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福岡市、疑惑の保育園移転に追い銭2億!?
税金使って失政の尻拭い画策

2013年6月14日 10:30

 不透明な用地取得の実態が明るみに出た市内中央区にある「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転計画をめぐって、疑惑を招いた福岡市が、事業の綻びを取り繕うため、さらなる税金投入を画策していたことが明らかとなった。
 災害発生時、園児らが避難するのに隣接する「パチンコ店」の中を通るという前代未聞の計画に多くの批判が集中。市は事態収拾のため、密かに別の隣接地買収を企図し、土地所有者と交渉を行っていた。新たな用地買収には、2億円前後の税金投入が見込まれていたとされる、市自らの杜撰な整備計画が招いた最悪の状況を、血税で尻拭いさせようとした形だ。
 望みもしない市側の対応に、在園児の保護者らからも怒りの声が上がっている。

ラブホテル林立 隣はパチンコ店
 市が一方的に決定し、今年4月に購入した中央保育園の移転用地は、すぐ近くにラブホテルなどの風俗施設が林立しているほか、隣接する建物がパチンコ店というもの。事実上新設される保育園でありながら、常識的には考えられない立地場所となっている。保護者らの反発は当然で、計画が公表された昨年夏から計画撤回を求める活動が続いていた。
 こうした動きを受けて、13日、西日本新聞が1面トップで立地環境の問題点を指摘。久々に地元紙の存在感を見せつけた。

 立地環境も問題だが、計画された災害時における園児らの避難経路もデタラメだった。移転予定地が唯一面しているのは西側にあるわずか5.5メートル幅の道路。東側には逃げ道がないことから、パチンコ店の中を通って避難させるというのである。まともな大人の考えることではない。保護者から保育園職員、そして多くの市民へと移転反対の声が拡がったのは言うまでもない。

追い銭2億で新たな土地買収
 困った市側が思いついたのが、現在コインパーキングになっている移転予定地裏の土地約70坪(下の写真、赤い矢印の場所)を買い増し、避難経路を確保するという策だった。1坪300万円、総額2億円前後で交渉が行われたという。事実だとすれば、市側の杜撰な計画が招いた失敗を、さらなる税金投入でごまかすという最悪のシナリオだ。

鹿児島 294.jpg

 新たな土地買収の話は事実か?―――福岡市の担当者に確認したところ、明快な答えが返ってこない。やむなくコインパーキングの所有権者の名前を挙げ、“関連文書の情報公開請求を行う。交渉の過程は残っているか”という聞き方に変えたところ、しばらく確認の時間があって、「それは残っていません」。つまり、記録は残していないが、交渉はしているということだ。事実、他の市関係者から「補正予算の中に(土地買収費を)計上しようとしたが無理だった」という話が聞こえてきた。失政のツケを市民に押し付ける魂胆だったことは明白。高島市政の本質が見えたと言っても過言ではあるまい。

在園児保護者から怒りの声
 愚行を重ねる市側の姿勢に、中央保育園に在園する子どもの保護者からは憤りの声が上がる。
「私たちは、避難経路を作れだの、そのために土地を買えだのと言っているわけではありません。市がさらに土地を買って、避難経路が確保されたとしても、状況は何も変わりません。私たちは、問題だらけの土地に、保育園を移転させること自体に反対しているんです。高島さん(市長)は、自分の子どもを、ラブホテルやパチンコ店が立ち並ぶ場所にある保育園に通わせることができるんでしょうか?
 すでに移転用地取得に9億円もの税金が使われています。これ以上、市民に負担を強いることが許されるとは思えません。こそこそと新たな税金投入を画策するのは間違いなんです。『避難経路を確保するために土地まで買った。いい加減計画を認めろ』と言いたかったんでしょうが、迷惑なだけです。私たちは子どもの保護者であり、納税者でもあるんですから」。

 たしかに、この保護者の言い分は筋が通っている。もともと保育園と中央児童会館は現在の場所に合築する計画だったはず。勝手に児童会館に商業施設を併設する方針に変え、保育園をはじき飛ばしたのは高島市長で、保護者側からの要望ではない。商業施設で街を活性化することばかりにこだわる市長にとって、子どもの命など二の次だったのだろう。もちろん、税金の重みなどまったく理解していない。

 中央保育園の移転問題については、次週も引き続き報じていく予定だ。ばかげた計画に追い銭などもってのほかだが、そもそも児童会館と保育園の整備計画自体が、決して認めてはいけないものなのである。



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