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市長の背信
― 福岡・中央保育園移転の真相 ―

2013年9月18日 09:35

高島市長 福岡市が風俗街への移転を進める認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の再整備計画をめぐる高島宗一郎市長の背信行為が、市関係者の話から明らかとなった。
 市長が考えた整備計画の狙いは「商業施設」。そのため、当初出された指示は、「市立中央児童会館」と保育園の両施設をはずせという、子育て支援とは程遠いもの。結果、保育園がはじき出され、本来なら必要のなかった移転用地を、約9億円で市が取得することになった。市長の横暴が、ムダな公費支出を招いたということだ。
 これまでの取材結果と、新たな証言をもとに、整備計画の変遷経過を検証する。
(写真は高島福岡市長)

方針転換の経過と市関係者の証言
 市関係者の話や取材結果をもとに整理すると、両施設の整備計画はおよそ次のような経過をたどったことになる。いずれも平成23年のことだ。

【4月~5月】

  • 高島市長が中央児童会館と中央保育園の再整備にかかる平成23年度予算の執行停止を指示。両施設の合築を前提とした「基本設計費」3,459万円、「代替施設の設計・工事費」2,251万円、「解体設計費」332万9,000円の執行を止め、計画見直し。

  • 突然の方針転換に困惑するこども未来局や市幹部に対し、市長が「ふたつ(中央児童会館と中央保育園)とも出してしまえ」と要求。この頃、市内部で「こみらい(こども未来局)が困っている」との話が拡がった。

<関係者証言から>
石碑 方針転換にあたって、子育て支援とか待機児童解消といった言葉を、市長から聞いた記憶はない。とにかく「商業施設」一辺倒だった。なにせ「ふたつとも出してしまえ」だから。しかし、財産区から土地を譲られた経緯があった。中央保育園の園庭脇に石碑がある。児童館建設を機に、数十年間続いてきた「財産区」を解散すると記してある。たしか、昭和43年のこと。これじゃ児童館まで排除することは難しいとなったが、そのため保育園がはじき出された。(右が証言に出てくる石碑)

  • 副市長、総務企画局、こども未来局などの関係者が、断続的に協議。5月頃、現在の移転予定地を含め、6箇所の土地の存在が浮上。
  • 最終的に、移転予定地を2箇所に絞り込む。これが平成23年7月26日の市政運営会議で資料としてこども未来局が提出した総括シート及び添付資料にある「候補地1」と「候補地2」。「候補地1」が現在の移転予定地。

<関係者証言から>
 現地に出向き、「候補地2」の状況を確認した。“最初から「候補地1」しか考えていなかった”という市側説明は矛盾している。総括シートの資料に記された「候補地2」の価格が、3倍にも水増しされた数字だったことが監査結果で明らかになって驚いている。私は、こみらい(こども未来局)に騙されていたということで、怒りを感じる。「候補地1」が、ラブホ街にあることなど、市政運営会議までの過程では一切明かされなかった。

  • 7月。市政運営会議で商業施設を軸にした再整備計画に変更することを確認。保育園の単独移転と、移転予定地を「候補地1」にすることを決定。
  • 市政運営会議から約2か月後の10月初旬、保育園移転用地の隣にパチンコ店が建設される予定であることについて、福岡県警からの照会。

<関係者証言から>
 この情報は聞いていなかった。どこで止まったのか分からないが、知っていれば「候補地1」について、見直しを進言していた。隣に風俗業が開店すると分かっていて、保育所をつくるバカはいない。この時点で他の土地を探すべきだった。

 市関係者の新証言で浮かび上がったのは、市長が派手な「商業施設」に固執したため、子育て支援という再整備事業本来の目的が薄れてしまったという歪んだ市政の姿。中央児童会館と保育園の両施設を、合築して建替えるという方針を堅持していれば、何の問題も起きなかったし、9億円の土地取得も必要なかったのである。

破棄された「合築」再整備の内容
 ここで、方針転換前の再整備計画について確認しておきたい。福岡市は、平成22年度まで、中央児童会会館と中央保育園を合築して再整備する方針を堅持していた。しかも、市への情報公開請求で入手した資料から、「合築」がカネと時間をかけて積み上げられた結論だったことが明らかになっている。整備事業に関する検討業務委託の契約書を抜き出してみた(資料は保存期間内のもの)。

  • 平成20年 「福岡市子ども関連施設に関する調査業務」 2,362,500円
  • 平成21年 「新・中央児童会館の在り方について検討業務」 2,142,000円
  • 平成22年 「中央児童会館等整備計画検討業務」 4,095,000円

 書類の保存期間を過ぎているため、平成19年以前の委託内容はつかめなかったが、両施設の再整備はすべて現地に合築することを前提に議論が進められていた。
 その集大成ともいえるものが、平成22年に委託された「中央児童会館等整備計画検討業務」。成果物として提出された『報告書』の中には、次のように記されている(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

報告書

 「行政資産の有効活用」、「合築」、「保育園の定員増50人」。これが積み上げられた議論の最終結論なのだ。さらに、こうした方針に基づいて、平成23年度以降、下のスケジュールが組まれ、昨日報じた約6,000万円の再整備関連予算(「基本設計」3,459万円、「代替施設の設計・工事費」2,251万円、「解体設計費」332万9,000円)が計上されていた。

鹿児島 766.jpg

 高島市長が固執した「商業施設」だが、合築を前提とした計画の中には、コンビニやカフェといった「商業施設」を併設するという考え方が示されているほか、余裕床を賃貸して経費の縮減を図ることまで明記されている。無理に児童館と保育園の両施設を追い出す必要がなかったことは明らかだ。

鹿児島 764.jpg

市関係者―「9億円は不当支出」
 最後に、市関係者の重要な証言を紹介しておきたい。
<市関係者の証言から> 
 平成23年度予算で、「基本設計」、「代替施設の設計・工事費」、「解体設計費」まで計上していたということは、保育園の仮園舎を建てる土地のメドがついていたということ。(仮園舎の用地を)「捜したけどなかった」という市側の説明は虚偽としか思えない。行政機関が断固たる信念を持ってことに望めば、公共性があることだけに不可能ではなかった。なんやかやと理屈をつけているが、真相を糊塗するための方便に過ぎない。

 市政運営会議は、市長の指示を受けた原局が、その意向に沿った作業を行ない、結論を追認する場所になっている。形骸化だ。従って、平成23年7月26日の運営会議の前に、何度も関係者による会議や協議が開かれており、その記録や資料は当然残っているはず。

 待機児童解消という大義名分は、付け足し。後付けの理由に過ぎない。市長のミッションは、児童会館の建物を商業施設に衣替えさせろという一点に尽きた。たまたま取得可能な土地が広かったため、中央保育園の定員増につながったに過ぎない。結論を言うが、9億円の移転用地は買う必要がなかったものだ。不動産屋の転売益がどうのという話ではなく、9億円全体が不当な支出なのだ。

 中央保育園の移転をめぐり、「不当な公金支出」だとして在園児保護者らが事業中止を求めた住民監査請求を受け、市監査委員は次のような厳しい意見を市側に突きつけている。
《今回、中央保育園について、市政運営会議での決定により、それまでの現地建替えから単独移転に大きく方針変更がなされていますが、その決定は市内部でのみ行われ、この過程をオープンにし、市民の理解を得ようとする姿勢が十分に見受けられません。また、保育園用地の選定手続きや取得手続きには不備があるとともに非常に不透明です。
 何よりも、市民生活に重大な影響を与える事項については、法令上個別に議会の議決が必要とされなくても、議会に積極的に報告し、説明責任を果たすべきであると考えます》。

 今後、保育園の移転用地として取得された9億円の土地をめぐり、重大な局面を迎える可能性がある。



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