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50年で2例目 鹿児島で知事へのリコール署名始まる
― 問われる独裁県政の是非 ―

2013年10月 9日 09:10

 8日、伊藤祐一郎鹿児島県知事に対するリコール(解職請求)に向けての署名活動が始まった。
 同日、県はホームページ上に、リコールの理由として挙げられた上海研修、総合体育館、楠隼高校、松陽台県営住宅、薩摩川内処分場についての県側の主張を掲載。リコールを進める市民団体への反論を展開した。知事個人への解職請求に、税金を使って対抗するという公私混同ぶりだ。
 一部報道によれば、地元の識者とやらが「公私混同の面はあるが、市民団体の主張は県政全体への批判で、県のHPでの反論は理解できなくもない」と話しているというが、これは間違い。リコール運動を起した市民団体の主張を、よく理解していない人間のコメントだ。
 知事へのリコールは、県民の声を聞かぬ独善的な政治手法に対するもの。つまり政治家・伊藤祐一郎個人に向けられたもので、県を相手にしているのではないからだ。
 幸い、リコール運動に参加している鹿児島市の男性が、その思いを一文にして送ってくれた。その全文を掲載する。

伊藤祐一郎鹿児島県知事のリコール(解職請求)に向けて

 鹿児島はいつからこうも悪いニュースばかりを量産する県になったのだろう。今年になってからだけでも、南大隅町の核ゴミ処分場疑惑、最福寺(鹿児島市)の朝鮮総連本部ビル購入騒動、鹿児島市立病院の不透明人事と続いた。いずれにも伊藤祐一郎鹿児島県知事の影がちらついている。核ゴミで蠢いた東電関係者や最福寺の住職とは旧知。市立病院の人事には知事自らが介入したという。とどめが県政史上最低の愚行とされる上海研修と体育館建設だ。

 「上海研修は当面行なわない」、「体育館建設は一旦取り下げる」として、リコール回避に動き、事の沈静化を図った知事だが、ここに来て、3度の知事選で支援を受けた医療法人「徳洲会」に公職選挙法違反の疑いが浮上、その関係に注目が集まっている。

 10月8日、伊藤知事に対する解職請求(リコール)の署名運動が始まった。奇しくも、その日、徳洲会・徳田虎雄理事長の退任が報じられた。地元マスコミの一部には、今回のリコールを、上海研修や体育館建設をめぐる政策論争として、矮小化しようとする向きもあるが、それだけではないことは明らかだ。

 解職請求書にも書かれている通り、薩摩川内市の産廃処分場建設に約100億円、肝付町に開設予定の全寮制中高一貫男子校に約50億円、鹿児島市松陽台の県営住宅建設に約40億円以上の税金が投入される。どう見ても無駄遣いである。これらすべての事業には県民の強い反対がある上、建設の目的、必要性、採算性の上での疑義に、知事はまともな説明をしていない。

 関係住民からは公開質問状や署名簿、陳情の類が数多く出されているが、知事も議会も事実上の黙殺。鹿児島県ではこれが常態化している。知事は「県政の主役は県民ひとりひとり」と言ってきたが、真っ赤な嘘だったことを知事自らが証明しているのだ。

 県民所得も低く、決して裕福ではない鹿児島県。それでいて、箱物には湯水のように巨額の公費・・・。九電の川内原発(薩摩川内市)があることから「原発マネー」が原資になっている事業も多い。伊藤知事は官僚出身。中央とのパイプを生かして、予算を分捕り、自らを支える利権団体にそれをばらまく。そんな構図が見てとれる。知事も「原子力ムラ」の一員なのだ。

 今回のリコールで問われるべきは、今後もこの悪しき仕組みを残すか否か、彼らが作り続ける負の遺産を、子や孫の世代に残すか否かということにある。何も財政面だけのことではない。環境面でもそうだ。鹿児島が誇る霊峰「冠嶽」を汚し、川内川や地下水の汚染が心配される産廃処分場など必要ないはず。また、活断層の存在がクローズアップされている川内原発も再稼動させるべきではない。福島第一原発への国や東電の杜撰な対応、周辺住民への仕打ちを見るにつけ、そう思う。国内に核ゴミ処分場がないという事実からも、原発は既に破綻している。マニフェストに「環境先進県」を謳った知事が、処分場を造り、原発再稼働を歓迎するというのでは、あまりに無責任だろう。

 就任当時、公約した「人工島建設反対」をあっさり撤回し、建設へと舵を切った伊藤知事。自己都合優先、朝令暮改の思いつき政治は今に始まったことではない。県民無視・独断専行のその姿勢は益々酷くなっている。この人物の知事としての資質が問われるのはあたり前だろう。それが今回のリコールの目的だ。同時に、鹿児島の正しい発展を妨げる悪しき構造を転換するための第一歩でもある。

 鹿児島県民のDNAに訴えたい。傍観するのではなく、自らの意志で立ち上がり、運動に参加してもらいたい。私もそのひとりだ。

平成25年10月8日リコール署名開始の夜に

知事失格
 今年8月、定例会見でリコールに対する感想を聞かれた伊藤知事は、次のように述べている。
『戦後ここ50年で、知事のリコールというのは確か大分県で1件だと思うのです。リコールは起こりましたが署名が集まりませんでした。したがって、一応首長は任期制、4年の任期制で、非常に異例な事態が起こった時にリコールという制度が保障されています。したがって今申し上げましたように、50年で今まで1件しかないですし、成立もしていません。―中略―全国的に非常に注目が集まるのです。そういう意味で、やはり鹿児島県の名誉がかかってきますので、おやりになるとしても清々粛々やってほしいと思います』。

 伊藤祐一郎という政治家の傲慢ぶりを如実に示す語り口だが、知事自身が言うように、50年でたった一件しか例がなかった知事へのリコールが、鹿児島県で始まったという事実は重い。問われているのは独裁県政の是非だが、リコールが始まった時点で「知事失格」なのである。



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