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秘密保護法衆院通過へ ― 「毛バリ」に釣られたみんなの党

2013年11月21日 08:40

国会 指定された機密を漏らした公務員や、機密情報を求めた一般人への罰則を強化する特定秘密保護法案が、来週にも衆院を通過する見通しとなった。政府による情報統制、「知る権利」の制限など、法案の持つ問題点に対しては何も答えが出されないまま、永田町の数の力が国民の声を圧殺しようとしている。
 こうなったのは他でもない。政権の暴走を止めねばならないはずの野党の一部が、間違った方向で「存在感」を示そうとしたからだ。国民ではなく、時の権力にすり寄ったのは「みんなの党」と「日本維新の会」。とくに国民を裏切り、真っ先に政権になびいた「みんなの党」の責任は重い。

みんなの党の背信
 喫緊の課題とは思えぬ悪法を持ち出した自民と追従する公明。法案が成立すれば、ただでさえ隠蔽されがちな国の情報が、ますます国民から遠いものになる。「特定秘密」の指定が時の政権によって恣意的に行われるのは確実で、これでは戦前とまるで同じ。与党は、よほど「大本営発表」の時代に戻したいらしい。

 問題はこの暴挙を止めねばならなかった野党のふがいなさだ。もともと自民の補完勢力である「維新の会」を尻目に、まっさきに国民を裏切ったのは「みんなの党」。「特定秘密」の指定や解除の基準を首相が定めるなどとした与党側の修正案にあっさり飛びつき、党としてこれを認める決定を下してしまった。法案が成立すれば、さしずめ同党の渡辺喜美代表が、第一等の功労者ということになる。

密室会談
 11月14日夜、安倍晋三首相と渡辺代表が都内の中華料理屋で会食した。密室会談だ。店から出た渡辺氏は記者団に「もう5~6年やっている会だ」「年に2~3回、ずっとやっている」「楽しくいろんな話をした」と上機嫌で答えている。

 そして18日、特定秘密保護法案に関する自民・公明とみんなの党との修正協議を経て、翌日の大筋合意へとつながった。ゴタゴタ続きの党内事情が影響し、支持率低下に喘いでいた同党にとって、久方ぶりのスポットライト。渡辺代表には、法案に反対する有識者やマスコミ、さらには国民の声が聞こえなかったのだ。14日の密室会談が、渡辺氏に決断をさせたと見る方が自然だろう。

迷走の果て
 日頃、「みんなの党はどことも組める政党だ」と述べてきた渡辺氏。裏を返せば、どこからも相手にされない政党だということだ。そのウイングは自民党にも及んでいるようにも見えるが、自民党としては、容易に渡辺氏に乗れない事情がある。「しょせん、出ていった人間」というのが党内の大方の見方だからだ。

 自民党議員時代に規制改革や金融担当の内閣府特命大臣を務めた渡辺氏だが、2009年1月に単独離党。その年の8月に江田憲司氏らとみんなの党を結成した。だがこの時、渡辺氏と行動を共にすると見られていた自民内の「同志」たちは、渡辺氏と袂を分かっている。

 渡辺氏の離党が囁かれ出した頃、都内のホテルで、ある政治資金パーティーが開かれた。まず渡辺氏が講演し、その後に懇親会という構成だった。講演会には小野次郎氏(現参院議員)など自民党の1年生議員が数名、そして渡辺氏と経済路線を同じくする中川秀直元自民党幹事長も顔を見せていた。

 中川氏は5分ほどで退出したが、その背中に渡辺氏は「一緒にやろう。待っているよ」と声をかけ、中川氏が片手をあげて応じる光景が確認されていた。
 さらに、懇親会には民主党の枝野幸男氏(元官房長官)も。請われて檀上に上がり、挨拶にたった枝野氏は、祖父が渡辺氏の父である故・美智雄氏の後援会員だったことを披露している。渡辺氏は、その枝野氏にも「一緒にやろう」と声をかけていたというが、結局、合流することはなかった。

 中締めの後、パーティー会場に残っていたのは2名。柿沢未途氏と後藤田正純氏だ。後藤田氏は当時、「渡辺の腹心」と言われ、行動をともにすると思われていた一人。だが「新党では勝てない」と判断し、自民党に残ってしまう。柿沢氏はこの後すぐにみんなの党に入り、衆院議員になるも、今年8月に事実上党を除名されている。

 2009年の衆院選で落選した小野氏だったが、2010年の参院選でみんなの党に参加。かつての同志がようやく加わったと思われていた。しかし渡辺氏は今国会が始まってすぐ、参院国対委員長だった小野氏を解任する。江田氏とて、いつ「除名」になるか分からぬ身だ。

 結局、渡辺氏の周辺に残ったのは「茶坊主」だけ。いまは渡辺氏に従っているように見えている浅尾慶一郎幹事長と山内康一幹事長代理だが、両氏とも選挙の事情でみんなの党に入ったに過ぎない。彼らは決して「渡辺氏の子飼い」「同志」というわけではないのだ。分裂含みの内紛が続く同党自体、消えてなくなる可能性もある。

 過去の経緯から、自民内に渡辺代表を評価する声は少ない。好んで組む相手ではないのだ。しかし、みんなの党は、なだれを打って特定秘密保護法案の修正合意に突き進んだ。迷走に疲れ、政権にすり寄ったことは疑う余地がない。方向性を決めたのは同党の独裁者である渡辺代表。今後の居場所を捜す狙いからとみて、まず間違いない。

「毛バリ」に釣られた!?
 ゴタゴタ続きの渡辺氏の足下を見透かし、安倍首相が何らかの「餌」で、渡辺氏を釣り上げた可能性もある。釣り場となったのは14日の会談だろう。
 かつて喜美代表の父・美智雄氏は、野党の政策を支持する有権者を「毛バリに引っ掛かるようなもので、知能指数は高くない」と発言し、厳しい批判に晒された。息子が首相の毛バリに引っ掛かったと知れば、泉下の美智雄氏は「因果応報」と笑うことだろう。

 「みんなの党」は誰のための党か?少なくとも、国民のための政党でないことだけはハッキリしている。もちろん「維新の会」も。



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