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上海研修強行 暴君・伊藤鹿児島県知事に身内からも批判

2013年7月16日 08:25

 鹿児島―上海間の航空路線維持のために公費を使った職員研修を実施したり、人気の商業施設を壊して必要性が乏しい体育施設を整備するといった非常識な施策を次々と打ち出した伊藤祐一郎鹿児島県知事。メディアや県民から批判を受けても、軌道修正する気配すら見せず、「個別の成果は期待していない」と開き直る始末。まるで自分のカネで行かせたかのようなもの言いは、独裁の証明ともとれる。
 一方、研修に行かされる可能性が出てきた県職員や教員などからは、知事に対する怨嗟の声が上がる。周りの県民から白眼視される以上、当然だろう。
 問題の職員研修が始まったいま、改めて現状を憂える複数の県関係者に話を聞いた。参加者は、県職員2名と教員1名である。
(写真:手前は県議会棟、向こう側が鹿児島県庁)

県民無視 強行された職員研修
 県は5月、鹿児島―上海間の定期航空路線の利用者減を食い止めるため、県職員1,000人を研修のため上海に派遣すると発表した。仰天計画の原資は、職員給与の削減分―つまりは税金。計画発表以来、県民から猛反発が出たのは言うまでもない。

 しかし、伊藤知事は方針を変えず、上海での海外研修費1億1,800万円を盛り込んで県議会に補正予算案を提出。反対する県民の声を無視して、中央突破を図る暴挙に打って出た。
 情けなかったのは鹿児島県議会だ。さすがに原案を認めることはなかったが、結局、派遣する人数を300人に減らした修正案を可決、公費研修を認めた形となった。知事と議会の妥協の産物である。
 
子ども騙し的手法に、県民の怒りは募る一方だが、黙っていられないという県関係者もいる。研修第一陣が上海から帰国した直後、3人の職員および教員に対談形式で話を聞いた。

 ― 公費を使った上海への職員研修や、県総合体育館建設が大きな社会問題になりました。県職員あるいは教員として、どのように感じていますか?

 職員A:伊藤知事ひとりの思いつきで、何億、何十億、何百億ものお金が簡単に動かせるという状況に、驚き、呆れています。情けない。私たちの給与削減は国の要請に応えたもので、仕方がないと思います。しかし、削った分は県民の暮らしのための予算に回すのが筋ではないでしょうか。知事の顔つくりのために、公費を使って航空路線を維持するなんてバカな話は聞いたことがない。修正したからといって、こんなものを通過させた議会も議会ですよ。信じられない。

 教員B:職員研修では、断りきれない人間が出てくる。上から命令されれば、行かざるを得ないでしょう。すでに第一陣が実施されているわけですからね。県庁にいる職員が断れば、配置転換という罰が待っている。表向きは希望者を募る形でも、数が足りなくなれば、必ず上から圧がかかりますよ。希望者がいなければ、知事のメンツが丸つぶれですから。本当はそうなればいいと思っている職員は少なくない。けど、職務命令的に行かされる。それが鹿児島県ですから。

 職員C:これは政策なんて呼べるものですかね。職員の給与削ってまで維持しなければならない航空路線なんて、存在意義がないことを証明してるようなもんでしょう。第一、今の中国に喜んで旅行する日本人なんて少ないはずですよ。鹿児島の目と鼻の先で、日本の領土を奪う目的で、領海侵犯を繰り返す国なんですよ。そんな危ない国に、行けという方がおかしいじゃないですか?

 職員A:その通り。上海は中国の一都市ですから。国と国の関係が良くならないと、人的交流は盛んにはならない。それと、大切なのは、海外からの観光客やビジネスパーソンをどれくらい引っ張ってこれるかということのはずですよ。こちらから出向く人間ばかりを無理やり作り出すのはまったく意味がない。知事には費用対効果という概念が欠けてる。というより無知。

 ― 結果的に、上海研修を認めてしまった県議会についてはどう見ていますか?

 職員C:1か月で4万6,000人もの反対署名が集められ、県知事に提出されたにも関わらず、知事や議会はこれを無視したということでしょう。あれだけ知事にバカにされても、賛成多数で修正案を了承するなど、チェック機能を果たしたとはいえないですよ。知事の顔を立てて、ごまかし案で話をまとめただけ。県議さんたちもグルなんですよ。

 職員A:県議会に何かを期待するだけムダ。自民だけではなく、本来なら野党的立場であるべき民主党系の県民連合まで、このばかげた案に賛成したんですから。伊藤独裁体制は磐石なんですよ。自分たちが担いだ知事に、本気で意見する県議の先生がいるはずがない。

 教員B:県議会については、話したくもない。県民ではなく、知事の方ばかり見ている。何人か反対した議員がいたことが、救いだったかな。

 ― 職員研修についてですが、その後の動きは?

 教員B:そもそも、一般県民が利用しない、つまり必要性のない航空路線維持のために―まあ、中国の企業のためにと言っても間違いではないですが―税金を垂れ流すなんていうことが許されること自体おかしい。しかもですね、過日、我々教職員に届いた研修への参加募集の文書には、あれだけ知事が力説していた「上海航空路線維持のための搭乗率アップ」などという文言は一切ありません。これを見てくださいよ(下の文書参照)。ひどいもんでしょ。

職員の皆さんへ  上海派遣短期特別研修(県教育委員会)実施要領

 職員C:コピーが歪んでますね。

 教員B:やってることが歪んでるから、文書まで歪むんですよ。(笑い)

 職員A:航空路線の維持のためという文言は、一切ないんですよね。私は文書の内容さえ、ろくに読んでいないけど・・・・。報道でも明らかなように、国際感覚も市民感覚も金銭感覚も疑われる知事の暴挙なんです。しかし、着々と動きは進んでいます。

 職員C:“給料減らすよ”というお達しが来て、次に“研修に応募しろ”。これはもう、バカ殿のお遊び。県民や職員を自分の家来とでも思ってるんじゃないかね。

 ― 周りの県民の方々から、何か言われることがありますか?

 教員B:夏季休業中だとしても、教職員がこんな意味のない研修に行けるものでしょうか。部活動、各種の地域・学校行事、高校であれば夏季課外もあるんですよ、教員には。『問題の上海研修に行ってきまーす』なんて言える雰囲気ではありませんよ。児童・生徒は、すぐに教師のウソを見抜くものです。中・高生ともなれば、ネットでニュースや動画をチェックする生徒も多数おり、この件を知らぬはずはありません。間違ったことが行われていることぐらい、子どもは分かってますよ。保護者や地域住民からも、厳しい目で見られています。児童・生徒はもちろん、保護者や地域に説明できないことを、我々教職員にやれと言うんですかね。私はむしろ、今回の問題の経緯や知事の発言、議会のあり様を、生きた教材として、児童・生徒に教えたいくらいです。

 職員A:どうせ白い眼で見られていることは分かってますから。こちらからは何も言いませんが、一度だけ知人に『(研修に)行くんですか』、と聞かれました。もちろん、“冗談じゃない”と答えましたよ。私も多くの県民と同じ思いなんですから。

 教員B:反日を植え込む(中国の)愛国教育を我々鹿児島県の教員に学ばせて、一体どうするというのでしょう。フィンランドやオランダなど、教育の先進地域への派遣であれば、まだ分かります。現場の教員は異口同音にそう言ってます。所詮、先に事業ありきの後付け論ですから、あきらめてますけど。

 職員C:業務命令で行かされた(研修第一陣の)22人の職員には同情しますよ。テレビにまで出てる。中には知事と同じ考えの人もいるかもしれませんが、マスコミに追われたあげく、1か月後には、本当のことを書くと問題になる“偽りの報告書”を書かなくてはならないのです。私は絶対に嫌だな。

 ― ところで、伊藤知事の県政運営について、HUNTERは厳しく批判してきました。一連の報道について、何かご意見はありませんか?
 職員C:薩摩川内のエコパーク(薩摩川内市で県が整備を進める産廃の最終処分場「エコパークかごしま」)でしょう。県内に処分場がないからという、一応の大義名分はあったと思いますが、やり方は間違っていますよね。処分場の選定過程が不透明過ぎた。最初から薩摩川内ありきで突っ走ったんでしょう。植村(地場ゼネコン「植村組」)の土地買ってやって、工事まで植村じゃ、何をかいわんやですよね。

 職員A:松陽台(鹿児島市松陽台町)の県営住宅も、唐突過ぎて地元の反発を買った。いずれも、住民に対して丁寧な説明を省いて、いきなり『工事をやるぞ』ですから、ゴタゴタするのは当然ですよ。矢面に立つ職員はHUNTERに痛めつけられてたまったもんじゃない。(笑い)

 職員C:一昨年だったか、県職員が大量に動員されて、薩摩川内の処分場の工事現場にガードマンに行かされたでしょう。ひどかったらしいですね。毎日何十人も、県庁の職員を動かすんだから。相手が活動家か何かと思って行ったら、地元のおじいちゃんやおばあちゃんだったって、ぼやいている職員もいましたよ。なぜ、県庁職員が県民をいたぶるようなことをやらされるのかって、真剣に悩んでたやつもいたからですね。

 教員B:私だったら、絶対断る。ばかげてる。知事の尻拭いのために、県民を守るべき県庁職員が、県民を弾圧する。そんなことがまかり通ってきた先に、今回の職員研修や体育館があるんですよ。

 職員A:この狂った県政を、なんとか正常な形にしてくれる人材はいないんでしょうかね。いっそ、リコール運動でも起きれば、真っ先に署名するのに。

 職員C:同感。

 教員B:私、街頭でもなんでも立ちますがね。(笑い)

 ― 本日はどうもありがとうございました。

 磐石を誇ってきた伊藤独裁県政に、翳りが見えはじめたのは確か。暴君が打ち出す施策の原資が、税金であるということを忘れてはなるまい。



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