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死んだ情報公開制度 福岡市、条例違反に加え「不作為」
組織ぐるみで隠蔽の疑いも

2013年9月 5日 09:20

不作為 福岡市に対する情報公開請求が担当局によって放置され、「福岡市情報公開条例」に違反する事態となっている問題で、市側のさらに悪質な行為が明らかとなった。
 HUNTERの記者が行った中央保育園((運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転に関する情報公開請求を放置していた市こども未来局の保育課長と吉村展子局長は、条例違反が発覚した3日の段階で、「公開・非公開の決済は終わっていた」と説明。違反行為があったことをを認めながらも、担当職員による連絡ミスであるかのように装っていた。
 しかし、4日になって開示・不開示の決定自体が、記者の状況確認後だったことが判明。追及を受け、決済を急いだことが分かった。
 条例違反に加え「不作為」があったことは確実。さらに、組織ぐるみで、より重大な問題を隠蔽しようとした疑いもある。

追及受け決済―「終わっていた」は嘘だった
 HUNTERの記者は、8月9日(受付日は12日)に、中央保育園の移転予定地について、不動産鑑定評価を依頼した際の決済文書にある「鑑定見込み額900,000,000円~1,000,000,000円」の算出根拠を請求。次いで15日(同日受付)に、平成25年7月17日付「中央保育園の移転について」と題された、子ども未来局作成の文書にあった「幅広く色々なご意見を伺い」という文言についての詳細が分かる文書を請求した。

 これに対し市は、本来同月21日及び26日に行われたはずの公開・非公開、もしくは決定期限延長の決済内容についての通知を放置。決定期限を過ぎても市側から何の連絡もないことに疑念を抱いた記者が、市に状況を確認したことから条例違反が明るみに出た。

 3日、HUNTERの記者に応対した保育課長と決裁権者である吉村展子こども未来局長は、決定通知が遅れたことを情報公開条例に違反する行為であると認めた上で、「公開・非公開の決済は終わっていた」と明言。担当職員が書類の管理を誤ったため、今回の事態を招いたと説明していた。
 条例が定めた開示・非開示の決定は行なっていたが、「速やかに」通知を出さなかったことが違反。事務処理上のミスだという主張である。

 ところが4日、問題の決済がいつ行われたのか確認するため、保育課で決済文書を確認したところ、公開・非公開についての決済日は「2日」。HUNTERの記者が追及を始めた日となっていた。「決済は終わっていた」との説明は虚偽だったことになる。

決済文書 1 決済文書 2

 これまでの経過を時系列でまとめた。

【2日】

  • 09時29分 記者が市情報公開室に決定期限を過ぎた請求があることについて確認を求める。情報公開室は、所管の保育課に確認し折り返しの連絡をすることを約束。
  • 10時19分 記者が再度、情報公開室に確認の電話。情報公開室は、「担当課から連絡はありませんか?直接担当課が連絡すると言っておりましたので、回答があると思います」。
  • 10時20分 保育課から入電。記者は別の電話に応対中。
  • 10時21分 保育課へ折り返し電話。今度は担当職員が離席。
  • 10時23分 保育課から電話。「決済は終わっているが・・・」とする担当職員。記者は公開・非公開の決定期限を確認。職員が「26日」と答え、21日決済分について話そうとしなかったため、疑念を深めた記者が翌日の情報公開実施を申し入れ。

【3日】

  • 11時35分 市情報公開室において保育課が「公文書非公開決定通知書」を提示。条例違反を確信した記者は納得せず、決裁権者であるこども未来局長の説明を求める。
  • 14時50分 こども未来局長室で、保育課長、吉村局長が経過を説明。決済は終わっていたが、職員の文書管理に問題があり、連絡が遅れたと釈明。記者に、通知義務についての条例違反を認める。

【4日】

  • 11時35分 保育課で「非公開」を決めた時の決済文書を確認。決済日は「9月2日」。市情報公開条例が定めた通知規定(『公開請求に対する決定等』)に加え、『公開決定等の期限』も守られていなかったことが判明。

 これまでの経過からみて、市側が2件の情報公開請求に対する非公開決定を行なったのが、記者の追及が始まってからのことであるのは明白。条例違反に加え「不作為」があったことになるが、組織ぐるみで自らの過ちを隠蔽しようとした可能性が高く、悪質。福岡市の情報公開制度は、事実上「死んだ」と言っても過言ではあるまい。
 
 情報公開制度に詳しい市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は、次のように話している。
「開いた口がふさがらない。基本的なことができないのなら、条例を作った意味がない。公開・非公開の決定も出さず、連絡もないということになれば、明らかな条例違反。極めて悪質なケースだ。これが許されるのなら、条例の規定はカラ証文ということになる。条例の根幹を揺るがす事態であり、市民の権利を侵害した重大な問題だ。職員の処分は当然だが、まず市政トップである市長が説明すべきだろう」。

背景に中央保育園移転計画の闇
 問題の2件の情報公開請求は、疑惑まみれとなった福岡市中央区の認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転事業に関するものだ。移転強行を決めたのは高島宗一郎市長。HUNTERの情報公開請求は、裏付けを欠いた市長発言と杜撰な移転計画の過程を検証するためだった。
 市は意図的に情報開示を遅らせ、報道を妨げたのではないか?そうした疑念さえ生じている。
 次稿では、情報公開請求に対し「非公開」となった文書の意味について、詳細を報じる。



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