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<移転候補地横にパチンコ店> ― 福岡市、土地買収交渉以前に把握
― 中央保育園移転計画の闇 ―

2013年7月19日 11:29

 市民の反対をよそに市内中央区にある認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転強行を決めた福岡市が、移転用地の買収交渉に入る以前の段階で、隣地へのパチンコ店進出を知っていたことが判明した。
 市への情報公開請求によって入手した資料によれば、市は、保育園移転用地の隣にパチンコ店が建設される予定であることを、福岡県警からの照会によって平成23年10月の段階で把握。風営法上の問題が生じる土地であることを承知しながら、これを無視し、その翌月に土地買収のための交渉を開始していた。パチンコ店進出の可能性が浮上した同年10月の段階で、問題の土地を購入せざるを得ない状況に陥っていたとみられる。
 パチンコ店進出を知ったのは平成24年の春以降としてきた市側の説明が、真相を隠すための虚偽だった疑いもある。

県警の照会3回 初回は平成23年10月だった
 福岡市への情報公開請求で入手した資料によれば、パチンコ店側が出した営業許可申請にともない、福岡県警が市側に保育所など保護対象施設の有無を照会したのは平成23年10月6日、24年4月27日、同年12月18日の3回。いずれも、現在パチンコ店になっている旧岩田屋体育館跡の場所から、一定の距離内についての保護対象施設の有無を問うたものだった。しかし、市側は3回とも「照会の地域には所在しません」と回答、結果的にパチンコ店の営業許可を助けた形となっていた。(下が県警の照会文書)
 市はこれまで、中央保育園の移転予定地横にパチンコ店が進出することをを知ったのは、平成24年の春以降だったと説明していた。

保護対象施設の有無(平成23年10月6日) 保護対象施設の有無(平成24年4月27日) 保護対象施設の有無(平成24年12月18日)

「はじめに土地ありき」―背景にあるのは・・・
 県警による最初の照会が「平成23年10月6日」であることから、市側は、この時期に保育園移転用地の隣にパチンコ店が進出することを知っていたことになる。にもかかわらず、市はその翌月、北九州の会社から移転用地を買っていた市内の不動産会社と土地買収に向けての協議を開始していた。市は、隣地に風俗施設が建設されることを承知で、保育園用地の買収に乗り出したことになる。

 風営法は、学校や保育園などを「保護対象施設」と定めており、一定距離内での風俗営業を禁止している。パチンコ店の場合、半径50メートル以内に保護対象施設があれば、公安委員会の営業許可は出ない。同法が求めているのは子どもの健全育成であり、その趣旨を理解していれば、パチンコ店の真横に保育園を建設するなどという発想自体、浮かぶはずはなかった。

 脱法行為を承知の上での土地買収交渉は、「はじめに土地ありき」だったことを示す証左。さらに言えば、市が、風営法上の問題を無視してまで問題の土地を買収せざるを得ない状況に陥っていたと見ることもできる。
 背景に、市幹部の天下り先となった不動産会社による土地転がしがあったとすれば、中央保育園の移転計画は、「待機児童解消」という大義名分とは程遠い「ただの醜い利権話」(市関係者の指摘)となる。この土地転がしで市内の不動産会社が得た転売益は1億3,000万円以上。移転用地選定過程の不透明さと合わせて考えれば、保育園移転計画の裏に巨大な闇が横たわっていることは誰の目にも明らかだ。



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