福岡市に対する情報公開請求が担当局によって放置され、「福岡市情報公開条例」に違反する事態となっている問題で、市側のさらに悪質な行為が明らかとなった。
HUNTERの記者が行った中央保育園((運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転に関する情報公開請求を放置していた市こども未来局の保育課長と吉村展子局長は、条例違反が発覚した3日の段階で、「公開・非公開の決済は終わっていた」と説明。違反行為があったことをを認めながらも、担当職員による連絡ミスであるかのように装っていた。
しかし、4日になって開示・不開示の決定自体が、記者の状況確認後だったことが判明。追及を受け、決済を急いだことが分かった。
条例違反に加え「不作為」があったことは確実。さらに、組織ぐるみで、より重大な問題を隠蔽しようとした疑いもある。
追及受け決済―「終わっていた」は嘘だった
HUNTERの記者は、8月9日(受付日は12日)に、中央保育園の移転予定地について、不動産鑑定評価を依頼した際の決済文書にある「鑑定見込み額900,000,000円~1,000,000,000円」の算出根拠を請求。次いで15日(同日受付)に、平成25年7月17日付「中央保育園の移転について」と題された、子ども未来局作成の文書にあった「幅広く色々なご意見を伺い」という文言についての詳細が分かる文書を請求した。
これに対し市は、本来同月21日及び26日に行われたはずの公開・非公開、もしくは決定期限延長の決済内容についての通知を放置。決定期限を過ぎても市側から何の連絡もないことに疑念を抱いた記者が、市に状況を確認したことから条例違反が明るみに出た。
3日、HUNTERの記者に応対した保育課長と決裁権者である吉村展子こども未来局長は、決定通知が遅れたことを情報公開条例に違反する行為であると認めた上で、「公開・非公開の決済は終わっていた」と明言。担当職員が書類の管理を誤ったため、今回の事態を招いたと説明していた。
条例が定めた開示・非開示の決定は行なっていたが、「速やかに」通知を出さなかったことが違反。事務処理上のミスだという主張である。
ところが4日、問題の決済がいつ行われたのか確認するため、保育課で決済文書を確認したところ、公開・非公開についての決済日は「2日」。HUNTERの記者が追及を始めた日となっていた。「決済は終わっていた」との説明は虚偽だったことになる。
これまでの経過を時系列でまとめた。
【2日】
【3日】
【4日】
これまでの経過からみて、市側が2件の情報公開請求に対する非公開決定を行なったのが、記者の追及が始まってからのことであるのは明白。条例違反に加え「不作為」があったことになるが、組織ぐるみで自らの過ちを隠蔽しようとした可能性が高く、悪質。福岡市の情報公開制度は、事実上「死んだ」と言っても過言ではあるまい。
情報公開制度に詳しい市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は、次のように話している。
「開いた口がふさがらない。基本的なことができないのなら、条例を作った意味がない。公開・非公開の決定も出さず、連絡もないということになれば、明らかな条例違反。極めて悪質なケースだ。これが許されるのなら、条例の規定はカラ証文ということになる。条例の根幹を揺るがす事態であり、市民の権利を侵害した重大な問題だ。職員の処分は当然だが、まず市政トップである市長が説明すべきだろう」。
背景に中央保育園移転計画の闇
問題の2件の情報公開請求は、疑惑まみれとなった福岡市中央区の認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転事業に関するものだ。移転強行を決めたのは高島宗一郎市長。HUNTERの情報公開請求は、裏付けを欠いた市長発言と杜撰な移転計画の過程を検証するためだった。
市は意図的に情報開示を遅らせ、報道を妨げたのではないか?そうした疑念さえ生じている。
次稿では、情報公開請求に対し「非公開」となった文書の意味について、詳細を報じる。