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辞任の猪瀬氏を待つ運命

2013年12月30日 08:55

 国内の選挙では過去最高の約434万票を獲得した知事が、これほどあっけなく、終わってしまうとは思わなかった。12月18日深夜、NHKが「猪瀬直樹知事、辞任表明」と速報。翌日、猪瀬氏が正式に辞任を表明する。就任からわずか1年、徳洲会からの5,000万円受領が発覚し、疑惑まみれのまま、猪瀬氏が政治の表舞台から消えることになった。

 都庁.JPG19日午前に行われた猪瀬氏の辞任会見の場所は、都庁7階の大会議室。猪瀬氏を後任指名した石原慎太郎前知事が1年前に辞任会見したのと同じ部屋だった。「説明責任を果たすべく努力したが、疑念を払しょくできなかった。不徳の致すところ」(猪瀬氏)。辞任の理由は2つ。都政の停滞とオリンピックだという。

 前者についてはこうだ。都庁と都議会は次年度予算に取り組まなければならないが、猪瀬氏が知事に居座ると、それができなくなり、都政に差し障りがあるというもの。後者は、来年2月に東京オリンピック組織委員会が発足するが、それまでに新しい知事を誕生させるるためには、今の辞任しかなかったとの説明だった。遅きに失したというべきだろう。

 が、辞任の理由は他にあるはずだ。猪瀬氏が徳田虎雄氏と会った時に、徳田氏から東電病院買収の意思を伝えられたと報じられている。5,000万円は、贈収賄の可能性を秘めたカネだったという新たな疑惑が生じていたのだ。さらに、二転三転する猪瀬氏の説明に、怒った都議会が100条委員会を設置して疑惑を追及することも決っていた。これらについて猪瀬氏は、「辞任とは関係ない」と否定したが、素直に信じる者はいないだろう。17日に猪瀬氏に会ったという石原氏の会見での発言で、疑念は深まることになった。

 「一昨日の夜、猪瀬君が思いつめた顔で伝えてきた。副知事以下が従わなければならない東京都職員服務規定によると、利害関係者からの借金は利益供与と見なされる。過去に水道局の職員が100万円借りてクビになった例もある。猪瀬君の徳洲会からの5000万円の借金も、これに違反する可能性があるというんだな」(石原氏)。
 
 しかしこれに記者が疑問を呈した。「それは半月ほど前に新聞等が報道しているので、猪瀬氏は知っていたはずだ。服務規定は過去にさかのぼっての適用は厳しいから、『いまは知事だから』と逃げる手もある。実際の理由は別なのではないか」。

 政治の裏金を「借金」と称したが、下手な言い訳ばかりでそれが通用しなくなった。東電病院の件で猪瀬氏が関与していた疑いは否定できず、これも逃げられなくなった。100条委員会で偽証すると、禁固や罰金に処せられる。まさに四面楚歌。それでも猪瀬氏は、知事の地位に執着していたようで、直接石原氏に辞意を漏らしたわけではない。この時期、石原氏は安倍首相と気脈を通じ、猪瀬切りを決めており、察した猪瀬氏は真意を語らなかったのである。石原氏の心配は自身周辺に徳洲会疑惑が波及するうことだ。猪瀬辞任が遅れれば、徳洲会と関係が深い石原家も傷を負いかねない。さっさと辞めさせ、知事選騒ぎに紛れてうやむやにしてしまう腹づもりなのだろう。

 親分に見放された猪瀬氏を「解放」したのは、元Jリーグ・チェアマンの川淵三郎氏だったとみられる。川淵氏は昨年12月の知事選で猪瀬氏の選対本部長を務め、応援演説まで行っていた。「これはこれで、いったん打ち切ろう」。18日に猪瀬氏の関係者に会った川淵氏はこう言ったという。そしてその夜、猪瀬氏は知事辞任を決断する。川淵氏の一言が重かったということだ。
 
 猪瀬氏には東電病院がらみで司直の手がのびる可能性が残っており、知事を辞任したからといって疑惑が払拭できたわけではない。一度政治家になった以上、猪瀬氏が以前のような人気作家に戻ることも難しいだろう。疑惑発覚後のぶざまな姿を知る国民が、猪瀬氏の著作をスンナリ受け入れるとは思えない。進むも地獄、退くも地獄。政界というのはどちらを向いても地獄だらけ。猪瀬氏が足を踏み入れたのは、そうした世界だったのである。「アマチュアだった」では済まない話なのだ。

<天城慶>

 
 



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