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伊藤鹿児島知事が人事に介入!? 揺れる鹿児島市立病院(上)

2013年8月 5日 09:20

鹿児島市立病院 看板 五つ子誕生を支えた病院が、独裁者の横車に揺れている。
 公費を使った県職員の上海研修やムダな体育施設建設を強行する鹿児島県。薩摩川内の産廃処分場「エコパークかごしま」建設や鹿児島市松陽台の県営住宅増設問題でもそうだったように、伊藤祐一郎知事に県民の声を聞こうとする姿勢は見られない。
 県政への批判が高まる中、今度は鹿児島市が誇る市立病院の院長人事に知事が介入したとの噂が広まり、各方面から批判が噴き出す事態となっている。事実関係を確認するため、鹿児島市内を取材した。

五つ子誕生の病院
鹿児島市立病院 院長人事をめぐり知事の不当な介入があったとされるのは、県都・鹿児島市にある「鹿児島市立病院」。昭和51年、国内初の五つ子誕生の舞台となった病院である(写真参照)。

 同病院は、明治26年に市立鹿児島病院として発足。一時県の所管となったものの、昭和15年に鹿児島市立診療所となり、終戦の年の昭和20年に現在の名称となった。

 現在地の市内加治屋町に移転したのは昭和23年。以来、増・改築を行ない、内科、消化器科、循環器科、リウマチ科、小児科、外科、小児外科、心臓血管外科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、形成外科、麻酔科の計20科、687床(一般病床:641床、感染症病床:6床、結核病床:40床)を有する県内屈指の大病院となった。
 救急救命、周産期医療、がん治療といった高度医療にも幅広く対応しており、文字通り地域医療の拠点。平成23年12月からはドクターヘリの運航を開始している。

新病院建設現場(上荒田) その市立病院は現在、施設の老朽化、狭隘化に伴う移転新築工事の真っ最中。約170億円の事業費をかけ、平成24年度に着工、平成27年度開院の予定で工事が進む。

 同市上荒田の日本たばこ産業(JT)工場跡地に建設される新病院の敷地面積は44,631.81㎡。ここに地上8階、病床数約580床(延床面積にして51,896.24㎡)の最新医療施設が完成する。
 新病院計画を引っ張ってきたのが、上津原甲一院長(当時。以下「院長」で稿を進める)である。
(写真は、市内上荒田の新病院建設現場)

事実上の院長更迭
鹿児島市役所 この病院をめぐって騒ぎが起こったのは先月。任期切れ間近ながら再任が当然と思われていた上津原院長が、森博幸市長に呼び出されたことが発端だった。
(右の写真は鹿児島市役所)

 病院関係者の話によれば、一対一で向き合った森鹿児島市長は、上津原院長に対し、7月26日の任期いっぱいで退任するよう申し渡したという。理由は「伊藤知事の指示」。後任も決っていたらしく、新院長については外部から招聘することを明言したとされる。知事の圧力を受けた、事実上の更迭である。
 
 新病院の完成に向け全力を挙げて取り組んできた上津原院長にとっては、寝耳に水の話だったはずだ。再任が当然と見られていただけに、現場の混乱も予想される。唐突な話に抵抗を試みたが、森市長の意思は変わらなかったという。

 理不尽な人事に驚いたのは院長だけではなかった。話を聞いた市立病院内部は、蜂の巣をつついたような騒ぎになったという。
 大半の病院関係者が上津原院長の再任を求める署名活動に賛同、500人分の思いが森市長へ提出される。医局はもちろん、普通なら経営側である院長と対峙するはずの職員組合までが、一人残らず署名したというから、院長への信頼は並大抵のものではなかったのだろう。

 しかし、森市長は反対意見を黙殺。上津原院長に予告した通り、鹿児島大学大学院の坪内博仁・特任教授を8月1日付けで起用することを決め、7月25日に正式発表した。新院長・坪内氏は内科専門医。救急救命の経験はない。

 鹿児島市立病院は市の所管。院長の任命権者は鹿児島市長だ。その人事に介入したのが事実なら、伊藤知事の越権行為であり、地方自治の在るべき姿を根底から覆す暴挙といえよう。

 九州地方のある首長経験者は次のように語る。「伊藤知事は自治とは何かが分かっていない。上意下達が当然だと思っているんじゃないか。だから県民の声を聞こうとしない。
 もうひとつ、鹿児島は薩摩藩時代と同じだということを忘れてはならない。一番上は県。市町村なんて支藩に過ぎず、鹿児島市長といえど、知事にとっては家来。しかも森さん(市長)は、伊藤知事のラ・サール高校の後輩。知事が右と言えば自然と体が動いてしまうんだろう。
 知事はつい最近、商業施設「ドルフィンポート」を壊して、総合体育館を建設する計画をぶち上げた。これで森さんが公約に掲げたウオーターフロント地区での市電の路線整備が頓挫している。だけど森さんはだんまり。
 市立病院の院長人事にしても、知事が更迭といえば『ハイ、分かりました』と言うしかないんだろう。これは知事と市長による行政の私物化だ」。

焦点は“知事介入”の有無
 問題は2点に絞られる。まず、院長交代が本当に伊藤知事の指示だったのかどうか。次に指示があったとして、越権行為を犯してまで人事に口を挟んだ理由が何かという点である。
 鹿児島を訪れた取材班は、まずはじめに当事者である上津原院長に話を聞くことにした。

つづく



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