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福岡市、職員ネット閲覧で事実上の検閲
狙いは「HUNTER」 ― 幼稚さ増す高島市政

2013年10月 3日 08:50

 福岡市が、職員が使用するパソコンの閲覧制限を強化し、事実上の検閲を行っていることが明らかとなった。
 制限強化は今年8月から。職員が、ある特定のサイトを開こうとすると「警告」画面に変わり、業務上必要な閲覧かどうかを確認される。さらに、「アクセス状況はすべて記録されており」とした上で、不必要と判断される閲覧を行なった場合は、「職務専念義務違反」になると、脅しともとれる文言を連ねている。このため、高島宗一郎市長やその周辺にとって都合の悪いサイトを開く職員が激減、市内部からは過剰な対応に批判の声が上がっている。
 背景を追って取材したところ、閲覧制限の狙いがHUNTERの排除にあることが分かってきた。

突然の閲覧制限強化
 今年8月の末から9月にかけて、市役所内ネットワークにおける閲覧制限を問題視する意見メールが、多数HUNTERに送られてくるようになった。実際に制限を受けている市職員しか知りえない情報だ。
 内容は、閲覧制限の強化にともない、HUNTERなどのサイトを開こうとすると警告され、場合によっては処罰される状況になったというもの。閲覧対象が職務に関係あるかどうかを決める権限を市上層部が握っているため、事実上の「検閲」として批判するものばかりだった。

 事態を重視したHUNTERは、福岡市に対し閲覧制限に関連する文書を情報公開請求、2日になって市が対象文書の一部開示に応じた。下が、問題の警告画面だ。

警告画面

 《このサイトの閲覧が業務上必要ですか?》。アクセスしようとしているサイトの内容が業務に必要かどうかを尋ね、適正なネット利用を呼びかけた後、こう続く。
なお、インターネットアクセス状況はすべて記録されており、業務上必要がない場合には、コンピュータの不適正利用はもちろんのこと、勤務時間内であれば、職務専念義務違反と見なされる場合もありますので、十分ご注意願います。》

 要は、「お前の閲覧記録は監視されている。不必要な閲覧だと認められれば処罰する」ということ。閲覧制限と言うより、検閲の宣言と見る方が自然だろう。この事態をどう受け止めているか―現場の市職員たちに話を聞いた。

職員A「必要な情報かどうかは職員個々が決めるもの。上層部が『必要ない』と思っても、その時々の状況で、求める対象が変わるのは当然。不適切なサイトなどは以前から閲覧制限されており、ここまでやる必要があるとは思えない。狙いが別のところにあるのは皆感じているんじゃないか」。

職員B「いまの執行部が、職員を信用していない証拠だ。福岡市では、不適切なネット利用などの事例は起きていない。セキュリティ強化を装っているが、市長にとって都合の悪い情報を見ないように、との警告だろう。中央保育園の移転がらみの報道が始まったころに突然この方針が打ち出されており、子どもじみた対応だなと思っていた」。

職員C「正直、気味悪いですよ。黄色い画面(問題の警告画面)が出た場合は、それ以上進めない。市役所内部で監視されているというのは、じつに気分が悪いですね」。

職員D「表向きの理由と、本当の理由が別であることは、多くの職員が気付いてますよ。だって市長は『HUNTERを見るな』とことあるごとに叫んでいたんですから。(市長は)『業務に関係ないだろ』と言うんですよ。市のことが書かれていれば、新聞だろうがHUNTERの記事だろうが、全職員に関係あるでしょ。閲覧を止めるのはおかしい。HUNTERさんがあんまり市長サイドを責めたてるから怒っちゃったんじゃないですか(笑い)。それにしてもやり方が陰湿ですね」。

職員E「迷惑。様々な情報を得ることに困難を来すようになった。情報の取捨選択は現場の職員が任されているはず。必要だから見てるんだ。何でもかんでも制限の対象にしていては、必要な情報を求めようという気さえなくなってしまう。黄色い画面が出たとたん、いやになってしまうのは事実だ。『利用基準』にあるが、最終的な制限対象決定の権限を総務企画局長ひとりに与えるいうのはいかがなものか。局長がダメというならアウトというのでは、恣意的な運用も可能になってしまう。これは特定の情報源を締め出すための大掛りな茶番だ」。

職員D「情報統制ですよ。市長にとって都合の悪い話を、職員から遠ざけようという魂胆が丸見え。そんなことしても無駄だということが分かっていない。見るなと言われれば見たくなるのが人間の心理、お昼休みにスマホで見るとか、帰って自宅で見るとか、どうにでもできることなのに・・・。ところで、HUNTERが何かすっぱ抜くのではと、期待している職員は少なくないですよ。次は何が出るんですか?ああ、もちろん閲覧制限はHUNTERのせいだと思ってますよ(笑い)」。

 職員たちが異口同音に話すのは、市執行部の狙いが、特定サイトの閲覧制限にあるということ。特に、高島市政と厳しく対峙してきたHUNTERの締め出しを狙ったものだという意見ばかりだ。それでは表向きの理由はどうなっているのか、開示されたそのほかの関連文書を確認してみた。

 それによると、方針決済は8月6日(起案は7月23日)。起案の趣旨として次の3点が挙げられている。
1、インターネット利用に伴うセキュリティリスクの低減
2、インターネット利用増大に伴うネットワーク付加の低減
3、業務上の必要性の観点からの閲覧内容見直し

 もっともらしい理由ばかりだが、不適切なサイトに対する閲覧制限は従来から実施されている。しかも、福岡市役所は、処分をちらつかせてまでネット閲覧を規制するような状況にはない。市庁舎は、執務スペースが十分にあるため、職員個々が隠れて不適切な閲覧を行う環境ではないないのだ。つまり、物理的に不正ができない。
 制限範囲を広げた真の狙いは何か?―取材を進めるにつれ、複数の市幹部およびOBの話から、市長サイドの真の狙いが浮き彫りになった。

「HUNTER見るな」―市長が明言 
 ある市幹部の話。「高島市長は、昨年から、市の幹部職員に対して『HUNTERを見るな』と言い続けてきた。市長自身や市長周辺の不行跡を、HUNTERだけが報じていたからだろう。そのくせ、HUNTERに対する抗議も行わず、記事の訂正すら要求していない。気に入らないから『見るな』では、市長の取り巻きは別として、納得する職員はいない。マスコミ出身のくせに、ずいぶん幼稚な対応だと思った。その次が『(職員が)HUNTERを見れないようにしろ』。まるでガキ。公人としての資格を疑うお粗末さだ」。

 元市幹部の証言。「HUNTERのことを口を極めて罵っていたから、いつか一線を越える行動に出ると思っていた。そのひとつが『HUNTERを閲覧できなくなるようにしろ』という指示だった。特定サイトを見れなくすることは難しかろうと思っていたが、今回のような閲覧制限だと、可能なんだな。他のサイトは迷惑だろうな(笑い)。ただ、職員が一番迷惑してるんじゃないかな。情報の収集に支障を来すのはもちろん、やる気がなくなるだろうから。それにしても高島君は子どもだな」。

 HUNTERこそが閲覧制限の対象だと断言する市元幹部もいる。「とにかく、市長からは『HUNTERなんか見るな』と何度も言われた。それでは気がすまなくなったのか、職員がネット上でHUNTERを見れなくするよう、指示を出したことも知っている。今回の閲覧制限はその延長。恨み骨髄ということだろう。それだけ記事が的を射ているということだ。今の市役所は、市長と外から来た取り巻きに支配されている。私設秘書やら友人の顧問だのが『ウン』と言わなきゃ話が進まない市役所なんて、狂ってる。市民の知らない高島市政の実態を、HUNTERだけが記事にしているが、(記事に)基本的な間違いはない。(HUNTERは)気をつけたほうがいいかもしれない。市長は何やらかすか分からないから」。

 市長サイドの狙いはHUNTERの締め出し。光栄である。たしかに、高島氏の就任以来、独断的で幼稚な市政運営を厳しく批判し、不適切な事案についてはことごとくその内容を報じてきた。二階建てバスや市役所改装への億単位の公費投入、タレントの尻馬に乗ったカワイイ区、市長の友人で市顧問の業者選定への関与・・・。例をあげればきりがない。しかし、現役の市幹部が話すように、市側から記事の訂正を求められたり、抗議を受けたことは一切ない。配信記事に対し不満があるというなら、コソコソやらずに堂々と論争を挑んでくればいい話だ。反論できないから今回のような愚行に走ったのだろうが、それではあまりにお粗末。“幼稚さが増した”と笑ってばかりもいられない事態だ。職員もいい迷惑だろう。

 閲覧制限とそれにともなう検閲について、明日から徹底検証する。現時点で読者が不思議に思うのは、「なぜ新聞やテレビが今回の閲覧制限を問題視しないのか」という点かもしれない。その疑問に対する答えも、市が開示した文書の中に存在している。



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