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無視された風営法 ― パチンコ店救済の背景
― 福岡・中央保育園移転疑惑の真相(1) ―

2013年7月23日 09:55

 福岡市中央区にある認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転が、市民の反対の声を無視して強行されることになった。方針を決めたのは高島宗一郎市長である。
 移転計画をめぐっては、新園舎の用地選定、合築予定だった市立中央児童会館の建替え整備事業者選定、中央保育園側への補助金、そして移転予定地の隣りにあるパチンコ店の営業許可との絡みなどについて多くの疑惑が噴き出している。市政史上、もっとも汚れた事業であると言っても過言ではあるまい。
 そうした中での移転工事突入は、一連の疑惑に蓋をして、既成事実化したい市長の意向を受けてのもの。しかし、疑惑を放置したまま、移転を認めてはならない。一部の利益のために、子どもや保護者が不利益を被ることなどあってはならないからだ。
 HUNTERでは、これまで表面に出なかった背景を含め、個々の問題について再検証することを決めた。まずは、風営法を無視した移転計画の実態について報じる。(写真は、疑惑に揺れる福岡市役所)

文書でたどる風営法無視の実態
 先週、福岡市が、移転用地の買収交渉に入る以前の段階で、福岡県警からの照会によって同用地隣りへのパチンコ店進出を知っていたことが判明した。下が、この時の県警からの照会文書である。

県警からの照会文書

 ここで押さえておきたいのは、照会文書の根拠法令だ。
 まずは風営法(「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)である。同法の立法趣旨は、その第一条で明らかにされている。
《この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする》。
 同法は、子どもの健全育成のために風俗業を規制すると明記しているのである。

 照会文書の中にある同法「第4条」と同条「第2項第2号」とは、次のようなものだ。

【第4条】(注:以下、条文中の「営業所」とは、風俗施設のこと)
《公安委員会は、前条第一項の許可の申請に係る営業所につき次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、許可をしてはならない》。
【第2項第2号】
《営業所が、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるとき》。

 同法第4条の規定は、風営法の立法趣旨を具現化したもので、各都道府県が定めた『保護対象施設』から、一定の距離内での風俗営業を禁止している。福岡県の場合は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」が適用され、第3条で「学校」「児童福祉施設」「病院」「図書館」「診療所」を保護対象施設と規定、商業地域においては、その50メートル以内での風俗施設の営業を禁じている。

 つまり、風営法と県条例が、“保育園のある場所から50メートル以内には風俗施設を作るな”と命じているのである。県警の照会は、以上の法的根拠に従って発せられている。

 これに対し、市は同年10月17日に回答を出している。照会された場所には児童福祉施設はないが、近くに「中央保育園」と「中央児童会館」があるという内容。本来、県警の照会内容に対する答えは、「該当なし」でも良かったはずなのに、わざわざ、現在の両施設の存在を明記してみせている。

県警の照会内容に対する答え

 そして、同年11月1日。中央保育園側から、移転受け入れを表明する文書が市側に提出される。それが下の文書だ。

中央保育園の移転について(要望書)

 市はこれまで、保育園側の表明を受けてから、移転用地の所有者である福岡市内の不動産会社との交渉に入ったとしてきた。だが、時系列で見てきた通り、交渉開始以前に移転用地隣りへのパチンコ店進出を承知していたことは明らかだ。まともな行政機関なら、風営法の趣旨を尊重して、別の土地を探すのが普通だろう。さらに、半径200メートル以内には、ラブホテル7軒が林立しており、この点においても風営法が軽視されての土地選定だったことになる。

 これまでの報道で、「福岡市が風営法を無視している」と断言してきたのは、同法の趣旨に著しく反した土地取得過程があるからにほかならない。
 高島市長は、風俗業が隣に進出することを承知の上で、問題の土地を購入することを決めている。直接的な風営法違反ではないが、実質的には違反。これが一般的に「脱法行為」と呼ばれることは、説明するまでもなかろう。

パチンコ店救済の背景
 県警はその後、平成24年4月27日と同年12月18日にも、市に対し同様の照会を行っているが、市はその都度、一回目の時と同じ内容の回答をしている。この間、県警に対して何度も事実関係を明かす機会があったはずだ。

 市は、平成23年7月に「市政運営会議」で移転候補地を内定、同年11月に不動産業者と土地売買の交渉を開始し、翌年4月には合意に至ったとしている。24年6月には議会や中央保育園側に移転用地を示してもいる。こうした情報を県警にだけ与えなかったことは、虚偽回答で事実を隠蔽したに等しいのである。

 悪質なのは、市が保育園の建築確認申請提出を遅らせるように仕向け、パチンコ店の営業許可を認めさせてしまったことだ。パチンコ店側との癒着を指摘する声もあるが、市が怖がったのはトラブルの表面化で移転用地買収にストップがかかることだったと見られる。

 平成23年の10月に、パチンコ店の営業許可申請が出され、県警が市に風営法上の照会を行った。この段階で、市が県警に当該地における保育園建設計画を伝えていれば、パチンコ店の進出はなかった。
 なぜならこの時期、パチンコ店側は現在営業している「旧岩田屋体育館跡」の土地を購入しておらず、いわば営業が可能かどうかの“瀬踏み”の状況にあったからだ。
 パチンコ店側が旧岩田屋体育館跡の土地を買収したのは、平成24年3月末。つまり、23年に保育園移転計画が分かっていれば、パチンコ店側が体育館跡地を取得することはなかったと見る方が自然なのだ。

 平成23年時点での市側の判断ミスが、パチンコ店の建設を進めさせ、抜き差しならない状態へと追い込まれた可能性が高い。後になって「じつは保育園建設の計画があった」ということになれば、営業許可は出ず、ムダな投資をしたパチンコ店側から損害賠償を請求される可能性が生じる。トラブルは、即、移転用地の見直しにつながる。パチンコ店側とのトラブルを回避するには、移転用地の変更しか策がないからだ。
 しかし、市は保育園の移転計画を隠し通した。別の移転用地を探す気がなかったからである。
 「はじめに土地ありき」。そこにこそ今回の疑惑の核心がある。



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