政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

活断層評価否定された九電に規制委が注文
川内原発再稼働にブレーキ

2013年7月25日 09:00

gennpatu 1864410358.jpg 原子力規制委員会は23日、再稼働を目指す原発が、新規制基準に適合しているか否かを審査するための会合を開き、九州電力・川内1、2号機や四国電力・伊方3号機など4基の原発について、優先して審査する方針を固めた。
 規制委はこのうち、今年2月に公表された政府・地震調査研究推進本部の「活断層再評価」に至る分科会の議論の中で、九電が作成した川内原発近辺の地質調査結果を否定していたことを重視。同社に対し、評価を見直すよう求めた。
 九電の対応が注目されるが、問題の活断層再評価について改めてまとめた。
(写真は九州電力「川内原子力発電所」)

否定された九電の活断層調査
 HUNTERは今年1月、地震調査研究推進本部が実施した活断層再評価のうち、川内原発に近接する「市来断層帯」に関する議事録を文部科学省に情報公開請求。その結果、平成24年5月17日、同6月25日、同7月26日にそれぞれ行われた第16回、第17回、第18回の地質調査委員会長期評価部会の分科会議事録を入手した。

 議事録によれば、平成24年に行われた会議で九電の地質調査結果を酷評、川内原発にもっとも近接する「市来断層帯」を大幅に海側に延ばすなど、川内原発の安全性に疑問符を付けた形となっていた。

 市来断層帯に関する議論では、同年5月17日の第16回分科会で九州電力の資料を基に議論することで一致。6月25日には川内原発沖の甑海峡にある甑断層が北に延びる可能性と、内陸を走る市来断層の海域部分がさらに延びることなどが確認されていた。
 詳細な検討については「原子力保安院の会議で行うべき作業」と指摘し、再評価結果が川内原発の安全性評価に影響を与えることを示唆していた。下は、この時の議事録の一部である。(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

議事録の一部 (1)

 同年7月26日に行われた第18回分科会ではさらに踏み込んで、九電作成の資料について「参考資料3-1-2の解釈はとにかくひどいものである」と酷評、「最もひどいのは、地表面(海底面)にまで断層変位が及んでいるにも関わらず、断層の存在を全く無視していることである」として、未公表の断層があることも示唆していた。
 議論では、「記載を慎重に」としながらも、市来断層が海域まで延びていることと甑断層が北に延びることの「2つについては事実を書かざるを得ない」と結論付けていた。(下はその議事録。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

議事録の一部 (2)

川内原子力発電所敷地周辺・敷地近傍の地質・地質構造(補足説明:その2) 分会会の議論に出てくる「参考資料3-1-2」について、地震調査研究推進本部の事務局に確認したところ、当該資料は九電が平成21年に国に提出した『川内原子力発電所敷地周辺・敷地近傍の地質・地質構造(補足説明:その2)』であることが分かっている(右はその表紙)。

 「参考資料3-1-2の解釈はとにかくひどいものである」、「最もひどいのは、地表面(海底面)にまで断層変位が及んでいるにも関わらず、断層の存在を全く無視していることである」・・・・・・一連の議事録の記述から、九州電力による地質調査が杜撰であることは明らかで、意図的に活断層の存在を隠していた疑いさえ浮上していた。 

大幅に延びたそれぞれの断層
 再評価結果では、「市来断層帯」を構成する《市来区間》《甑海峡中央区間》《吹上浜西方沖区間》の3つの断層のすべてが、大幅に延長される形となっていた。

 まず、従来「五反田川断層」とされてきた《市来区間》が、大幅に西の海上側に延び甑海峡中央区間の断層と交わる形となったため、九電が19キロとしていた活断層の長さが、再評価では「25キロ」へ。次に《甑海峡中央区間》については、九電が16キロとしているのに対し、再評価ではその2倍以上の「38キロ」。《吹上浜西方沖区間》についても、長さ約10kmとした九電に対し、「20 km 程度以上」になるとしていた。

市来断層帯

 このほか、九電が三つに区分していた甑島周辺の活断層を、「甑断層帯」として再評価。連続性が確認された甑断層帯全体の長さは、約39 kmという長大なものとなっていた。

 再調査結果にはこうある。《甑断層帯においては、過去の断層活動に関する調査研究が行われておらず、現状では地震後経過率等の評価を行うことができない。今後、最新活動時期や平均活動間隔など、過去の断層活動を明らかにするための調査が必要である。甑区間は、推定される活動時の地震規模がM7.5 程度と大きいうえ、上下方向のずれを伴う沿岸海域の活断層であることから、津波の発生を検討する必要がある》。

地震規模も拡大―問われる九電の姿勢 
 地震の規模は活断層の長さによって変わる。地震調査研究推進本部は、甑断層帯によって引き起こされる地震規模を「M7.5程度」としたほか、 市来活断層の活動時の地震規模について、《地下の断層の長さなどに基づくと、市来区間、甑海峡中央区間、吹上浜西方沖区間のそれぞれが活動した場合、市来区間ではマグニチュード(M)7.2 程度、甑海峡中央区間ではM7.5 程度、吹上浜西方沖区間ではM7.0 程度以上の地震が発生する可能性がある》と明記している。川内原発の危険性が高まるのは言うまでもない。

 国や電力会社は、原発の安全性を強調し、地震に対する備えは万全であると言い続けてきた。これが真っ赤な嘘だったことは、福島第一原発の事故が証明している。
 川内原発についてはどうか―九電は「安全」を繰り返し叫んできたが、判断の前提となる周辺の活断層調査自体が、地震調査研究推進本部によって否定されている。当然、やり直すべきだが、九電は動こうとしなかった。九電は、地震調査研究推進本部の「活断層再評価」で自社の調査・評価内容が否定されたことを知りながら、再稼働申請では「問題なし」との姿勢を崩そうとしなかったのである。この会社は、反省という言葉を知らないのだろう。
 規制委の再検討要請で、川内原発再稼働にブレーキをかけられた形の九電。どのように対応するか注目である。



【関連記事】
ワンショット
 ガラスの向こうに積み上げられた洋書。オシャレな入り口の奥...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲