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鹿児島・傲慢県政の象徴 松陽台県営住宅と薩摩川内産廃処分場

2013年12月 5日 08:30

 50年間で2例目となった知事に対するリコールを起された伊藤祐一郎鹿児島県知事。昨日、リコール回避のため、知事が支援者に圧力をかけていたことを報じたが、権力を盾に県民の自由意志を否定する行為は、断じて許されるものではない。
 県民の声を無視して上海研修や体育館建設を進めたことがリコールの発端だが、知事は、それまでも強権と虚偽が同居する県政運営を続けていた。
 その象徴が、鹿児島市松陽台で計画される県営住宅増設と、薩摩川内市の産業廃棄物最終処分場建設計画である。
 リコールの署名集めが始まって以来、問い合わせが増えた二つの県政課題について、これまでの経過や問題点を整理した。
(写真手前は鹿児島県議会、中央が県庁)

県営住宅増設計画の経過とデータ捏造
gennpatu 1136-thumb-440x319-3118.jpg20120314_h01-01t-thumb-280x240-3159.jpg 平成23年3月、知事は鹿児島市松陽台町で進められていた住宅地分譲「ガーデンヒルズ松陽台」について、唐突に計画変更を発表。未分譲の戸建て用地約6ヘクタール、商業施設用地約5ヘクタールの全てに、390戸の県営住宅を移転増設すると言い出した。「最高の住環境」を謳い文句に、『戸建住宅』の用地として470区画を販売する計画が、放棄された瞬間でもあった。

 寝耳に水の住民が猛反発したのは言うまでもない。県は、県営住宅の建設戸数を330戸に減じたりするなど、修正を加えたものの、とうてい住民が納得できるものではない。県が保障した“変わらぬ環境”を信じ、終の棲家を買い求めた住民が、鹿児島県住宅供給公社の赤字補填を目的とした県の一方的な計画変更を認めるはずはなかった。

 同年4月、戸建て住宅世帯86%が、県に反対署名にを提出。6月には県知事、県議会宛に反対陳情を提出された。伊藤独裁県政が本領を発揮するのはここからだ。住民からの要望など何のその、水面下で反対陳情不採択に向けて動いたのだ。

 まずは9月。事業を所管する県住宅政策室と県住宅供給公社職員が戸建て住民を戸別訪問。聞き取り調査を実施し、住民に対する圧力を強める。自己都合の聞き取り調査に信憑性があるとは思えなかったが、案の定、県が実際には戸別訪問も聞き取り調査もしていない既設県営住宅全160世帯分の「幻の回答」を分母に加え、データを作成したことが判明。「捏造」が発覚する。

 県住宅政策室がまとめた聞き取り調査の結果だが、説明会も聞き取りも行なっていない県営住宅160戸全戸に、市営住宅24戸分を加えた公営住宅住民184戸で増やされた分母は312戸。これを基に作成された捏造意見の内訳は、以下のとおりだった。
①あくまで全面反対、反対だが個別の意見もあり ・・・・19戸(6.1%)
②全面反対ではないが計画内容について意見あり ・・・37戸(11.9%)
③その他(賛成、理解、特に意見なし) ・・・・・・・・・・・・256戸(82.0%)

 地元住民は、実態とはかけ離れたこの数字を、12月14日の地元紙報道後に知ることになる。同町に住む40代男性は、当時のことを次のように話す。
「松陽台の戸建て住民は、あまりに実態とかけ離れた県の恣意的なデータの捏造に激しい怒りを覚えました。すぐさま5日間で2度目となる署名を集め、戸建て現住世帯111世帯(84.2%)からなる反対署名を県議会に持ち込んだのです。しかし、県と既に話がついていたらしく、県議会では最大会派の自民党と民主・社民からなる“県民連合”が、チェック機能を放棄してしまいました。数の力で、反対陳情を不採択としたのです。データ改ざんが分かっているのに、よってたかって不問にしたわけです」。

 リコールの発端となった、上海研修や体育館建設問題は、“県と県議会との馴れ合い”が常態化した結果とも言えるが、県営住宅増設計画をめぐる県政界の動きも、同じ構図によるものだったと言える。「捏造や虚偽が横行する馴れ合い県政」―これが鹿児島県の現状なのである。

 同じ構図と言えば、気になることがある。伊藤知事は今年、「川内原発再稼動の判断材料として、住民アンケート調査を行なう」と明言している。“県民の声を聞く”姿勢を演出したいようだが、松陽台の“捏造データ”を振り返れば、伊藤知事がまともな形でのアンケート調査をするはずがない。おそらく再稼働判断で出てくるのは、知事に都合のいい、原発推進派によって固められた数字であろう。“県民の声を聞いた”というアリバイ作りさえできれば、彼らの目的は達成されたことになる。ここでも、同じ構図によって、県民の声が圧殺されるだろう。

 松陽台の住民らは今年5月、伊藤知事に対し、県営住宅増設を前提とした小規模集会所建設に反対する署名(144世帯、96%)を提出した。しかし、今日まで知事からは何の反応も返ってこないという。「県民無視」が伊藤知事の県政運営方針の軸となっている。

薩摩川内産廃処分場の問題点
gennpatu 438-thumb-240x180-1724.jpg鎮国寺.JPG 薩摩川内市川永野で、県が建設を強行している産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」をめぐっても、「捏造や虚偽が横行する馴れ合い県政」が住民の声を押しつぶしている。リコール署名開始にあたり、薩摩川内市やいちき串木野の住民らが公表した資料をもとに、問題点を整理してみたい。(写真は、処分場工事現場で住民らを取り囲む数百人の県職員)

 エコパークかごしまの事業主体は、県の外郭団体「鹿児島県環境整備公社」である。理事長は副知事、職員の大半は県からの出向で、処分場建設は事実上県が行っている事業だ。県内に最終処分場が一箇所もないという大義名分を掲げて強行されたこの事業は、スタート時点から疑惑まみれだった。

 用地決定の過程は不透明。県内29箇所の処分場対象地については、満足な調査さえ行われておらず、知事の指示で薩摩川内市川永野の一箇所に絞っていたことが明らかになっている。しかも処分場用地は、薩摩藩以来、信仰の対象となってきた霊峰「冠嶽」の裾野。県民に愛されてきた神聖な山の一角を、産廃で汚そうという計画なのである。また、冠嶽は、近隣の水源になってきたほど湧水が豊富で、これを無視して処分場建設を進めたことは、後々に深刻な被害をもたらす可能性がある。自治体がもたらした環境破壊のケースとしては、最悪と言っても過言ではない。
(写真は、高野山真言宗「冠嶽山鎭國寺頂峯院」境内から見た霊峰「冠嶽」の頂上)

 処分場用地は、地場ゼネコン「植村組」のグループ企業「ガイアテック」が所有する採石場跡地。植村組グループが早い時期にこの場所で処分場建設を計画していたことが分かっている。県はこの計画を受け継いでおり、着工前の住民説明会でも、植村組グループによる地質調査結果を使用していたほどだ。「植村組ありき」は明白。県がガイアテックに支払った土地代は5億円。ほとんどが砕石プラントへの補償だが、その上に、77億7,000万円にのぼる建設工事を、同社が参加した特定建設工事共同企業体(JV:「大成・植村・田島・クボタ」)に受注させていた。処分場計画には「癒着の構造」も加わっているのである。

 処分場工事は、豊富な湧水の影響で工事が難航し、今年になって追加工事を18億7,920万円も積み上げ、総工費は96億4,920万円にまで膨らんでいる。設計ミスの原因は、前述した湧水と事前調査の不足で、この責任が伊藤知事にあるのは言うまでもない。

 驚くことに、十分な事業試算が存在しておらず、コンサル業者が作成した杜撰な処分場の事業収支は、産廃1トンあたりの処分料を他の処分場より極端に高く設定していた。早晩、破綻が予想される事業なのだ。

 今後、湧水の影響で処分場の構造物が傾いたり沈下したりする可能性が高く、そうなれば施設のコンクリートや遮水工が破壊され、産廃に含まれる有害物質が漏れ出し、関係地域や川内川流域住民の生活が脅かされる。100億円以上の税金を投入し、豊かな自然と住民の安全を葬り去る計画は、伊藤知事が発案し、強行に進めてきたものだ。事業が破綻すれば、そのツケだけが県民に回される。

 県営住宅増設も処分場建設も、地域住民の反対意見に耳を傾けず、強引に進められてきた施策だ。いずれも伊藤知事の強い意向によるもので、背景には建設業界との癒着が見え隠れしている。事業試算がないことも共通しており、知事にとっては「作って終わり」でしかない。次代の子どもたちに回されるツケは百億円単位、上海研修で失われた費用とは比較にならない額だ。鹿児島県民は、いつまでこうした放漫行政を認めるのだろうか。



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