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伊藤独裁県政の象徴―薩摩川内産廃処分場工事の現実

2013年7月22日 09:50

 県民の批判を無視し、公費を使った職員研修を実施したり、ムダな体育施設建設を一方的に決めるなど独裁色を強める伊藤祐一郎鹿児島県政。ここまで知事を増長させた原因が、チェック機能を果たそうとしない県議会と、権力の監視を怠ってきた大手メディアの不作為にあることは言うまでもない。
 県民の眼が届かぬところで、権力は必ず暴走する。その象徴が、薩摩川内市で建設が進む産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(以下「エコパーク」)である。
 旧藩以来、地元民に愛され、信仰の対象ともなってきた霊峰「冠嶽」を汚し、豊かな水源までつぶすこの事業が、いかに無秩序な状況で進められているか――改めて現状を報告する。(写真はエコパークの建設現場)

「発破」の詳細 把握せず
 HUNTERは今年5月、処分場の事業主体である「公益財団法人鹿児島県環境整備公社」に対し、工事現場で使用されている火薬の種類と使用量を示す文書の情報公開請求を行った。
 エコパークの事業費は、当初契約の77億7,000万円から96億4,920万円にまで膨れ上がった。積み増された税金は18億7,920万円。事業費増大の主要因は、豊富な湧水によって工事自体が難航したことにあるが、もうひとつ見逃せない点が存在する。火薬を使った「発破」の多用である。これによって、どの程度工事費が増えたのか、また、公社による工事管理はきちんと行われているのか―検証するための情報公開請求だった。

 下は、事業の見直しにあたって特定建設工事共同企業体(JV:「大成・植村・田島・クボタ」)側と変更契約を結んだ際の、決済文書に記された主な変更理由の一説である。

決済文書に記された主な変更理由の一説

 《防災調整池の硬岩破砕については、当初、軟岩を想定していたが、緻密・堅固なる硬い岩盤が発生したことにより、それに対する硬岩処理が必要になったため》と記されている。
 これは、計画段階におけるボーリング調査の不完全さと設計ミスの証左だが、対策として講じられているのが「発破」と呼ばれる、火薬を用いた硬岩帯の破砕工事である。
 使用される火薬の種類や量によっては、周辺地盤に影響を及ぼすことも考えられる。現に、処分場近くの山中にある農地では、発破の震動による被害を訴える声があるほどだ。

 火薬の使用実態はどうなっているのか?―HUNTERの情報公開請求に対し、公社側が開示したのが、下の文書だった。たったの4枚。30日待たされた結果がこれである。

工事証明書 1 工事証明書 2 工事証明書 3 工事証明書 4

 いずれの文書も、JV側が公社に、処分場工事における火薬の使用許可を求めたものだ。しかし、火薬については『爆薬』としか書かれておらず種類は不明。使用量にしても、単位が記されているものもあれば、ないものもある。発破で用いられる火薬の種類は、広く知られているダイナマイトをはじめ、エマルジョン、カーリット、TNTなど様々。起爆システムである「電気雷管」にしても、数種類がある。

 増大した工事費の内容を精査するためには、火薬の種類や使用量を特定する必要がある。しかし、事業主である環境整備公社は、発破の実態を知り得る文書を有していないという。当該文書がないということは、巨額の税金を使う事業でありながら、無責任きわまりない工事管理が横行している証明でもある。もうひとつ考えられるとすれば、お得意の隠蔽だ。

 公社側が何かを隠しているのは、請求文書の開示が行われた折の、記者と公社側の次のやり取りでも明らかである。

 ―― たった4枚の文書を開示するのに、30日も待たせるのか?
 公社:請求に該当する文書はこれだけということだ。

 ―― 設計図書に火薬の種類や使用量が明記されているのではないか?
 公社:公社としては持ち合わせていない。

 ―― 火薬の種類さえ知らない、ということか?
 公社:それはどうか。請求された文書に見合うものはこれしかないということだ。

 ―― 答えになっていない。火薬の種類を記した文書がないということは、事業主体の公社が杜撰な工事管理をおこなっている証拠ではないのか?
 公社:知らないとは言っていない。

 ―― 知っているなら、火薬の種類を記した文書があるということではないのか?何を隠しているのか?
 公社:請求に見合う文書はこれだけしかない。知らないということではない。

 ―― 知っているのなら、火薬の種類を教えてもらいたい。
 公社:知る立場にない。

 ―― 無責任だ。それを杜撰だと言っている。工事費を19億円も膨らませておいて、県民に対する説明責任さえ果たせないということではないのか?
 公社:・・・・・・。

 どこまで行っても平行線。公社は、増大した工事費について詳細を把握していないばかりか、「知る立場にない」のだという。狂っているとしか言いようのない公共事業の進め方だ。

いまだ続く無法工事
 こうした無責任かつ傲慢な姿勢が、工事による自然破壊を容認する形となっている。 これまで度々報じてきたが、処分場の工事現場からは、直下を流れる阿茂瀬川に、水質を変えるほどの大量の汚水が垂れ流されてきた。
 「建設現場の水は、濁水処理装置を通してから放流する」(公社公表資料より)という住民との約束は平然と破られ、現在も大量の汚水が川に流されているのである。

 下は、その証拠写真。先月末、改めて取材に訪れてみたところ、場内の汚水をポンプアップして(写真左)、阿茂瀬川に向けて設置された放水口から、大量に放出していた(右の写真)。川は濁る一方なのだ。阿茂瀬川は、鹿児島県一の大河「川内川」の支流である。

場内の汚水をポンプアップ  阿茂瀬川へ大量に放出

独裁の行く末
 エコパーク整備地は、旧藩以来県民に愛されてきた霊峰「冠嶽」の一角にある。湧水が豊富なことから、薩摩川内やいちき串木野付近の貴重な水源となってきた山でもある。
 伊藤知事は、歴史や自然環境を無視して、強引にこの場所を処分場整備地に決定した。反対する地元住民を、力で押さえ込んだあげくの愚行だ。
 結果、100億円を超える県民の税金が費消され、自然破壊が進む。なんとも滑稽な話であるが、伊藤独裁県政を象徴する事例であることは疑う余地がない。

 何度も予告してきたが、この巨大公共事業が自然に勝つことはない。いずれまた工事が延長され、工事費の積み増しが現実のものとなる。独裁者の力をもってしても、湧き出る地下水を止める術などないのだ。



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