたのだろう。立ち上がりこそ安全運転を心掛けているかに見えたが、このところの驕り高ぶりは異様だ。特定秘密保護法を無理矢理成立させたかと思えば、原発推進、維持むき出しのエネルギー基本計画を年明け早々にも閣議決定する。暴走する安倍政権の焦りは「原発ゼロ」を掲げる小泉元首相への脅えともとれるが、原発がらみで隠しておきたい事実が存在することを忘れてはならない。
(写真は、九州電力川内原子力発電所)

放棄された「原発ゼロ」
 経産省の審議会「総合資源エネルギー調査会」は12月13日、国の中期的なエネルギー政策の柱となる「エネルギー基本計画」をまとめたが、あ然とするのはかつての自民党そのままに原発を「基盤となる重要なベース電源」にしていること。その結果、原発再稼働は当然ながら核燃サイクルも推進し、最大の難問である核廃棄物の最終処分場も国が候補地を指定し、地元に有無をいわさず押し付ける可能性が高まった。

 今回のエネルギー基本計画最大のポイントは、前政権の「2030年代原発ゼロ」目標を葬り去ったことだ。民主党野田内閣のゼロ目標にも問題はあったが、閣議決定しておけば原発推進・維持に一定の歯止めをかけられた。それを見送ったことにより「原発ゼロ」は念仏でしかなくなったが、今回の基本計画は、改めて原発を重要電源と位置付けた上、原発比率についての将来目標を明示していない。これでは特定秘密法案同様に政権の思惑で拡大、縮小が意のままとなり、ゼロ目標は雲散霧消してしまう。念仏ですらなくなったということだ。

核処分場、国がゴリ押し
 基本計画の危うさはまだある。プルトニウムと高濃度核廃棄物の塊で大事故を起こせば日本が壊滅する青森県六ヶ所村の核燃料サイクル施設、福井県の高速増殖炉「もんじゅ」ともに稼働継続することを謳っている。さらに暴走安倍政権の危うさが見てとれるのが、核燃サイクルが絶対成立しない最大の急所である核廃棄物の最終処分場問題の解決策だ。全国どこにも引き受け手がないことに業を煮やし、政府が適地を調査して指定するという。原発を乱立させてきた手口同様、指定した自治体をカネと権力で抑え込みにかかるのは必至。国のゴリ押しで核処分場が誕生するわけだ。ニュースサイトHUNTERがスクープしてきた鹿児島県南大隅町同様、得体の知れないブローカーたちの暗躍が危惧される。

原発と「不都合な真実」
 安倍内閣がまず急ぐのは何よりも早期の原発再稼働だ。原子力規制委員会が審査中の5電力7原発の再稼働で先陣を切ると見られているのが、四国電力伊方と九州電力川内だが、両者ともにあってはならないところに立地する原発の代表だ。

 瀬戸内海と周防灘の接点に位置する愛媛県の伊方原発が事故を起こせば、中四国と九州一円が被災する。何よりも日本列島を縦断する中央構造線が目前に延びているうえ、南海地震では津波にひと呑みされる。鹿児島県の川内原発の一方は東シナ海だが、一帯には活断層が縦横に走り、陸側には阿蘇山、桜島、霧島の火山帯が控えて大噴火にも襲われる可能性がある。しかし、川内原発最大の問題は原発としての素性と素行の悪さにある。決してそこにあってはならないものなのだ。再稼働に当たっての審査を機にその問題が再浮上すれば、地元のみならず誰しも川内原発の廃炉を叫ぶはずだ。

 九州電力が佐賀県玄海町とともに鹿児島県川内市に原発立地を構想したのは1960年代半ば。設置許可は玄海が75年、川内は77年だが、許可が下りるまでの間に川内で何があったかを規制委が考慮するなら川内原発再稼働はあり得ない。それだけ素性が悪い原発を再稼働させるとすれば、安倍政権の圧力以外の何ものでもなくなる。そこに特定秘密法と原発の問題が絡む。

 原発は地震、津波の天変地異のみならず戦争やテロに弱く、外交・防衛と密接に絡むために原発情報は特定秘密に指定される。秘密法施行後には、原発関連の多くの情報がフタをされるのは必至だ。安倍政権が秘密法の成立、施行を急ぐのは、中国や南北朝鮮の東アジア情勢もさることながら、喫緊の課題である原発とTPPの情報コントロールだ。そんな思惑も国民大多数が支持する小泉氏の「原発ゼロ」には逆らえず、安倍首相が焦り、脅えるのも当然と言えよう。特定秘密で網をかけられる前に川内原発の「不都合な真実」を暴く必要がある。年明けの次稿で、川内原発の問題点を検証する。

<恩田勝亘>

恩田勝亘:プロフィール
昭和18年生まれ。『週刊現代』記者を経て平成19年からフリー。政治・経済から社会問題まで幅広い分野で活躍する一方、脱原発の立場からチェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなど原発にからむ数多くの問題点を報じてきた。

著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)、『福島原発・現場監督の遺言』(講談社)など。

新刊「福島原子力帝国―原子力マフィアは二度嗤う」(七つ森書館)は、全国の書店で販売中。 



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