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原発立地自治体・玄海町 町長一族支配の現実

2013年7月29日 08:20

 原発再稼働の鍵を握るのは、それぞれの原発が立地する自治体の首長である。福島第一の事故を経て、放射能被害が広域に及ぶことが分かった今も、なおこの手前勝手な原則がまかり通っている。大多数の国民が、原発を止める術(すべ)を持たないという現実が、そこに在る。
 仮に、立地自治体の首長が電力会社とつるんだり、電源立地地域対策交付金をはじめとする原発マネーにどっぷり浸かっていた場合、原発行政が大きく歪むことは言うまでもない。一部の権力者が原発利権を貪(むさぼ)るという構図が、国民の多数意見を押しつぶすのである。
 町長とそのファミリー企業「岸本組」が支配する九州電力・玄海原子力発電所を抱える佐賀県玄海町の現状は、その典型的なケースと言える。
(写真は玄海3、4号機)

32億円小中一貫校―岸本組JVが落札
玄海町立小中一貫校イメージ 玄海町では、平成27年4月の開校を目指して、小中一貫校の建設計画が進められている。(右は玄海町が公表したイメージ図)

 玄海町立有徳小学校と値賀小学校、有浦中学校と値賀中学校をそれぞれ統合し、新たに4校を一箇所にまとめるこの計画は、玄海町立小中学校基本構想等検討委員会においてまとめられたもの。現在の有浦中学校敷地内に、4階建ての新校舎を建設し、550人規模(小学生350 人、中学生 200 人程度)の学校にする予定だ。
 総事業費は約48億円。電源立地地域対策交付金などの、いわゆる原発マネーを原資としている。

 校舎の建築工事入札は今年6月、総合評価方式によって決定した。他の2グループを押しのけ落札したのは、地場ゼネコン最大手の松尾建設と岸本組の建設共同企業体(JV)。落札価格は31億5,200万円だった。またしても「岸本組」である。

岸本組 岸本組は、工事発注者の玄海町長・岸本英雄氏のファミリー企業。弟が社長で、町長は同社の大株主である。
 原発再稼働の鍵を握る岸本町長は、その権限を利用して大型公共事業を作り出し、建設業界をコントロールしてきた。
 仕事を生み出す首長に逆らう人間などいない。結果、原発マネーの大半を、町政トップと一心同体の岸本組が吸い上げるという、他の自治体では考えられないおぞましい構図が存在し続けている。

原発マネー独占
 これまで岸本組は、九電発注の工事や原発マネーを財源とした数々の大型公共事業を独占的に受注してきた。
 今月20日、玄海原発の隣にオープンしたばかりの「次世代エネルギーパークあすぴあ」(総事業費約15億円)をめぐっては、敷地造成や建屋建設の工事で計6億円以上を受注。さらに、漢方薬である「甘草」を中心とした薬草園の建設工事では、次のように計5億円あまりの受注実績を残している。

【平成20年度】
1月  薬草栽培温室棟建設(建築)→1,740万円
1月  薬草栽培温室棟建設(機械設備)→4,560万円
【平成21年度】
6月 薬草栽培研究所敷地造成(2工区-2)→1億1,580万円
6月 薬草栽培研究所管理棟他建設(建築)→7,950万円 
6月 薬草栽培温室棟建設(建築)→2,850万円
6月 薬草栽培温室棟建設(機械設備)→1,140万円
1月 薬草栽培研究所展望所整備→1,350万円

町道看板【平成22年度】
7月 甘草ハウス及び温室棟建設(建築)→1億6,250万円
7月 薬用植物栽培研究所舗装工事→1,900万円

 先週報じた通り、昨年春から始められた玄海町役場からお隣の唐津市に向かう町道「長倉-藤平線」の道路工事でも、岸本組が仕事の一部を請負っている。
 わずか1.9キロの道路整備に、投入される公費は28億円。原発事故時の「避難用道路」と称しているが、玄海町以外の唐津市側では、道路整備の計画さえないという滑稽な事業である。

歪む原発行政
玄海町 町長室 原発マネーを独占してきた岸本組の力は、「政治力」によって支えられている。一族から県会議長や町長を出してきた歴史は、岸本組発展の足跡とだぶる。とくに原発に関する強大な権限を有する町長に、岸本組の実質的オーナーである岸本英雄氏が就任してからは、前述のように数々の事業が切れ目なく発注されてきた。(写真は玄海町の町長室)

 潤うのは岸本組を中心とする地場建設業者ばかり。人口6,500人程度の小さな町に、原発マネーによって身の丈に合わぬ豪華施設が次々と建設され、その莫大な維持費を、さらにまた原発マネーで賄うという、終わりのない愚行が繰り返される。
 前述の「次世代エネルギーパークあすぴあ」にしても、九電の子会社である九電産業に、玄海町が年間9,000万円前後の運営委託費を支払うのだという。この町を支える “原発マネーサイクル”とでも言うべきシステムが、後戻りできない状況にさらに拍車をかけている。

 再稼働を含め、原発に関するもっとも大きな権限を有しているのは、原子力規制委員会でもなければ、国でもない。玄海原発の場合なら、古川康知事と岸本玄海町長という立地自治体の首長なのである。九電ファミリーと言っても過言ではない二人が、数十キロ(数百キロといってもおかしくないが)圏内の住民の生殺与奪の権を握っている状態では、まともな原子力行政など望むべくもない。
 過半数の国民が「再稼働NO」と言っても、立地自治体の首長が「OK」を出したとたん、原発は否応なく動くのだ。
 町長一族が原発マネーを独占し続ける玄海町の実情を見るにつけ、暗澹たる気持ちになるのは記者だけではあるまい。



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