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「暗黒地帯」高島市政の現状(1)
― 理不尽、隠蔽が横行する福岡市役所 ―

2013年11月 8日 08:00

福岡市役所 福岡市が中央区今泉で進める認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転計画をめぐり、市が約9億円で購入した移転予定地に整備予定のふたつの保育園のうち、片方の建設が4月の開園に間に合わず、数ヶ月遅れる見込みであることが判明した。工事用スペース確保のため、園庭が極端に狭められ、最大の問題点とされていた“緊急時避難”の集合場所や避難路確保が困難となることは言うまでもない(参照記事⇒「計画破たん!暗礁に乗り上げた福岡市の保育園移転」)。
 問題は、市と運営法人がこうした事態を在園児保護者や市民に公表せず、事実関係が分かったあとも、これを認めようとしないことだ。計画破たんが招くのは、あちこちの園舎を転々とさせられる幼児や保護者の混乱。しかし、入園児募集の11月になっても、市はダンマリを決め込んだまま真相を語ろうとしていない。「隠蔽」も、ここまで来れば犯罪行為に等しいが、現在の福岡市役所では、そうした姿勢があたり前になっている。一体、福岡市役所はどうなってしまったのか――シリーズで「暗黒地帯」と化した高島市政の現場の実態を報じていく。

無視された公開質問
 10月に博多区で起きた病院火災を受けて、在園児保護者会が市こどもみらい局と市消防局及び中央区地域整備課に対し、公開質問を突きつけた。いずれも、新たな移転予定地での、火災時における園児避難の在り方を問うた内容だ。

 消防に対しては、「どんなに設備を新しくしたとしても想定外の事態が発生し機能を果たさないのであれば意味がない。それならば避難経路の確保と一秒でも早い自主避難が最優先」とした上で、平成25年7月4日に開かれた中央保育園の保護者向け説明会で配布予定だった市側作成資料と、こども未来局保育指導課長の議会答弁に疑問を投げかけている。

 まず、その資料の問題の箇所。

2 災害時の対応
(1)園舎及び近隣の建物に火災が発生した場合
①火災の状況に応じ、第1避難場所の園庭又は園舎1階に避難する。
②消防の指示により、第2避難場所(今泉公園)へ避難した方が良い場合は、消防署の避難誘導に従い、正門から避難する。

 次に、こども未来局保育指導課長は、市議会常任委員会でこう答弁していた。「消防署が到着するまで園庭で待機してください、到着後、指示に従い避難してください」。

 文書の記述と課長答弁は、いずれも火災時にいったん「園庭」に避難し、消防の到着を待つというもの。消防が必ず来ると言う保証などどこにもないのだが、市側は一貫して「消防」に責任を押しつけてきた。保護者会側としては、病院火災を目の当たりにし、市側の対応では子どもを守れないとみているのである。この後に、公開質問が続く。

【Q1】保育指導課が発言した避難計画の通りであるならば、消防局としては、「園児は園舎や園庭で煙(一酸化炭素)に巻かれていても、消防が来るまで自主避難をせず待機してください」ということを消防のプロが伝えたのでしょうか?

【Q2】300名にも及ぶ園児を幅1mにも満たないガードレールもない正門前の前面道路に誘導し、公園までどうやって連れて行くのでしょうか?消防の方が保育士に指示を出して誘導するのでしょうか?

【Q3】火災のみだけでなく、地震などでの2次災害時においても同様に、何をおいても消防署はいの一番に中央保育園の園児の救出を優先させるということで宜しいでしょうか?もしそうであれば、他の市民との差別につながるのではないかと不安になりました。

【Q4】現状では前面にしかまともな避難経路がない中で保育園に消防計画書を作成させ、避難誘導については消防署であるが、そこまでは園の防火管理責任者の責務であるということで宜しいでしょうか?  

【Q5】保育指導課は消防と園に責任を押しつけているように感じます。このような避難方法を消防署が指導したのであれば、実際に園児が園庭で待機している間に煙で死傷した場合は確かに消防局にも責任があるように思います。保育指導課には、具体的にはどなたがどういう内容をお伝えしたのでしょうか?

【Q6】新保育園災害発生時の具体的な避難方法をお示しください。

【Q7】平成25年7月4日の保護者説明会での災害時の対応に関してですが、消防についての説明は福岡市からどのような要請を受けて行ったのでしょうか?その具体的な要請内容をお示しください。

【Q8】これまでも保育園の新設などでは福岡市からの要請で消防局は、利用者に安全性に関して説明をしているのでしょうか?

 どれもごもっともな質問。親なら誰しもが心配する内容ばかりだ。しかし、回答期限になって返ってきたのは、なぜか市こどもみらい局の局長名による下の紙切れ1枚だった。そこにはこうある。
 《貴会より、こども未来局保育所指導課、消防局、中央区地域整備課あてにいただきました公開質問でございますが、中央保育園に関わることであり、こども未来局で回答させていただきます。
 本件の内容につきまして確認させていただきましたが、現在、裁判係争中の案件に関わる内容であり、本市としては回答いたしかねます》

公開質問状に対する回答書

行政組織のあるべき姿を否定
 この文書は理不尽というしかない。これが市長名の回答ならいざ知らず、一局長(こども未来局長)が消防や中央区といった別の部局の回答権を否定し、質問に対する対応を一括して行うのは行政組織の運営上、あってはならないこと。越権行為もはなはだしい。さらに言うなら、子どもの安全確保策と裁判は何の関係もない。親が子の安全を心配して、行政が計画した保育園の避難計画を問い質すのはあたり前のはず。移転を強行した市側には、回答する義務(説明責任)があり、これは裁判とは別次元の話なのだ。説明責任の放棄は、納税者への裏切りでもある。

 在園児保護者らが高島市長に面会を求めた折、市長は「原局のことは原局で」と言って、こども未来局に下駄を預けた。この理屈に従うなら、消防局所管の事項は消防局が応えるべきで、裁判を理由にこども未来局が全部署の回答をまとめて拒否するなどもってのほかだろう。度を越えた隠蔽姿勢は、市長の姿勢の表れ。つまり、理不尽と隠蔽こそ高島市政の実相なのである。これはもう、まともな行政機関とは言い難い。

暗黒地帯
 市の隠蔽姿勢は、他の事案でも確認されている。今年9月、HUNTERの記者が行った中央保育園の移転に関する計2件の情報公開請求では、市側が請求に対する公開・非公開の決定期限を過ぎた後も、定められた業務を行わなず放置。所管のこども未来局吉村展子局長が、市情報公開条例違反を認めたが、請求した《①中央保育園の移転予定地について、不動産鑑定評価を依頼した際の決済文書にある 「鑑定見込み額900,000,000円~1,000,000,000円」の算出根拠②平成25年7月17日付「中央保育園の移転について」(子ども未来局作成)で、幅広く色々なご意見を伺い」とある中の「ご意見」が誰からのもので、どのような内容だったかを示す文書》は、なぜか“不存在”として非開示になっている。行政機関が、根拠のない数字を並べたり、聞き取った意見を記録しないなどということは考えにくい。役所仕事には、説明責任を果たすための裏づけが必要だからだ。事実上の公開拒否は、まさに「隠蔽」の証左であり、理不尽な条例違反は、組織が崩壊現象を起しつつあることを示している。

 HUNTERの報道で、議会中にフィットネスクラブに通っていたことが発覚、議会側から厳重注意を受けながら、翌日には自身のプール内での裸を公表して「何が悪い!」と開き直った高島氏。理不尽さはこの市長の姿勢そのものだ。これに隠蔽や職員へのネット閲覧制限が加わる現在の福岡市役所は、まさに暗黒地帯の様相を呈していると言っても過言ではあるまい。

つづく



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