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忘れ去られた情報公開法改正 ― つづく「知らしむべからず」

2013年7月 1日 10:05

gennpatu 1864410756.jpg 国民が権力を監視するために必要となるのが「情報公開制度」である。しかし、国の情報公開制度には様々な制限があり、国政のチェックを阻む要因となっているのが実情だ。
 そうした観点から、「情報公開法」の改正が求められてきたが、民主党政権下で頓挫してからは、話題にも上らなくなっている。
 参院選を前に、改めて情報公開に対する各党の姿勢を確認してみたが、国民の知る権利に応えようとする政党は皆無であることが分かった。

国の情報公開制度の欠陥
 国の情報公開制度には欠陥が多い。大半の地方自治体が7日~14日としている請求から開示決定までの期間が、国の場合だと「30日」。請求文書の補正などに手間取ったり、省庁側が何かと因縁をつけて引き延ばしにかかれば、あっという間に2か月、3か月が過ぎてしまう。これでは必要な時に必要な情報が得られない。

 請求者の費用負担もバカにならない。何が出てくるか分からないにもかかわらず、請求の段階で「手数料」を取られるため、事案によっては膨大な金額の印紙を買わされることになるのだ。

 例えば、昨年3月に環境省への情報公開請求を行った時のこと。HUNTERは、平成21年度から23年度までの3年間分の業務委託(天下り法人に対するもので500万円以上に限定)に関する文書について同省に開示請求した。これに対し環境省は、文書の特定を行なうのに1か月かけたうえ、請求文書を減らすようHUNTERに要求。あげく、1契約(1ファイル)あたり300円、総額79,500円を納付しなければ閲覧にも応じないとして、隠蔽体質を露わにした。

 ちなみに、情報公開条例を定めている東京都以外のほとんどの地方自治体は手数料を取っておらず、文書のコピー代だけを請求するのが普通だ。国が実施している「1ファイル300円」を乱用されると、開示請求の内容次第ではとんでもない金額になってしまう。これでは国民の知る権利に応えることはできまい。

法改正への動き、民主党政権下で頓挫
 そうした中、動いたのは民主党だった。平成23年4月、民主党政権下で情報公開法(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」)の改正案が閣議決定され、国会に提出された。改正案が、日弁連をはじめ、全国の市民オンブズマン、そしてマスコミ関係者の期待する内容だったのは事実だ。その概要については、総務省が公表した資料に分かりやすく記されている(下参照)。

改正案.bmp

 改正案では、一方的な情報非開示に歯止めをかけるとともに、開示決定期限を30日から営業日で14日に短縮。さらに、現行で1ファイル300円としている開示請求にかかる手数料を原則無料化するなど、積極的な内容だった。また、開示請求を拒否された場合には、即座に行政訴訟を起こせるようにしたほか、非開示扱いになった公文書を裁判官にだけ見せて審理させる「インカメラ制度」の導入などを盛り込んでいた。

 ところが、民主党内のゴタゴタに加え、自・公の消極姿勢が災いし、改正法案はたな晒し。結局、審議入りさえできずに廃案となってしまった。以後、国会における情報公開法改正の動きは見られていない。喜んでいるのは自民・公明と霞ヶ関である。

「知らしむべからず」
 今月4日公示の参院選に向けて、主要政党の公約が出そろった。経済をはじめ、憲法や原発といった国の未来を決定付ける重要な課題について、各党の主張の違いは鮮明だ。ばら撒きに徹し、格差拡大を助長する自民・公明に対し、実現力はもちろん、想像力にも欠ける野党といったところだろう。
 アベノミクスを推進する自民・公明に批判的な野党。憲法改正に前のめりな姿勢を示したのは自民と日本維新の会である。一方、原発に関しては、世論調査の結果に迎合したのか、自民以外のすべての政党が将来的な原発ゼロを盛り込んでいる。

 しかし、与党である自民、公明はもちろん、その他の政党の公約集の中のどこを見ても、「情報公開法改正」を約束する記述はない。改正の必要性を訴えていたはずの民主党の公約にさえ、情報公開の推進を謳う記述はない。国民の知る権利に応えようという意識を持った政党は皆無といった状況だ。
 「依らしむべし、知らしむべからず」という支配者側の思惑が透けて見える結果ではあるが・・・・。



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