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問われるみんなの党・参院選立候補予定者の「資質」(福岡)

2013年6月25日 10:50

みんなの党 23日、参議院選挙の前哨戦といわれる都議選が終わった。大方の予想通り、自民の圧勝となったが、投票率は前回(平成21年)を11ポイントも下回る43.50%。政治に対する不信感が有権者の棄権につながった形だ。
 2議席をめぐって争われる参院・福岡県選挙区の状況も似たり寄ったり。「どの政党も信用できない」という有権者の声を耳にする機会が多いのは事実だ。
 そんな中、ある参院選立候補予定者に、政治家としての資質を疑わざるを得ない疑問が生じている。

微妙な「経歴」と明らかな「嘘」
 その立候補予定者とは、みんなの党公認で参院・福岡県選挙区から出馬する予定の古賀輝生氏(49)。同氏は、昨年暮の総選挙で福岡7区から立候補し落選。その後、今回の参院選では同党の比例代表候補の一人として名前を連ねていた。しかし、橋下徹氏の慰安婦発言を受けて、みんなの党が日本維新の会との選挙協力を解消したため、急遽福岡選挙区の同党公認候補となっていた。

 問題は、昨年の総選挙の時から疑問符が付けられていた古賀氏の経歴である。同氏自身が公表している資料などによれば、熊本県で生まれた古賀氏は、地元の高校から東京の大学に進み、卒業後はサラリーマンを経て起業。さらに参議院議員の秘書となったとされる。下は同氏のホームページにあるプロフィールの一部だが、たしかに「参議院議員 国会事務所秘書」とある。

古賀氏の経歴

 秘書経験について、古賀氏自身も次のように述べている。

古賀氏の秘書経験

 古賀氏が仕えた参院議員とは、民主党の大島九州男議員(当選1回)。この点について、古賀氏の事務所にも確認したが、「間違いない」としている。
 ところが、昨年の総選挙の頃、古賀氏の経歴を見た永田町関係者の間から、「(古賀氏は)本当に秘書だったのか?」という疑問の声が上がり始めた。
 同党の議員はもちろん、永田町の議員会館に勤めていた多くの秘書たちが「古賀輝生」という秘書がいたことを覚えていないというのである。確認に走ったメディアもあったが、この時は選挙戦の最中とあって、うやむやになってしまっていた。

 今回、改めて大島議員の事務所に確認取材を行ったところ、正式に文書で回答があった。質問内容と回答は以下の通りだ。

 Q:古賀氏は、大島議員の秘書を務めていたと公表していますが、これは事実ですか?
 ―― 政治家を目指すための勉強をするため、国会事務所に入れて欲しいとの要望があり受け入れさせていただきました。会館・本館内を行き来できる「参議院出入記章 甲」を発行致しましたが秘書としての採用はしておりません

 Q:事実なら、公設・私設のいずれか、またその在任期間をお教え下さい。私設以外の仕事をしていたとすれば、その役割、報酬の有無、在任期間をお教え下さい。
 ―― 電話応対、会議出席、書類整理等をしていただきました。報酬はありません。平成23年の夏頃から約1年間不定期におりました。

 Q:大島議員の事務所に関係していた時期、古賀氏はどのような肩書の名刺を使用していましたか?
 ―― 当初「参議院議員大島九州男事務所 古賀輝生」の名刺を提供しておりましたが、ご本人の強い要望により「参議院議員大島九州男 秘書 古賀輝生」の名刺を提供致しました。

参議院出入記章 甲 大島事務所側は、古賀氏本人の希望で、秘書の肩書が入った名刺を渡していたというが、《秘書としての採用はしておりません》と断定している。さらに、在任期間は《約1年》、報酬なし、しかも《不定期》だったとしている。果たしてこれで経歴に「秘書」と入れられるのか、じつに微妙だ。

 右の写真が、大島議員の事務所側が古賀氏に渡していたという「参議院出入記章 甲」だが、これは昔から各議員事務所が、スタッフや関係者の通行証がわりに使っている程度のもの。私設秘書はもちろん、様々な人間に渡されており、これをもって「秘書」と断じるには無理がある。
 事情を知るメディア関係者、とりわけ選挙担当記者からは、「候補者紹介欄に、参議院議員秘書という経歴を入れるかどうかは分からない」といった困惑の声が聞こえてくるほどだ。

 疑惑とは言えないまでも、こと経歴については、古賀氏自身の捉え方と、勤務実態との間に大きなズレがあるのは確かのようだ。

 ちなみに、前掲の古賀氏のプロフィールには明らかな「嘘」があることを指摘しておく。記載の中に『第46回衆議院議員総選挙 福岡7区より出馬するも次点』とある。しかし、古賀氏は次次点。次点となったのは民主党の候補者で、古賀氏はその次。得票では、次点との間には約34,000票も開きがあった。重複立候補した九州比例区では、惜敗率でも同党の最下位(6位)だった。

 経歴にゴマカシがある以上、政治家としての資質を疑われるのは当然だろう。

早くも「選挙事務所開設」の非常識
 そんな古賀氏、今月24日になってホームページに次のような記載を行っている。

こが2.bmp

 驚いたことに、見出しは「選挙事務所開設!」。しかし、選挙の公示は7月4日で、公選法上、選挙事務所はこの日に立候補届けを提出するまで開設できない。これは選挙を行う陣営にとっての常識である。つまり、現時点で選挙事務所を開いて活動することは、禁止された事前運動にあたる可能性があるということだ。
 永田町で「秘書」としての経験をした折、古賀氏は公選法を学ばなかったのだろうか。



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